おばあちゃんのお弁当を食べながら、チェスクラブに通い詰めた日々:Go AbekawaのGo Global! マシューさん from フランス(前編)(1/2 ページ)
チェスが好き! チェスが好き! チェスが好き!――7歳でチェスと出会った少年は、たった一人で電車に乗って、大きな町のチェスクラブに通い詰めた。
グローバルに活躍するエンジニアを紹介する本連載。今回はインターネット・アカデミーのシステム開発室でリーダーを務めるMathieu Fevre(マシュー・フェブル)さんにお話を伺う。人口200人の小さな村で育ったマシューさんは、ひょんなきっかけから、チェスにのめり込んでいく――。
聞き手は、AppleやDisneyなどの外資系企業でマーケティングを担当し、グローバルでのビジネス展開に深い知見を持つ阿部川“Go”久広。
おだやかで安全なチーズの里「ル・フィエ」
阿部川“Go”久広(以降、阿部川) お名前の発音は、マシュー・フェブルさんでよろしいですか?
Mathieu Fevre(マシュー・フェブル、以下マシューさん) はい、その通りです。マシューとお呼びください。
阿部川 では早速。マシューさん、生まれ育ったフランスのル・フィエについて教えてください。
マシューさん フランス人でも、ル・フィエを知っている人はほとんどいません。人口が200人程度の本当に小さな村です。私一人で人口の0.5%を占めるのですから、どんなに小さな村かと。
森や山などの自然に囲まれた、とても穏やかで住みやすい場所です。隣の村まで6〜10キロあるのにバスや電車がないので、車がないと生活できません。都会の人間にとっては住みにくいかもしれません。主な産業は農業で、有名なコンテチーズを作っています。しっかりと保護された地域でしか作れない、特別なチーズです。
犯罪率が非常に低いのも特徴です。住人も観光客も少なく、みんながお互いのことを知っています。例えば、私がチーズ工場にチーズを買いに行ったことを数日後にはみんなが知っているぐらいです。全てが記録されているようなものなので、犯罪率が非常に低いのだと思います。
約20年前に聞いた話では、目立たずに隠れられるから犯罪者は大都市に住むのが好きなのだそうです。しかし、ル・フィエでは見つからずに逃げ出すのは不可能です。
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阿部川 昭和の日本のようですね。私が子どもの頃もそうでした。学校を休むと、隣の家の住人が「昨日、学校を休んでいたわね」と言ってきたりしました。みんなが自分のことを知っていました。
マシューさん 何か間違ったことをすれば、みんなが注意してくれます。200人の大家族のようですね。ただそのような場所の問題点は、仕事が見つからないことです。農業以外の仕事はほとんどありません。多くの友人が、16歳や18歳で学校をやめて、父親の農場で働き始めました。
農業は非常に大変な仕事で、労働時間が長く、給料も良くありません。私の父は常に「マシューには能力があるから、農業よりも良い仕事に就くべきだ」と言っていました。私自身も、もっと勉強を続け論理的な思考ができるようになりたいと思っていたので、村の外に出て仕事を探す必要がありました。
しかし最近はテレワークが可能になったので、ル・フィエに住みながら農業以外の仕事で働けるようになってきています。近くの町には、Appleで働いている人もいます。ただ、まだ珍しいですね。将来的にはさらに増えていくかもしれません。
阿部川 コロナ禍を経て、そのような可能性が生まれたのですね。
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