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新機能の段階的なロールアウトのためにWindows 11に搭載された新しい「Windows構成の更新」の仕組み企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(16)

MicrosoftはWindows 11 バージョン22H2に対し、新機能を継続的に、そしてその一部は段階的にロールアウトしていく、複数の方式を盛り込んでいます。本連載第11回では、毎月の品質更新プログラムに含める形で提供される新機能と、その企業内での制御について説明しました。2023年6月には「Windows構成の更新」という新しい方法で、新機能が初めて提供されました。

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「企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内

品質更新プログラムで追加される新機能の「一時的なエンタープライズ機能制御」

 本連載第11回では、毎月の「品質更新プログラム」(セキュリティ更新プログラム《Bリリース》、オプションの更新プログラム《Cリリース》、定例外の更新プログラム)に含める形で提供される新機能について説明しました。企業の「グループポリシー」や「Microsoft Intune」で管理されているデバイスについては、エンドユーザーのエクスペリエンスや管理者への影響を考慮し、その新機能の一部は既定で「無効」にされます。

 管理者は本連載第11回で紹介した「Enable features introduced via servicing that are off by default」ポリシー設定をグループポリシーで構成することにより、品質更新プログラムで追加された、企業向けに既定では無効になっている新機能を、準備が整った時点で有効化できます(画面1)。

画面1
画面1 「Enable features introduced via servicing that are off by default」ポリシー設定で、企業向けに無効にされている新機能を有効化する

 Microsoft Intuneで管理されているデバイスについては、「Windows 10」以降向けの「構成プロファイル」で、「設定カタログ」の「Windows Update for Business」カテゴリーにある「一時エンタープライズ機能制御を許可する」をチェックすることで有効化できます(画面2)。

画面2
画面2 Microsoft Intuneで管理されているWindows 11デバイスについては、Windows 10以降向けの構成プロファイルで有効化できる

 何年何月の品質プログラムで追加された、どの新機能が無効になっているか、そして企業向けにこの機能がいつロールアウトされるかについては、以下のドキュメントで確認できます。現時点では、2023年2月のCリリースで追加された「2-in-1 デバイス用のタッチ最適化タスク バー」が無効にされており、2023年後半にリリースされる「Windows 11」(バージョン23H2)の機能更新プログラムで有効になることが示されています(画面3)。

画面3
画面3 一時的なエンタープライズ機能制御により企業のデバイスで無効にされている新機能と、その新機能が既定で有効になるタイミング

2023年6月から導入された「Windows構成の更新」とは

 本連載第11回では、2022年10月の定例外の更新プログラムで追加された新機能を「Moment 1」、2023年3月のBリリース(および2月のCリリース)で追加された新機能を「Moment 2」と呼ぶこともあると書きました。Microsoft自身は公に「Moment」という表現を用いていませんが、2023年6月のBリリースでは多くの新機能が無効状態で追加されています。これまで「Moment 3」と呼ばれていた新機能です。

 今回の新機能の追加には、新しい「制御された機能ロールアウト(Controlled Feature Rollout、CFR)」テクノロジーが採用されています。CFRでは、ある月のCリリースから始めて、Microsoftの制御により、各機能の準備が整ったことを検証しながら、新しいデバイスに段階的にロールアウトします。その新機能に問題がなければ、最終的に翌月のBリリース(その前のCリリースでプレビュー)で既定で有効になります。CFRがどのような更新エクスペリエンスを提供するのか、公になっている情報では分かりにくいですが、2023年5月から7月にかけての実際の挙動を追い掛けてみました。

 今回、「Moment 3」と呼ばれる新機能は2023年5月のCリリースで追加されました。その内容は2023年6月のBリリースにも含まれますが、新機能の多くは無効状態で追加されています。これらの新機能の段階的なロールアウトを待たずに有効化するオプションも用意されました。2023年5月のCリリース以降で「設定」の「Windows Update」に新たに追加された「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」のトグルスイッチです。

 機能の有効化は「Windows構成の更新(Windows configuration updates)」と呼ばれるオプションの更新プログラムで徐々に対象デバイスの範囲を広げてロールアウトされますが、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」のトグルスイッチをオンにしておくと、「Windows構成の更新」がすぐに検出され、自動的にインストールされます。

 なお、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」がオンになっている場合、オプションの更新プログラムであるCリリースが利用可能になると、これも自動的にインストールされるようになります。その際、「Windows構成の更新」がまだインストールされていなければ同時にインストールされ、新機能が有効化されることになります。

 6月のCリリース(2023年6月28日)以前であれば、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」をオンにすると、5月にリリースされた「Windows構成の更新」という名前の更新プログラムが検出され、自動的にインストールされます。インストールといっても、無効になっている機能を有効化するだけなので一瞬ですが、デバイスの再起動が必要です(画面4)。

画面4
画面4 6月のBリリースで追加された新機能をすぐに有効化したい場合は、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」をオンにして「Windows構成の更新」をインストールする。インストールは瞬時に終わるが、再起動が必要

 有効になる新機能については、以下のドキュメントで説明されています。例えば、タスクバーの時計に秒針を表示するオプションが利用可能になります(画面5)。これらの機能は6月のCリリースおよび7月のBリリースでも(同時に自動インストールされる「Windows構成の更新」によって)既定で有効化されます。

画面5
画面5 6月のBリリース(5月のCリリース)で追加された新機能の一つは、タスクバー上の時計に秒を表示するオプション

 「Windows構成の更新」がインストールされているかどうか、つまり新機能が有効化されているかどうかは、Windows Updateの「更新の履歴」にある「その他の更新プログラム」で確認できますが、アンインストールするオプションはありません(画面6)。

画面6
画面6 「Windows構成の更新」は、「更新の履歴」では「その他の更新プログラム」に分類される

 イベントログやWindowsUpdate.log(「Get-WindowsUpdateLog」コマンドレットで生成)、信頼性モニター(Perfmon /rel)、ダウンロードログ(C:\Windows\SoftwareDistribution\ReportingEvents.log)、ダウンロードフォルダ(C:\Windows\SoftwareDistribution\Download)を見るかぎり、「Windows構成の更新」に対応するログやファイルは見当たりません。通常の品質更新プログラムとは異なり、更新プログラムのインストーラーがダウンロードされてインストールされるという仕組みではないようです。

 なお、グループポリシー(WSUS《Windows Server Update Services》クライアントやWindows Updateの遅延設定など)やMicrosoft Intuneで管理されているデバイスでは、「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」のトグルスイッチは無効化され、オン/オフ操作ができません(画面7)。

画面7
画面7 管理されているデバイスでは「利用可能になったらすぐに最新の更新プログラムを入手する」は無効化され、利用できない

 トグルスイッチは管理される前にオンになっていた場合でも、管理対象になった時点でオフにされ、無効化されます。これをオンにするような、ポリシー設定やMicrosoft Intune設定も存在しません。管理されているデバイスについては、次のBリリースの更新プログラムに同梱(どうこん)される「Windows構成の更新」によって新機能が有効化されることになります。そのことは、6月28日(日本時間)にリリースされたCリリース(7月のBリリースのセキュリティ更新以外のプレビュー)のインストールで確認しました。Cリリースの更新プログラムだけをMicrosoft Updateカタログからダウンロードし、デバイスをネットワークから切断した状態でインストールしたところ、Cリリースと同時に「Windows構成の更新」もインストールされました。つまり、Cリリースの更新プログラムに同梱されており、別途ダウンロードされてインストールされたわけではありません。

 Windows 11 バージョン22H2では、新機能の追加だけでなく、新しい方針やテクノロジーが次々に導入される印象です。新しい変更が加えられた直後は混乱することもあると思います。特に、エンドユーザーのエクスペリエンスや管理性の頻繁な変更を望まない企業の管理者にとっては現状、“管理しにくいOS”と言わざるを得ません。現時点でのWindows 11の新機能の方針については、以下のドキュメントにまとめられています。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2023(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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