日本企業のDXは「顧客への価値提供」ではなく「目前の課題解決」が目的になっている ガートナー:DXの成功に必要な取り組みについて提言
ガートナージャパンは、DXにおける業務改革の重要性についての提言を発表した。同社の川辺氏は「業務改革によって顧客にどのような価値がもたらされるかについて再確認することが重要だ」としている。
ガートナージャパンは2024年4月9日、DX(デジタルトランスフォーメーション)における業務改革の重要性について提言を発表した。ビジネスを成長させるためには競争力のあるビジネス価値をタイムリーに顧客に提供し、その価値を認めてもらい、顧客に自社を選んでもらう必要がある。しかしガートナージャパンによると、日本企業の多くは課題解決に手いっぱいで、顧客への価値提供まで手が回っていない状況にあるようだ。
「真の意味でDXに成功した企業は依然として少ない」
ガートナージャパンによると、DX実現に向けて推進を担当する役員や組織を持つ企業が増えている一方で、「競争力のあるビジネス価値を創出する“抜本的なトランスフォーメーション”に成功する」と考える企業の割合は少ないという。その原因としてガートナージャパンは「属人的な業務の継続や縦割り型組織による連携不足」を挙げる。
「日本企業が取り組むDXの多くは、老朽化したシステムの刷新や人手不足解消のための自動化ソリューションの導入といった形で推進される。つまり、顧客へ価値を提供するためというよりは、目前の課題解決が主な目的で、結果として現行業務をデジタルで再現するだけにとどまる傾向にある」(ガートナージャパン)
ガートナージャパンの川辺謙介氏(シニアディレクター アナリスト)は、「デジタル技術を活用した業務改革によって競争力を強化するには幾つかポイントがある。例えば、業務間やシステム間のインテグレーション、顧客へ価値を提供するに至るまでの時間短縮などだ。業務改革に取り組む上で、市場の変化や技術の進展を十分に考慮せずに、顕在化した業務上、システム上の課題のみに着目し、短期間かつ低コストで対処しようとすると、急場をしのぐ現行業務の再現に終始することになる。その結果、将来を見据えた戦略的で計画的なDXが遠のいてしまう」と指摘している。
変化に敏感な企業は、デジタル技術を活用して効果的にビジネス価値を提供できるようになる。それに対し、現行業務を再現するだけにデジタル技術を導入する企業は変化に対処しきれず、投資が必要であると気付いた時点で、競合他社との間に挽回できないほどの大差がつく、とガートナージャパンは警告している。同社は2027年にかけて「現行業務を再現するだけのIT投資」の90%は、迫り来る変化に対応できず、市場競争力を失う主因になると予測している。
川辺氏は「デジタル技術を活用した業務改革によって顧客にどのような価値がもたらされるかを再確認することが重要だ」と指摘。「エンドツーエンドでプロセス全体を見渡し、ボトルネックとなっている箇所を見極めるとともに、煩雑な業務を強いられている従業員のエンゲージメントレベルの向上に努めることで、顧客へも好影響を与えることができるだろう」と述べている。
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