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2023年上半期のSSD使用統計、最も故障しにくい4製品の名前は?四半期故障率とその推移、生涯故障率などを報告

Backblazeは、2023年上半期の自社データセンターにおけるSSD使用統計レポートを発表した。

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 クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2023年9月26日(米国時間)、2023年上半期の自社データセンターにおけるSSD使用統計レポートを発表した。

 2023年6月30日時点で、Backblazeは世界のデータセンターで運用するクラウドストレージプラットフォームのストレージサーバの起動ドライブとして、3144台のSSDを使用していた(2022年6月30日時点での使用台数は2558台)。

 Backblazeはこの3144台のSSDを調査し、「2023年第1四半期、第2四半期の故障率」「過去3年間の四半期ごとの故障率の推移」「故障するまでの平均使用期間」「故障のバスタブ曲線」「生涯故障率」について報告している。

 なお、Backblazeは6月30日時点で、ストレージサーバの起動ドライブとして1316台のHDDも使用しており、SSDとHDDを合計した起動ドライブの総数は4460台だった。また、データドライブとして24万1297台のHDDも使用していた。Backblazeはこれらのデータドライブ(HDD)についても、使用統計レポートを2023年8月に発表している。

SSD起動ドライブの概要

 Backblazeは、以前はストレージサーバの起動ドライブとしてHDDを使っていたが、2018年第4四半期から、全ての新しいストレージサーバの起動ドライブとして、また、故障したHDD起動ドライブの代替として、SSDを採用している。

 Backblazeのデータセンターにおける起動ドライブの役割は、ストレージサーバの起動だけではない。起動ドライブは毎日、ストレージサーバが生成するログファイルや一時ファイルの読み書き、削除も行っている。

 2023年6月末時点でBackblazeが使用していた3144台のSSDは、4社のメーカー(5ブランド)の14モデルだ。

2023年上半期のSSDのAFR(年間平均故障率)

 Backblazeは、2023年第1四半期、第2四半期のSSDの年間平均故障率(AFR:Annualized Failure Rate)を、以下の表で報告している。

 AFRは、モデルごとに次のように算出されている。「AFR=(故障件数/(正常稼働日数/365))*100」

 「正常稼働日数」は、各モデルの個々のSSDが正常に稼働した日数の合計を指している。


2023年第1四半期のSSDのAFR(提供:Backblaze)

Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:正常稼働日数、Drive Failures:故障件数


2023年第2四半期のSSDのAFR(提供:Backblaze)

Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:正常稼働日数、Drive Failures:故障件数

追加されたSSD

 2023年上半期の6カ月間に238台のSSDが追加された。追加台数が最も多かったモデルは、Micron TechnologyのCrucialブランドの「CT250MX500SSD1」(110台)で、Western Digitalの「WD Blue SA510 2.5」(62台)、Seagate Technologyの「ZA250NM1000」(44台)がこれに続いた。

AFRが極めて高いモデル

 Seagateの「SSDSCKKB240GZR」は、第1四半期のAFRが800%を超えている。第1四半期にこのモデルを1台使い始めたところ、1.4カ月後に故障したからだ。故障後に導入したもう1台は、第2四半期末まで故障せず、第2四半期のAFRは0%となった。このケースでは、適切な結果を得るのに十分なデータがない。算出されたAFRを妥当と見なすには、最低でも1四半期のSSDの台数が100台、正常稼働日数が1万日に達していることが望ましい。

過去3年間の四半期ごとのAFRの推移

 SSDの2023年第1四半期のAFRは0.96%、第2四半期のAFRは1.05%だった。四半期ごとのAFRの過去3年間の推移は以下のようになっている。


SSDの四半期ごとのAFRの推移(提供:Backblaze)

 四半期ごとのAFRは、いわば炭鉱のカナリアのような役割を果たす。例えば、2021年第1四半期は0.58%だったが、第2四半期には1.51%、第3四半期には1.72%に跳ね上がった。その後の調査により、あるSSDモデルがこの上昇の主な原因であることが判明し、そのモデルの使用は取りやめられた。

 あるSSDモデルがBackblazeの環境に適合しないことは時折あり、Backblazeは、それらがシステム全体に与える影響を緩和したり、あるいはそれらを除去したりしている。

SSDが故障するまでの平均使用期間

 Backblazeは、SSDの使用統計レポートでは初めて、故障するまでの平均使用期間の調査結果を報告した(HDDのレポートでは、既にこうした調査報告を行っている)。

 これまでに故障したSSDの台数は63台にとどまり、データセットのサイズとしては大きくないが、調べたところ、これらの平均使用期間は14カ月だった。これに対し、Backblazeが使用するSSD全体の平均使用期間は25カ月だ。そこでBackblazeは次に、サンプルデータ量がある程度多い3つのモデルについて、良好なSSDと故障したSSDの平均使用期間も比較した。


良好なSSDと故障したSSDの平均使用期間(提供:Backblaze)

 この表を見ると、稼働中のSSD(良好なSSD)の平均使用期間が長いほど、故障したSSDの平均使用期間も長くなっている。つまり、SSDが故障するまでの平均使用期間は、SSD全体の使用期間が長くなるにつれて、伸びると予想するのが妥当だと、Backblazeは述べている。

SSDの故障はバスタブ曲線に当てはまるか

 Backblazeは以前、信頼性工学で使用されるバスタブ曲線に、HDDの故障がどの程度当てはまるかを調べた。今回のレポートでSSDについても、同様の調査を初めて行い、結果を次のように示している。


SSDの故障のバスタブ曲線(提供:Backblaze)

 各四半期のSSDの故障をプロットした曲線(青線)は少しでこぼこしているが、傾向線(2次多項式)は、明らかにバスタブ曲線に近い。傾向線はデータとの一致率が70%程度にとどまる。だが、データ量が限られている中で、SSDの故障の発生状況が古典的なバスタブ曲線に従った経路をたどっているのは驚くべきことだと、Backblazeは述べている。

SSDの生涯AFR

 Backblazeは、2023年6月末時点で使用していた3144台のSSDの生涯AFRを、以下の表で報告している。

 生涯AFRは、Backblazeが個々のSSDを導入して以来の全期間のデータから算出されている。前述したように、Backblazeは2018年第4四半期からSSDの導入を開始しており、最も古いSSDでは、このデータは2018年第4四半期までさかのぼる。


2023年第2四半期末におけるSSDの生涯AFR(提供:Backblaze)

Drive Days:正常稼働日数、Drive Failures:故障件数、Confidence Interval:信頼区間

 2023年第2四半期末におけるSSD全体の生涯AFRは0.90%となり、2022年第4四半期末の0.89%からわずかに上昇したが、1年前の2022年第2四半期末の1.08%からは低下している。

 前述したように、AFRの数値にある程度の信頼性を持たせるには、SSDの台数が100台以上、正常稼働日数が1万日以上であることが望ましい。上の表からこの条件を満たすSSDモデルを抽出すると、以下のようになる。


2023年第2四半期末に使用していたSSDのうち、台数が100台以上、正常稼働日数が1万日以上であるモデルの生涯AFR(提供:Backblaze)

Drive Days:正常稼働日数、Drive Failures:故障件数、Confidence Interval:信頼区間

 この表から、14種類のSSDモデルの中で、統計的に十分なサンプル量があり、生涯AFRが1%未満の故障しにくいモデルが4種類あることが分かる。

 AFRの数値について、より厳密な信頼性を求める場合は、信頼区間に注目するとよいかもしれない。SSDでは、信頼区間(最大値と最小値の差)が1.0ポイント以下であれば、算出されたAFRが妥当と考えられる。信頼区間がこの条件を満たすモデルを、生涯AFRの最初の表から抽出すると、以下のようになる。


2023年第2四半期末に使用していたSSDのうち、信頼区間が1.0ポイント以下であるモデルの生涯AFR(提供:Backblaze)

Drive Days:正常稼働日数、Drive Failures:故障件数、Confidence Interval:信頼区間

 この3種類は、上に挙げた4種類のモデル(生涯AFRが1%未満)からSeagateの「SSD」を除いたものとなっている。

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