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2024年の世界エッジコンピューティング支出が2桁増で2280億ドルに、その背景は? IDC予測プロビジョニングサービス支出がハードウェアを上回る見込み

IDCによると、世界のエッジコンピューティング支出は2024年に前年比14%増の2280億ドルとなり、その後も毎年2桁ペースで増加し、2028年には3780億ドル近くに達する見通しだ。

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 調査会社のIDCは2024年9月10日(米国時間)、2024年の世界のエッジコンピューティング支出が前年比14%増の2280億ドルになるとの予測を発表した。

 同社は2024年3月に前年比15.4%増の2320億ドルになるとの予測を発表しており、今回これを下方修正したことになる。

 エッジコンピューティング支出には、エッジソリューションのためのハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、プロビジョニングサービスに対する企業や組織の支出とサービスプロバイダーの支出が含まれる。この支出は毎年2桁ペースで増加し、2028年には3780億ドル近くに達する見通しだ。

そもそもIDCは「エッジ」をどう定義している? 2桁増を続ける背景は?

 IDCはエッジについて、「中央データセンターの外部で実行される技術関連のアクションを包含し、接続されたエンドポイントとコアIT環境を仲介する」と定義している。

 エッジは、企業や組織向けか、サービスプロバイダー向けかにかかわらず、コアデータセンターに見られる機能を拡張し、革新する重要な技術インフラだ。

 エッジエコシステムは、さまざまな技術とサービスで構成されている。その中にはコンピューティングインフラ(サーバ、ストレージ、ネットワーク機器など)、多様なソフトウェア(システムインフラ、セキュリティ、アプリケーション開発・展開など)、専門的な実装/管理サービス、クラウドベースの技術を提供するプロビジョニングサービスなどが含まれる。

 「AI(人工知能)の焦点がトレーニングから推論にシフトするにつれて、エッジコンピューティングによって、レイテンシ(遅延)の軽減やプライバシー強化のニーズに対応する必要が生じる」と、IDCのクラウドおよびエッジサービス担当リサーチバイスプレジデント、デーブ・マッカーシー氏は指摘する。

 「このトレンドにより、運用効率が最適化されるだけでなく、これまで中央インフラでは不可能だった新しいビジネスモデルが促進される。アプリケーションとデータをエッジロケーションに分散することで、ネットワークの混雑を減らし、より迅速な意思決定が可能になる」(マッカーシー氏)

エッジ活用の目的、必要な業界は?

 IDCは19の業界にわたって、7つの技術領域(AI、IoT〈モノのインターネット〉、AR〈拡張現実〉、VR〈仮想現実〉、ドローン、ロボティクス、その他)における500以上のエンタープライズユースケースにエッジ支出を分類している。

 この19の業界全てにおいて、2028年までの5年間におけるエッジコンピューティング支出の年平均成長率(CAGR)が2桁に達すると予測している。

 だが、企業や組織よりもサービスプロバイダーの方が、エッジ支出のCAGRが大きくなる見通しだ。サービスプロバイダーがエッジサービスを提供するための投資では、マルチアクセスエッジコンピューティング(MEC)、コンテンツデリバリーネットワーク(CDN)、仮想ネットワーク機能のためのインフラ支出が大きな割合を占めている。

 MECは、支出が最も急増している分野だ。5Gネットワーク、IoT、AIの普及に伴って次世代アプリケーションで必要となる、信頼性が極めて高い低レイテンシの通信をサポートするためにますます重要になっている。

 「企業は現在、エッジとAIへの投資を加速させている。リアルタイム分析、自動化、顧客体験の向上を推進するためだ。製造業、公益サービス、ヘルスケア、小売業では特にそうだ。AIベースのデバイス、GPUを搭載したエッジサーバ、5G接続といった重要な技術の普及が進んでおり、企業はよりソースに近いところでデータを処理し、より高いパフォーマンスを達成できるようになっている」と、IDC Europeのデータ&アナリティクス担当マネジャーを務めるアレクサンドラ・ロタル氏は説明する。

 「企業のこの取り組みにおいてサービスプロバイダーは、インフラの導入からAIの統合、エッジ管理まで、企業に合わせたソリューションを提供することで重要な役割を果たす。企業がエッジとAIをシームレスに導入し、高度なイノベーションの可能性を最大限に実現するよう支援している」(ロタル氏)

ハードウェアからプロビジョニングサービスに比重がシフト

 エッジコンピューティング支出をハードウェア、ソフトウェア、プロフェッショナルサービス、プロビジョニングサービスという技術の大分類別に見ると、近い将来は、ハードウェア支出が引き続き最大の割合を占める見通しだ。そのけん引役となるのは、今後数年にわたって需要増加が予測される、エッジインフラシステムのAIプロセッサおよびアクセラレータだ。

 だが、プロビジョニングサービス支出が2028年までに、ハードウェア支出を上回ると予測されている。プロビジョニングサービスの中では、IaaS(Infrastructure as a Service)が最も急成長するカテゴリーとなる。AIモデルやエッジコンピューティングアプリケーションの迅速な開発、展開、イテレーションを容易にする優れたツールとして利用されるからだ。

 一方、エッジ支出全体に占める割合は小さいが、オンプレミスソフトウェアは、アナリティクスとAIソフトウェアに対する需要の加速を背景に、エッジインフラの重要な構成要素であり続けるだろうと、IDCは述べている。


プロビジョニングサービス/サービス/ハードウェア/ソフトウェアの各支出の2023〜2028年における年平均成長率(提供:IDC)

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