「非IT部門によるサービス導入」が肯定されるようになる? 「シャドーIT」との違いは?:ガートナー調査
ガートナージャパンは「シャドーIT」の現状に関する調査結果を発表した。高まり続けるITへの需要とIT部門の深刻な人材不足を背景に、これまで避けるべきとされていたシャドーITへの見方に変化の兆しが出てきた。
ガートナージャパンは2024年9月4日、「シャドーIT」の現状に関する調査結果を発表した。これは、国内のITユーザー企業でITシステムの構築、導入、保守、運用、サービス委託先の選定に関わる担当者を対象に、事業部門などの「非IT部門」によるIT製品、サービスの調達について調査した結果をまとめたもの。
セルフサービス化とシャドーITはどう違うのか
DX(デジタルトランスフォーメーション)関連のプロジェクトにおけるITベンダーの活用度合いについては「積極的にITベンダーを活用」と回答した企業の割合は2.7%、「必要に応じて補完的にITベンダーを活用」は48.9%で、7割以上の企業がITベンダーを活用していた。DXプロジェクトでよく利用される「クラウドサービス」については、43.3%の企業がITベンダーの選定、交渉は事業部門などの「非IT部門」が担当していた。
「非IT部門がITベンダーを選定、交渉する」と回答した企業に、それによって得られた成果は何かを聞いたところ「非IT部門の要件を最大限織り込んだサービスを調達できた」(57.6%)という回答が最も多かった。
非IT部門が主体となって調達するということはIT部門は導入に関わらない可能性がある。これはいわゆる“シャドーIT”につながる取り組みに見える。だがガートナージャパンは、全社共通のフレームワークによって「取引リスク」を評価し、リスクが低いものについては非IT部門に調達を委ねる仕組みを「セルフサービス」と呼び、シャドーITとは区別している。同社は今回の調査結果を基に「効率的なリソース配置や迅速性の向上を目的に、企業がビジネス部門のセルフサービスによる調達を増やす必要に迫られている」と指摘している。
ガートナージャパンの土屋隆一氏(シニアディレクターアナリスト)はそれに加えて「多角的にクラウドのリスクを評価する必要がある」と言う。非IT部門によるセルフサービスを認めるだけでは、既存システムと重複した機能のサービスを購入してしまいかねないからだ。
調査結果によると、非IT部門が主体となりクラウドを調達する際の課題として、「ベンダーへのセキュリティ評価がされない、あるいは不十分」(39.3%、複数回答、以下同)や「調達するサービスと周辺システムとの互換性が検証されない、あるいは不十分」(38.8%)、「既存システムと(一部または全部)重複した機能のサービスを購入してしまう」(25.8%)などの回答が多かった。
土屋氏は、「重複したサービスの購入は、無駄な支出や機能重複による社内システムの複雑化を招き、結果的に障害の増加につながる恐れがある。ITベンダーの選定に関わるリーダーはIT部門の関係者と協働し、ビジネス部門自らがベンダーのリスクを一次評価できる仕組みや、社内で推奨するクラウドを優先利用させるなどの調達ルールを策定することが求められる」と述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- アニメ「こうしす!」に学ぶ、「セキュリティとAI」の未来を予想しながら今からできるリスク対策とは
2024年5月29日、アイティメディアが主催するセミナー「ITmedia Security Week 2024 春」で、テレビ放送も行われたアニメ作品「こうしす! こちら京姫鉄道 広報部システム課」の監督・脚本を務める、京姫鉄道 代表社員CEO 井二かける氏が「AIブームとセキュリティ、アニメ『こうしす!』監督が考える今と未来」と題して講演した。ブームとなっているAIの業務活用にはリスクもあり、仮に全面禁止してもシャドーITのリスクがある。講演で井二氏は「AIに関する数々のリスクとどのように向き合えばよいのか」について、現場の視点と「こうしす!」流の未来予想を交えて解説した。 - クラウドに機密データを保存、でも「プロバイダーのデータ保護は心配」 Skyhigh Security
Skyhigh Securityはセキュリティ調査レポート「データのジレンマ:クラウド導入とリスク」を発表した。それによると、企業は平均して61%の機密データをクラウドに保存しており、90%の企業が少なくとも1回のサイバーセキュリティ侵害を経験していることが分かった。 - 思ったより少ない? 従業員数1000人以上の企業でシャドーITの利用経験がある社員の割合とは
メタップスは、従業員数1000人以上の企業を対象に実施したセキュリティ意識に関する調査の結果を発表した。それによると、18.3%の人が「シャドーIT」の利用経験があることが分かった。