「生涯エンジニアでいたい」は、本当の理想なのか?:仕事が「つまんない」ままでいいの?(106)(3/3 ページ)
「生涯エンジニアでいたい」――そう思っている人も多いでしょう。20年前の僕も「何となく」そう思っていました。でも、いまは……。
身の丈にあったビジョンを描けるようになるために
1つ目は、「事実を知る」ことです。
世の中には多くの社会課題があります。例えば「人口が減少している」というテーマは、多くの人が知っています。しかし「1年にどれくらいの人口が減っていて」「2025年にはどうなるのか?」「2040年にはどうなるのか?」まで知っている人はほとんどいないでしょう。
もし興味と機会があれば、人口減少の現実を調べてみるといいでしょう。「あれ? これ、実は結構ヤバいんじゃないか?」のように思えたら、少しだけ社会課題を自分ごと化できます。
2つ目は、「人の話を聞きに行く」ことです。
もし地方出身なら、実家に帰省したときに、親やおじいちゃん、おばあちゃんに地域の現状を聞いてみるといいと思います。「最近、○○さんが亡くなった」「人がいなくて、地域の祭りができなくなりそうだ」といった、身近な課題が目の前にあることに気付くはずです。
インターネットの情報もいいのですが、事件は現場で起こっています。実際に足を運んでみることをオススメします。
3つ目は、「身近な活動に参加してみる」ことです。
SNSをやっていれば、さまざまな社会活動に取り組んでいる方が、身近に1人ぐらいはいるのではないかと思います。タイムラインにいろいろなイベントの情報が流れて来ることもあるでしょう。もしいなければ、イベント情報が掲載されているサービスなどを参照し、興味がありそうなイベントに参加してみるのです。
いきなり対面はハードルが高いので、まずはオンラインのイベントから参加するといいでしょう。
そうすると、イベンターたちは「なぜ、この取り組みをしているのか/しなければならないのか」といった話をしてくれるはずです。そこで、少しでも心が動いたら、情報をウオッチしてみます。
社会課題と自身の技術を結び付ける
このような形で、もし、身近な社会課題の事実や現状の一片を「知る」ことができたら、「ボク/ワタシの技術や経験、人とのつながりで、何か役に立てそうなことはないか?」を考えてみます。
もっとも、そこまで深掘りしなくてもいいのかもしれませんが、社会課題と自身の技術をひも付けると、もう少し、自分ごと化したビジョンを描けるようになります。
なお、別にここまでして「意識高い系」にならなくてもいいような気もします。何も知らずに、毎日温かいごはんを食べて、おふろに入って、ビールを飲んで、寝る……そんなに前のめりにならなくても、それで十分幸せじゃないですか。
また、現実を知ることによって、過度に不安になったり、何もできない自分に無力感を抱いたりするかもしれません。それでは、元も子もありません。
ただ、何となく「生涯エンジニアでいれればいいな」というのと、「私は○○のために、自分の技術を生かすのだ」では、エンジニアでいることの、心に宿る「何か」は変わってくるのではないかと思います。エンジニアでいることが「手段」となり、新たな「目的」が見つかる……というか。
世界まで変えなくてもいいけれど、身の回りの、半径2メートルの「何か」が変えられたら、エンジニアとして、それで十分幸せなのかもしれませんよ。
筆者プロフィール
しごとのみらい理事長 竹内義晴
「仕事」の中で起こる問題を、コミュニケーションとコミュニティーの力で解決するコミュニケーショントレーナー。企業研修や、コミュニケーション心理学のトレーニングを行う他、ビジネスパーソンのコーチング、カウンセリングに従事している。
著書「Z世代・さとり世代の上司になったら読む本 引っ張ってもついてこない時代の「個性」に寄り添うマネジメント(翔泳社)」「感情スイッチを切りかえれば、すべての仕事がうまくいく。(すばる舎)」「うまく伝わらない人のためのコミュニケーション改善マニュアル(秀和システム)」「職場がツライを変える会話のチカラ(こう書房)」「イラッとしたときのあたまとこころの整理術(ベストブック)」「『じぶん設計図』で人生を思いのままにデザインする。(秀和システム)」など。
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