「生成AIがコーディングを助けてくれるのはいいこと、でも不安は残る」 GitHub Copilot Chatをめぐる開発者の率直な意見:「Copilot Chatのメリットは気が散らないことだが、使用に懸念も」
GitHub Copilot Chatのパブリックβ版ではVisual Studioにチャットアシスタントを組み込んでいる。便利な半面、一部の開発者にはAIに関する懸念が残る。
GitHubは2023年7月、「GitHub Copilot Chat」をパブリックベータ版で利用可能にし、開発者の作業環境に自然言語インタフェースを追加した。
GitHub Copilot Chatは、「GitHub Copilot X」という名称で2023年3月にリリースされたテクニカルプレビューのパッケージの一部であり、それぞれのパッケージには、OpenAIのGPT-4生成AIモデルと、チャットや音声インタフェース、プルリクエスト、ドキュメントなどの開発者向け機能が統合されている。OpenAIのAIモデル「OpenAI Codexモデル」は、コードを記述するためのオリジナルのGitHub Copilotを支えている。
GitHubのプレスリリースによると、「GitHub Copilot Chatは、ますます困難になっている開発者のフロー維持のために設計されている」という。「彼らは、APIに接続する方法、新しいデータベースを使用する方法、同僚が何を達成しようとしていたのかを理解する方法を見つけるために、ドキュメントや検索結果を詳しく調べることにますます多くの時間を費やしている」
TeleportのCEO、エフ・コンツェボイ氏は「『仕事に必要なのは、コーディングを行うテキストエディターとGoogleだけだ』というエンジニアの冗談を何度も聞いてきた」と語る。「一方では頭を使って価値を生み出し、もう一方では日常的なことを調べたりコピーペーストしたりするというこの2つの動作を、1つのツールに緊密に統合することができる。これは大きな進歩だ」
コンツェボイ氏が経営するTeleportは、クラウドインフラストラクチャの補助機能を備えた製品を販売している。また、コンツェボイ氏はGPTベースのチャットインタフェースの成功に強い関心を持っているという。
他のGitHub Enterpriseユーザーにとって、チャットは依然として開発者のワークフローの中断を意味する。
「GitHub Copilotで気に入っているポイントは、現在のイテレーションにおける入力がコンソールに直接統合されているところだ。コーディング画面で直接自分が行っていることについてコメントを追加でき、Copilotがそれを読み取ってコードを提案してくれる」と、ヘルスケア技術企業Veradigmの上級主任ソフトウェアエンジニアを務めるカイラー・ミドルトン氏は述べている。
「私は同じフィードバックをGitHub Enterpriseチームに提供した。ここに統合するツールは全て、開発者をできるだけ『ゾーン』から外さないようにする必要がある。今後リリースされるツールのほとんどもそれを同様に必要とするだろう」
しかし、この種の「ゾーン」からの中断はいずれにせよ起こっており、Web検索ではさらに混乱が生じているとコンツェヴォイ氏は語った。
「基本的に、ゾーンから抜け出してGoogleにアクセスし、何かを検索し始める必要がある。そうすると、あらゆる種類の気を散らすものにさらされることになる」とミドルトン氏は言う。「何か調べるためにReddit(ソーシャルニュースサイト)にアクセスすると、結局猫を見ることになる」
より広範な生成AIの成長痛は続く
OpenAIが2022年11月にChatGPTを一般公開して以来、生成AIはエンタープライズITで大流行している。ほとんどのITベンダーは、コーディングアシスタントに加えて、可観測性、DevSecOps、コードツールとしてのインフラストラクチャなどのツールに生成AIによるサポートを追加している。しかし、一部のエンジニアには、この新しいテクノロジーの利点が欠点を本当に上回るのかどうか、不安が残っている。
カリフォルニア州コンコードを拠点にフリーランスの技術コンサルタントを営むロブ・ザズエタ氏は、「GitHub Copilot Xに含まれる機能の中に、AIによって生成された単体テストが持つ可能性を考えるのは刺激的だ」と語る。一方、ザズエタ氏は、そのようなテストの品質については、特に早い段階から警告を発している。
「あらゆるやりとりが『私はAIを利用しているので、驚きや間違いが起こり得る』という警告から始まることに、危機感を抱いている」とザズエタ氏は語る。「コードを読むことは、コードを書くこととは別のスキルだ。コードの書き方を学びながら開発することもできるが、本当に学ぶための最良の方法は、定期的に他の人のコードをレビューすることだ。経験の浅い開発者は、(AIによって生成された)コードが実際にバグを修正し、他のバグを導入せずにいるかどうかを確かめられるコードリーディングスキルを持っていないかもしれない」(ザエスタ氏)
Teleportのコンツェボイ氏は、生成AIを他の開発者ツールと同じように、適切に使用することができるかどうかが重要だと考えている。しかし、彼はAIによって生成されたコードを専用のアプリケーションに使用する際、未知の法律、ライセンスの影響についてまだ明確になっていないリスクがあると訴えている。
「問題は、時間の経過とともに法的側面で何が起こるかということだ。なぜなら、これはテクノロジーが法律よりも先に進んでいる例の一つだからだ」とコンツェヴォイ氏は語る。「将来、さかのぼって問題に巻き込まれないようにする必要がある」
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