連載
仕様書通りにシステムを作りました。使えなくても知りません:「訴えてやる!」の前に読む IT訴訟 徹底解説(113)(1/3 ページ)
ユーザー企業が作った仕様書に抜け漏れがあり、その通りに作ったシステムが使いものにならなかった。悪いのは、ベンダー、ユーザー企業、どちらなのか?
IT訴訟を例に取り、トラブルの予防策と対処法を解説する本連載。今回取り上げるのは、要件の不備についての裁判例である。ユーザーが示した要件に抜け漏れや誤りがあり、これに沿って構築したシステムはユーザーが本来望んだ動作をしなかったというものだ。
ユーザーはこれを債務不履行であると訴えるが、ベンダーは「言われた通りに作っただけで、こちらには責任はない」と反論した。
この手の紛争について、裁判所の立場はおおむね一貫しているように思われ、似たような判断が各地で示されている。今回取り上げる判決はこうした考え方の大本となるもので、ベンダーの役割についても比較的明確に表されている。
判決は平成11年のもので、民法改正前の古いものではある。本連載で過去にも一度取り上げているが、近年においても同様の問題は相変わらず発生しているので、あらためて解説する。
ユーザーの示した要件が不備だったことに起因する紛争の例
広島地方裁判所 平成11年10月27日判決より
ある廃棄物関係の業者(以下、ユーザー企業)が業務拡大に伴い、基幹業務システムの刷新を企図して、ベンダーに発注した。ベンダーはユーザー企業が作成した仕様書(要件定義書)に従って開発したが、仕様書には、幾つかの業務的、論理的な誤りがあり出来上がったシステムは使用に耐えないものとなった。
ユーザー企業は、これについてベンダーが契約の目的に資して開発しなかったとして、債務不履行を訴えたが、ベンダーはシステムの不具合はユーザー企業の示した仕様の誤りによると反論した。
出典:判例時報 1699号 101頁
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