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企業向けの新しい「Microsoft Edge for Business」提供開始、何ができるのか? 個人向けとの違いは?企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(21)

Microsoftは2023年8月21日(米国時間)リリースのMicrosoft Edge バージョン116から、新しい「Microsoft Edge for Business」の一般提供を開始しました。Microsoft Entra ID(旧称、Azure Active Directory)のアカウントのプロファイルでサインインすると、Microsoft Edgeのアイコンと機能が自動的にMicrosoft Edge for Businessに切り替わります。

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「企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内

これまでのMicrosoft Edge for Business

 Microsoftが数年前にChromiumベースの新しい「Microsoft Edge」の提供を開始した直後から、「Microsoft Edge for Business」は存在しました。ただし、これまでは常に最新バージョンを提供するコンシューマー(個人)向けのMicrosoft Edgeのダウンロードサイトに対し、Microsoft Edge for Businessは企業向けのダウンロードサイトという意味合いが強く、企業向けにはチャネル(安定版、拡張安定版など)とビルドを選択してのダウンロードとポリシー管理用テンプレートを提供してきました(画面1)。

画面1
画面1 これまでのMicrosoft Edge for Businessは、企業向けにバイナリとポリシー管理テンプレートをダウンロード提供するだけの違いだった

新しいMicrosoft Edge for Businessの外観と新機能

 このダウンロードサイトの区別に変わりはありませんが、Microsoft Edge バージョン116からは新しい「Microsoft Edge for Business」の提供が始まりました。

 ただし、Microsoft EdgeとMicrosoft Edge for Businessのバイナリ(ソフトウェア)が異なるということではありません。「Microsoft Entra ID」(旧称、Azure Active Directory《Azure AD》)のアカウントでMicrosoft Edgeのプロファイルを作成し、サインインすることで、その外観と機能がMicrosoft Edge for Businessに切り替わるようになったのです。

 新しいMicrosoft Edge for Businessは、仕事向けに最適化されたMicrosoft Edge専用のエクスペリエンスを提供するものであり、組織の管理者は、使用するデバイスが管理されているかどうかにかかわらず、ユーザーに生産的でセキュアな仕事用のブラウジング環境を提供できます。

 これまでのMicrosoft Edgeも企業向けの機能を搭載しており、ポリシー設定などで制御できました。例えば、「IEモード」や「エンタープライズサイトリスト」「Microsoft Defender Application Guard」(旧称、Windows Defender Application Guard、WDAG)のエンタープライズ管理モードなどです。

 これらとは別に、新しいMicrosoft Edge for Business、つまり、Microsoft Edge バージョン116以降では、Microsoft Entra IDアカウントでMicrosoft Edgeにサインインすると、Microsoft Edge専用のエクスペリエンスに切り替わるようになります。ブラウザ右上のプロファイルアイコンの右側には「職場」と表示され(「設定|外観|タイトルバーにプロフィールアイコンを表示:オフ」にすると、ツールバー上にプロファイルアイコンが表示されます)、Microsoft Entra IDアカウントのプロファイルを使用するアプリのアイコンは、タスクバー上でブリーフケース付きのものに置き換えられます。また、仕事用プロファイルのMicrosoft Edgeの「設定|Microsoft Edgeについて」には「Microsoft Edge for Business」と表示されます(画面2)。

画面2
画面2 Microsoft Entra IDアカウントのプロファイルで使用中のMicrosoft Edgeは、仕事用に最適化されたエクスペリエンスを持つ「Microsoft Edge for Business」に切り替わる

 Microsoft Entra IDアカウントのプロファイルとは別に、Microsoftアカウントのプロファイルを作成すると、個人用のMicrosoft Edgeに切り替えることができ、ユーザーは新しいプロファイルの自動切り替え機能(複数のプロファイルが存在する場合に既定で有効)により、仕事用と個人用のブラウジング環境が明確に分離されます(画面3)。

画面3
画面3 個人用のMicrosoftアカウントのプロファイルを作成すると、プロファイルの自動切り替え機能が有効になり、仕事用と個人用のブラウジングが自動的に切り替えられ、分離される

 この他、新しいMicrosoft Edge for Businessには今後、企業ブランディングのサポートと、管理されていない個人デバイスからの保護されたアクセス(Unmanaged BYOPC、テナントへのオンボードでプレビュー評価可)のサポートが追加される予定です。

Microsoft Edge for BusinessとBingチャットエンタープライズ

 新しいMicrosoft Edge for Businessの新機能というわけではありませんが、「Bingチャットエンタープライズ」を利用するライセンス(Microsoft 365 E3/E5など)を持っている場合、Microsoft Edge for BusinessではBingチャットエンタープライズが利用できます(画面4)。詳しくは、本連載第19回で紹介しました。

画面4
画面4 新しいMicrosoft Edge for Businessでは、Bingチャットエンタープライズを利用できる

Microsoft Edge for Businessと企業向けEdgeワークスペース

 Microsoft Edge バージョン114からは、「Microsoft Edgeワークスペース」という企業向けのコラボレーション機能が利用可能です。企業向けのEdgeワークスペースは既に一般提供されており、Microsoft Edge for Businessの「Edgeワークスペース」アイコン(「プロファイル 職場」アイコンの隣)から新しいワークスペースを作成し、同じテナント内のMicrosoft Entra IDアカウントを招待できます(画面5画面6)。同じワークスペースを使用するユーザーは、ブラウザの開いているタブ、お気に入り、履歴をリアルタイムで共有することができます(画面7)。

画面5
画面5 Edgeワークスペースを新規作成する
画面6
画面6 同じテナント内のMicrosoft Entra IDアカウントを招待し、招待するユーザーにワークスペースに接続するためのリンクを送信する
画面7
画面7 同じワークスペースを使用するユーザーは、開いているタブ、お気に入り、履歴をリアルタイムに共有できる

 なお、Edgeワークスペース機能はMicrosoftアカウントでサインインする個人向けにも提供される予定ですが、現在はプレビュー段階です。企業向けのEdgeワークスペースに、Microsoftアカウントや別テナントのMicrosoft Entra IDアカウントを招待することはできません。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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