「生涯エンジニアでいたい」は、本当の理想なのか?:仕事が「つまんない」ままでいいの?(106)(2/3 ページ)
「生涯エンジニアでいたい」――そう思っている人も多いでしょう。20年前の僕も「何となく」そう思っていました。でも、いまは……。
「何となく」しか描けなかった僕の「現在の未来像」
一方、現在の未来像は、かなり明確です。
僕は新潟に住んでいます。地方における人口減少、少子高齢化はかなり深刻で、近い将来(しかも、数年のうちに)「地元の企業は、恐らく人材不足で相当苦しむことになるな」と思っています。
そこで、IT業界での経験や組織づくりやコミュニケーションのノウハウ、マーケティングの知識や経験、フルリモートや複業で働いてきた時間と場所の制約がない働き方を生かし、地域の企業に地域外の人材が、テレワークや複業をはじめとした多様な形で働ける仕組みづくりに取り組んでいます。
地域の企業と地域外の人材が仕事を通じて関わるためには、リモートでも働ける環境が必要です。そこで、DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進や企業と人材が出会える仕組みづくり、新たな働き方でもコミュニケーションができる組織づくり、地元の大学生がITのスキルを身に付けて、地元の企業に貢献でき、地域外の企業ともリモートで働ける環境や学びの機会を作っています。
仕事を通じて地域に人の流れを創ること。そして、人口減少という社会課題で苦しむであろう地域企業の課題を解決すること。「地域の役に立ちたい」と願うビジネスパーソンや学生を育成すること。そのためにITを生かすこと――。
人口減少という社会課題を解決しながらも、一人一人が楽しく働けるようにすること。これが、いま現在の僕のビジョンであり、未来像です。
このような、将来に対する明確なビジョンがあると、「何をすればいいのか分からない」といった不安が少なくなります。それはまるで、真っ暗闇の夜の海でも、灯台をめがけて船を進められるような感覚です。
もちろん、仕事をしていれば、うまくいかないことや、悔しい思いをすることはたくさんあります。でも、ビジョンがあることによって「それでも、やるんだ」という気持ちが湧いてきて、多少苦しくても、前に進められる自分がいます。
ビジョンがあればいい、というものでもない
ただ……いまでこそ、このようなビジョンを描けるようになりましたが、ここまで大きなビジョンはなくてもいいような気もします。
なぜなら、僕がこのようなビジョンを描けるように(あるいは、描かざるを得なく)なったのは、組織の中で働いていたときに、心が折れそうになるぐらい、ストレスをかけられるマネジメントを受けた経験や、独立してもなかなか食えなかった経験、地方に住んでおり、少子高齢化がリアルに進んでいる「さま」をまざまざと感じている経験など、どちらかといえば「楽しい」よりも、「つらい」「苦しい」「ヤバい」経験によるものだからです。
つらく苦しい経験は、できれば、他の人にはしてほしくありません。ですから「ビジョンを描けるようになるためには、つらい経験をしろ」なんて、口が裂けても言いたくはありません。
でも、ビジョンがあった方が、仕事を、人生を、迷わず歩めることも、また事実でしょう。単純に「あった方が便利」とも思います。
では、つらく、苦しい思いをせずとも、身の丈にあったビジョンを描けるようになるためには、どうすればいいのでしょうか?
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