IoTならエジプトの諸問題を解決できる、そして学ぶなら日本がいい:Go AbekawaのGo Global!〜ワエルさんFromエジプト(前)(2/2 ページ)
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はJICOOのWael Saad Mohamed(ワエル・サード・ムハンマド)さんにお話を伺う。エジプトから見れば、遠く地の果てに思える日本。ワエルさんはなぜそんな異国の地を目指したのか。
3Dデザイナーを目指すが仕事に恵まれなかった
阿部川 Ahmed Orabi Secondary School(アフメド オラビ セカンドダリ スクール)に進学します。これは工業高校や専門学校などではなく、普通の高校ですね。エジプトでは高校は何年通うのですか?
ワエルさん 高校は3年です。専門学校にも行きましたがそちらは2年です。ちなみに昔は中学校が5年間で今は6年になっていると聞きます。
阿部川 専門学校はIndustrial Technical Institute(インダストリアル テクニカル インスティテュート)ですね。
ワエルさん はい。エンジニアリングやプログラミング言語、PCなどに興味があったので。学校では「BASIC」「Visual Basic」「Microsoft Office」を習ったのですが物足りなく感じたので、もっとレベルアップしたいと思っていました。
阿部川 それでHigher Institute of specific studies(ハイヤー インスティテュート オブ スペシフィック スタディーズ)大学に進学したのですね。
ワエルさん そうです。大学ではいろいろなプログラミング言語の他、3Dデザインに関することも学びました。ああ、そういえばWebサイトも作りましたね。HTMLだけで作った簡単なものですけれど。
阿部川 なるほど。そういったことを4年間学んでコンピュータサイエンスの学位を取られたのですね。当時はどういった仕事に就きたいと考えていたのですか。
ワエルさん 3Dデザイナーを志望していました。その頃上映されていた映画『スパイダーマン』で「Maya」という3Dのソフトウェアが使われているのを知り、使い方などを勉強していました。でもいざ3Dデザイナーの仕事を探してみたら、「5年の実務経験が必要」と言われてしまって。エジプトは就職難で大変でした(遠い目)。
そのため卒業してすぐはアルバイトをしたり、いろいろな講座を受けて勉強したりしていました。アルバイトは基本的にIT関連で、例えば国際交流基金開発センターでボランティアをしたり、会社の会計処理を手伝ったりしました。
阿部川 仕事がないのは大変ですよね……。
ワエルさん 正確に言えば仕事自体はあるのですが、給料がよくなかったのです。その間も勉強は続けていて、英語や日本語の他、金融に関するITについても学びました。日本語の講座は最終的に6年くらい通っていました。皆勤賞ももらったのですよ。
阿部川 すごいですね。それでも(日本語が話せても)仕事がなかったんですね、それは大変でした。
そして日本へ
阿部川 その後、岩手県立大学の大学院に入学します。これは、どういういきさつがあったのですか。
ワエルさん 一番の理由は「IoT(Internet of Things)を学ぶため」です。いろいろ勉強している中で、IoTであればエジプトのさまざまな問題を解決できるのではないかと思ったのです。そして学ぶのであれば日本がいいと考え、IoTを研究している大学教授を調べました。そこで見つけたのが岩手県立大学の教授だったのです。
阿部川 なぜ日本で学ぼうと思ったのですか。
ワエルさん 日本には技術力があるからです。確かに日本は遠く、「エジプトと日本は別の惑星」と言う人もいました。でも、イスラム教の有名な言葉で「中国にあっても知識を求めよ」というものがあります。知識を得るためには、遠くまで行く必要があるという考えです。だから日本に行こうと思いました。岩手県立大学の教授にメッセージを送ったときに優しく対応してくれたことも理由の一つです。
阿部川 日本に来たのは2019年の後半ですね。そこから2年大学院で学びます。修士を取得したんですね。
ワエルさん はい。本心では修士もドクターも両方欲しかったのですが、生活しなくちゃいけなかったので……。友達も「博士号取得まで勉強しなくても、このタイミングで仕事を見つけた方がいい」と言っていました。
もっとスキルを。もっと高みに行きたい。そんな気持ちを原動力に勉強を続けたエジプトの少年がたどり着いたのは、「別の惑星」とも思える日本、しかも首都圏ではなく東北のある大学院だった。後編は日本での生活と、エジプトとの違いなどについて聞く。
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