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28万台のHDD調査で分かったモデル別故障率 「出来過ぎ」「要注意」のモデルも明らかに時間経過による故障率の推移も報告

Backblazeは、2024年第2四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。顧客データの保存に使用していた28万4876台のHDDから、490台を除いた28万4386台のHDDを分析し、モデル別故障率や時間経過に伴う故障率の推移を明らかにしている。

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 クラウドストレージやクラウドバックアップサービスを提供するBackblazeは2024年8月6日(米国時間)、2024年第2四半期の自社データセンターにおけるデータドライブの統計レポートを発表した。

 2024年第2四半期末時点で、Backblazeは世界中のデータセンターで28万8665台のドライブを管理していた。そのうち3789台が起動ドライブ(SSDとHDD)、28万4876台がデータドライブ(全てHDD)だ。同レポートではデータドライブに焦点を当てて、「2024年第2四半期の故障率」「生涯故障率」「時間の経過による故障率の推移」を報告している。

2024年第2四半期の故障率

 Backblazeは、2024年第2四半期末時点で顧客データの保存に使用していた28万4876台のHDDから、490台を除いた28万4386台のHDDを分析し、これらを構成する29種類のモデル別に年間平均故障率(AFR:Annualized Failure Rate)を算出した。

 除外された490台のドライブの内訳は以下の通り。

  • 2024年第2四半期末にドライブの使用台数が100台に満たなかったモデル
  • 2024年第2四半期のドライブの総稼働日数(個々のドライブの稼働日数の合計)が1万日に満たなかったモデル
  • 2024年第2四半期に仕様を超える高温にさらされたドライブ
2024年第2四半期のHDDのAFR Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:総稼働日数、Drive Failures:故障件数(提供:Backblaze)
2024年第2四半期のHDDのAFR Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:総稼働日数、Drive Failures:故障件数(提供:Backblaze)

2024年第2四半期の故障率統計に関するハイライト

AFRが上昇

 2024年第2四半期のAFRは1.71%となり、前四半期(2024年第1四半期)の1.41%から上昇したが、前年同期(2023年第2四半期)の2.28%からは低下した。16モデルのAFRが1.71%以下で、13モデルが1.71%より大きかった。

2モデルが故障ゼロ

 上表のように、2024年第2四半期には、以下の2つのドライブモデルで故障がなかった。

  • Seagate Technology(以下、Seagate)製16TBモデル(ST16000NM002J)
  • Seagate製14TBモデル(ST14000NM000J)

 いずれも使用台数と平均使用期間が比較的少ないため、多少割り引いて見るべきだが、16TBモデルは生涯故障率が0.57%と非常に低い。

役目を終えた古参モデル

 2024年第1四半期には、東芝製4TBモデルの最後に使っていたものをデータ移行後に処分した。第2四半期には、6TBモデルの最後に使っていたものを同じく処分した。その中に含まれるSeagate製6TBモデルは平均使用期間が9年(108カ月)に達していたが、生涯AFRが0.86%という優れた数字を残した。

  現在使用中のSeagate製4TBモデル(ST4000DM000)は、平均使用期間が99.5カ月の最古参モデルだ。これは今後1〜2四半期でデータ移行後に処分される見込みだ。

10年クラブ

 2024年第2四半期末時点で最も使用期間が長いデータドライブを調べた結果、HGST製4TBモデル(HMS5C4040ALE640)の1台で、使用期間は9年11カ月と23日だった。9年以上使用している他のドライブと同様に、このドライブはデータ移行中だ。Backblazeは次回のレポートで、このドライブが「10年クラブ」に到達したかどうかを報告するとしている。

 なお、HDD起動ドライブに関しては、10年間使用しているものが11台あり、そのうちの1台は11年以上使用している(Western Digital〈WDC〉製500GBモデル)。

HGSTのサプライズ

 HGST製ドライブモデルは長年にわたり、非常に優れた性能を発揮してきた。そのため、HGST製12TBモデル(HUH721212ALN604)の2024年第2四半期のAFRが、7.17%に達したことはニュースだ。これは四半期AFRとして過去最大の値だ。このモデルの生涯AFRも、前年同期の0.99%から1.57%に跳ね上がっている。この生涯AFRは憂慮すべきものではないが、Backblazeはこの傾向に注目しているという。

生涯故障率

 Backblazeは、2024年第2四半期末に顧客データの保存に使用していたHDDのうち、以下の基準を満たす25モデルの28万3065台について、生涯AFRを次のようにまとめた。

  • ドライブの使用台数:500台以上
  • ドライブの総稼働日数(個々のドライブの稼働日数の合計):10万日以上
2024年第2四半期のHDDのAFR Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:総稼働日数、Drive Failures:故障件数(提供:Backblaze)
2024年第2四半期のHDDのAFR Avg. Age(months):平均使用期間(月数)、Drive Days:総稼働日数、Drive Failures:故障件数(提供:Backblaze)

故障プロファイルの調査

 Backblazeは今回のレポートで、個々のドライブモデルについて、時間の経過(使用期間の増加)による生涯AFRの変化の傾向を調査した結果も報告した。Backblazeはこの変化の傾向を「故障プロファイル」と呼んでおり、「故障プロファイルを把握することは、ドライブの交換および移行戦略の最適化や、ひいては自社のクラウドストレージサービスの堅牢(けんろう)性の維持に役立つ」との見解を示している。

 Backblazeはまず、「2024年第2四半期末時点での総稼働日数(個々のドライブの稼働日数の合計)が100万日以上」という条件で、調査対象のドライブモデルを23種類に絞り込んだ。

 さらに、これらのモデルを、平均使用期間が5年(60カ月)以上のものと、5年(60カ月)未満のものに分けた。前者が14モデル、後者が9モデルだ。この期間の区切りは、エンタープライズクラスのHDDの一般的な保証期間の長さに基づいている。

 Backblazeは以下のように、この2つのグループ別に、平均使用期間を縦軸に、生涯AFRを横軸に取って、個々のモデルをプロットした図を作成し、これを4象限に分割して説明を加えている。

平均使用期間が60カ月に満たないドライブモデルの2024年第2四半期末時点での生涯AFR(提供:Backblaze)
平均使用期間が60カ月に満たないドライブモデルの2024年第2四半期末時点での生涯AFR(提供:Backblaze)

 第1象限に属するドライブモデルは、生涯AFRが1.5%未満だ。この象限内の右側にあるモデルは今後、左側にあるモデルよりも、少し注意を払う必要があるかもしれない。

 第2象限内の2つのドライブモデルは、生涯AFRが1.5%を超えているが、2%前後とまだ許容範囲だ。この数字が時間とともに著しく上昇しないことが重要だ。

 第3象限にはドライブモデルがないが、もしあっても、警戒しなくてもよいかもしれない。ドライブによっては、初期に故障率が高く、時間の経過とともにAFRが低下するものがあるからだ。

 第4象限にあるドライブモデルは、まだ使い始めて間もなく、故障プロファイルが形成され始めたばかりだ。

 次にBackblazeは、平均使用期間が60カ月以上の9種類のドライブモデルについても、同様の図を作成し、説明を加えている。

平均使用期間が60カ月以上のドライブモデルの2024年第2四半期末時点での生涯AFR(提供:Backblaze)
平均使用期間が60カ月以上のドライブモデルの2024年第2四半期末時点での生涯AFR(提供:Backblaze)

 これらのドライブモデルは、平均使用期間が60カ月に満たないドライブモデルとは異なり、4つの象限全てに分散している。Backblazeによると、1つ前の図と同様に、第1象限にあるモデルは良好に動作しており、第2象限と第3象限のモデルは注意が必要であり、第4象限のモデルは今のところ問題なさそうだという。

 Backblazeは、これらのドライブモデルについて、四半期ごとに生涯AFRを算出してきた。そこで、平均使用期間が60カ月以上の9種類のドライブモデルについて、時間の経過(平均使用期間の増加)による生涯AFRの推移をプロットし、次の図を作成した。図が煩雑にならないように、平均使用期間は24カ月から開始している。

平均使用期間が60カ月以上のドライブモデルの生涯AFRが、時間の経過とともにどう変化してきたか。Backblazeは、この図を「スネーク(へび)図」と呼んでいる(提供:Backblaze)
平均使用期間が60カ月以上のドライブモデルの生涯AFRが、時間の経過とともにどう変化してきたか。Backblazeは、この図を「スネーク(へび)図」と呼んでいる(提供:Backblaze)

 2024年第2四半期末時点で、5つのドライブモデルが第1象限に属している。2つのHGST製4TBモデル(茶色線と紫色線)とSeagate製6TBモデル(赤線)は、生涯AFRが長期にわたって、特に、平均使用期間が60カ月を超えた後も一貫して低い。これは好ましい故障プロファイルだ。

 Seagate製8TBモデル(青線)とHGST製8TBモデル(灰色線)は、いずれも平均使用期間の増加とともに生涯AFRが上昇している。HGST製8TBモデルは、平均使用期間が48カ月を超えてからの18カ月で、生涯AFRが約0.5%から1.0%に上昇し、その後横ばいになっている。Seagate製8TBモデルは、同じく60カ月を超えてからの約2年間で、1.0%から1.5%近くまで上昇し、その後横ばいになっている。

 残りの4モデルは、2024年第2四半期末時点で第2象限に属している。このうちSeagate製8TBモデル(黄色線)、Seagate製10TBモデル(緑色線)、HGST製12TBモデル(水色線)は、同様の故障プロファイルを持つ。いずれも、ある時点から曲線が右に曲がり始めている。つまり、平均使用期間の増加ともに生涯AFRが大幅に上昇している。

 このうちSeagate製8TBモデル(黄色線)は、横ばいに転じている兆候があるが、これまでの傾向が続く場合は、3モデルとも注意深く監視され、交換されることになる。

 第2象限には、Seagate製4TBモデル(黒線)もある。このモデルは、16TB以上のドライブへのデータ移行と交換が進められている。このプロセスは今後1〜2四半期で完了する見通しだ。

正常な故障プロファイル

 Backblazeによると、正常な故障プロファイルを持つドライブモデルを1つ選ぶとすれば、それはSeagate製8TBモデル(青線、ST800DM002)だという。平均使用期間が60カ月に達するまでは、生涯AFRがSeagateの予想AFRである1.0%程度で一貫して推移しており、その後は時間の経過とともに、生涯AFRが予想通り上昇しているとした。

 Backblazeは「2つのHGST製4TBモデル(茶色線と紫色線)が選ばれると思われたかもしれない。これらのモデルの“問題”は、AFRが、あらゆるドライブメーカーが公表しているあらゆる予想AFRをはるかに下回っていることだ。これはユーザーにとって素晴らしいことだが、その生涯AFRの推移は残念ながら、例外的なものであり、正常ではない」と述べている。

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