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企業ユーザーは混乱必至? Windows 10/11に追加された「Windowsバックアップ」アプリはどう使うのが正しいのか企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内(26)

Microsoftは最近の品質更新プログラムで、Windows 10 バージョン21H2/22H2、およびWindows 11 バージョン22H2に「Windowsバックアップ」アプリを追加しました。このアプリの役割と機能、そして企業環境では利用が制限されることについて説明します。

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「企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内」のインデックス

企業ユーザーに贈るWindows 11への乗り換え案内

システムコンポーネントとしての「Windowsバックアップ」アプリの追加

 Microsoftは、2023年9月のセキュリティ更新プログラム(Bリリース)である「KB5030310(OSビルド22621.2361)」以降の品質更新プログラムで、「Windows 11 バージョン22H2」に新しいシステムコンポーネントとして「Windowsバックアップ」アプリを追加しました。先日リリースされた「Windows 11 バージョン23H2」には、このアプリは最初から搭載されています。

 Microsoftは同じ更新プログラムで「制御された機能ロールアウト(Controlled Feature Rollout、CFR)による新機能の段階的なロールアウトを開始しましたが、そのロールアウトとは別にCリリースをインストールするとすぐに利用可能になります。このアプリは、「Windows 11バージョン21H2」向けにも2023年10月のBリリースで追加されています。

 また、「Windows 10 バージョン22H2」に対しては、2023年8月のオプションの更新プログラム(更新プログラムのプレビュー、Cリリース)である「KB5029331(OSビルド19045.3393)」以降、Windows 10 バージョン21H2に対しては、2023年9月のBリリース「KB5030211(OSビルド19044.3448)」以降の品質更新プログラムで追加されています。

 Windowsバックアップアプリは、スタートメニューに追加されるので、そこから開始できる他、タスクバー上の検索ボックスに「Windows バックアップ」(Windowsの後ろに半角スペースを入れる)と入力して、検索結果から起動することもできます。なお、このアプリはシステムコンポーネントとして追加されたもので、Microsoft Storeから入手してインストールするストアアプリのようにアンインストールする方法は用意されていません。

「Windowsバックアップ」アプリの使い方は?

 Windowsバックアップアプリを使用すると、ユーザーは「Microsoft OneDrive」(5GBまで無料)への特定のファイルとフォルダのバックアップ、インストール済みのストアアプリとそのピン留め状態の記憶、設定(アクセシビリティー、言語設定と辞書、個人設定、その他のWindowsの設定)、資格情報(Wi-Fiネットワークとパスワード)を、「Microsoftアカウント」にひも付けてクラウドにバックアップできます(画面1画面2)。

画面1
画面1 Windows 10に追加された「Windowsバックアップ」アプリ
画面2
画面2 Windows 10のデータと設定をクラウドにバックアップする

 バックアップしたデータは、新たに購入したWindows 11デバイスや、Windows 11の再インストール時に復元できるようになります。

 その方法は簡単で、バックアップしたのと同じMicrosoftアカウントでサインインするように設定するだけです。認証が確認され、以前に保存されたバックアップが存在する場合は、それが提示されるので「このPCから復元する」をクリックして進めます(画面3)。

画面3
画面3 「Windowsバックアップ」アプリでバックアップされたデータは、Windows 11 バージョン21H2以降のOOBEセットアップ時に復元可能

 なお、Windowsバックアップアプリでバックアップされたデータの復元機能は、Windows 11 バージョン21H2以降の新規/再インストール時、およびプリインストールPCの初回起動時のOOBE(Out-Of-Box Experience)セットアップで利用できます。

利用条件は「Microsoftアカウント」によるWindowsへのサインイン

 1つ注意点があるとすれば、Windowsバックアップアプリを利用するには、WindowsにMicrosoftアカウントでサインインしていることです。「Microsoft Entra ID」(旧称、Azure Active Directory、Azure AD)の職場や学校アカウントでは利用でません。

 Microsoft Entra IDアカウントでサインインしている場合は、以下の画面4のように表示されます。また、ローカルユーザーでサインインしている場合は、バックアップを開始しようとすると、「Microsoftアカウントにサインインしましょう」と表示されアカウントの切り替えが促されます。

画面4
画面4 Microsoft Entra IDアカウントでサインインしている場合、「Windowsバックアップ」アプリは利用できなくなる

 Windows 10にも追加されたWindowsバックアップアプリは、Windows 11にアップグレードできない個人ユーザーに対して、できるだけ早くPCを新規購入してもらい、Windows 10から設定とデータの移行を簡単に行えるようにすることを意図しているのでしょう。例えるなら、スマートフォンの機種変更時に設定やデータを簡単に引き継げるOS標準あるいはベンダー提供のツールのようなものが、Windowsに標準で組み込まれたと考えると分かりやすいと思います。ただし、個人ユーザー向けの機能であって、企業や組織での利用は想定されていません。

 企業や組織向けには、多数のクライアントとデバイスの移行を効率化する「ユーザー状態移行ツール(User State Migration Tool、USMT)」が用意されています。しかし、現在のUSMTはWindows 10までを想定しており、Windows 11では移行できるものに制限があるなど、以前のバージョンのWindowsにはない制約があるようです。

 MicrosoftはWindowsバックアップアプリの存在が企業や組織のエンドユーザーを混乱させることを認識しているようで、以下の技術情報を公開しています。

 この技術情報によると、将来の品質更新プログラムによって、特定のユーザーにWindowsバックアップアプリが表示されないようにする予定だそうです。2023年11月時点では、Windows 10/11のスタートメニューの「Windowsバックアップ」と、Windows 11の「設定」アプリの「アカウント|Windowsバックアップ」に項目が見つかります(画面5)。

画面5
画面5 将来の品質更新プログラムによって、Microsoft Entra IDアカウントでサインインしている場合はこれらが非表示になる予定

 Windows 10 バージョン22H2以降に追加された「Copilot(プレビュー)」アプリは、MicrosoftアカウントまたはMicrosoft Entra IDアカウントでサインインしていると表示され、ローカルアカウントでサインインしていると非表示になりますが、Windowsバックアップアプリも今後、同じようなエクスペリエンスになるのではないでしょうか。

筆者紹介

山市 良(やまいち りょう)

岩手県花巻市在住。Microsoft MVP 2008 to 2024(Cloud and Datacenter Management)。SIer、IT出版社、中堅企業のシステム管理者を経て、フリーのテクニカルライターに。Microsoft製品、テクノロジーを中心に、IT雑誌、Webサイトへの記事の寄稿、ドキュメント作成、事例取材などを手掛ける。個人ブログは『山市良のえぬなんとかわーるど』。近著は『Windows版Docker&Windowsコンテナーテクノロジ入門』(日経BP社)、『ITプロフェッショナル向けWindowsトラブル解決 コマンド&テクニック集』(日経BP社)。


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