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「僕が日本に来た理由? 世界一周がオジャンになったからさ」 フレンチシャイボーイはぐいぐいくるGo AbekawaのGo Global!〜Nicolas Modrzyk編(前)(1/2 ページ)

フランス出身のNicolas Modrzyk(ニコラ・モドリック)氏。おとなしく、シャイな子どもだった同氏はずっと「外国に出てみたい」と考えていた。学生時代から社会人にかけてフランス、アイルランド、米国と渡り歩いた同氏が見た日本とは。

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 世界で活躍するエンジニアの先輩たちにお話を伺う「Go Global!」シリーズ。今回はフランス出身のエンジニア、Nicolas Modrzyk(ニコラ・モドリック)氏にご登場いただく。同氏をよく知る人は「プログラミングの腕はものすごく、言語と道具を選ばない突き抜けぶりは、日本人のプログラマーにはない」と評する。そんなモドリック氏を形作ったものとは何だったのか。

12歳で文化も話題も違うフランスの片田舎へ

阿部川 お生まれはフランスでいらっしゃいますか。

モドリック氏 はい。1979年にフランス北部のナンシーという街で生まれました。自分の記憶ではおとなしい、シャイな子どもだったと思います。親はうるさい子だったというのですが。あまり目立ちたくなかったという気持ちはありましたね。ただ親は私の面倒をあまり見られなかったので、さみしくて……でもそれが友達作りのエネルギーになりました。

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子どものころのモドリック氏

阿部川 シャイだからといって友達が作れないというわけではありませんからね。うまく人間関係を作る能力はこのときに培われたのでしょうか。

モドリック氏 そうかもしれません。12歳のとき、フランスのアヌシーに引っ越ししたのですが、そこは同じフランスであるにもかかわらず人が全然違うんです。同じフランス語ですが、方言があり、使っている単語や表現がけっこう違っていました。当然、文化も話題も違いました。

 ナンシーはアートと学生がメインの街ですが、アヌシーはどちらかというと山がいっぱいあって自然が多い。だから皆が運動します。週末は土曜日の早朝6時くらいから活動する感じです(笑)

阿部川 それは健康的ですね(笑)。では、運動を通じて友人を作ったのでしょうか。

モドリック氏 はい。テニスコートがいつでも無料で使えるので、あちこちから人が集まってきてプレイしています。仕事の後に「この後、一緒にテニスに行かないか」と誘うことが普通で、本当に多くの人がテニスをします。そこで、たくさんの友人に恵まれました。

阿部川 今でもそのころのご友人とはお付き合いがありますか。

モドリック氏 はい、この年末(2019年末)もフランスに帰省して、そのときの友人と過ごしました。3000キロくらいの道のりを車に乗って会いに行きました。昔話も楽しいですが、これから人生みたいなものを、お互いに話すのも楽しいですね。それぞれが全然違う家族、全然違う仕事なので面白いです。

 フランスでは、中学でも高校でも大学でも、先生になると休暇が異様に長くもらえるので、実は友人の8割近くが先生になっています。3カ月から6カ月近く、休暇があるんですよ。他には風力発電所や原子力発電所での仕事をしていたり、医師だったり、「山の道を作る」ことを仕事にして一日中、山ごもりをする友人もいます(笑)。

阿部川 それはいろいろなお話ができて楽しそうです。中学高校当時、何か得意な教科はありましたか。

モドリック氏 父は数学が得意だったので、僕も自然に得意になりました。英語は初めはあまり得意じゃなかったですね。でも、すごく良い先生に巡り会えて変わりました。その先生は授業で教科書を全く使わなかったんです。その授業がすごく面白くて、そこからですね、英語に力を入れようと思ったのは。

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現在のモドリック氏

阿部川 お父様はもしかしてエンジニアですか。

モドリック氏 歯科医です。一日中、人の口の中を視て、歯を吟味する仕事です(笑)。

阿部川 すてきなお仕事じゃないですか(笑)。

モドリック氏 はい。1日中、一所懸命患者さんとコミュニケーションを取る姿勢が素晴らしいと思っていました。父には「どこか海外でボランティアとして歯医者をやりたい」という夢があったのですが、大きな息子がいたので実現できなかったみたいです。私のことですね(笑)。そのような夢を持っているのはすてきだと思いました。

 思い返してみると、数学が得意になったきっかけは夜、父と一緒に勉強したことでした。ちょっとした問題を父が出してくれて「これをより早く解くにはどうしたらいい?」と問いかけてくれました。夕食の後に、その問題を、どちらが早く解くか競争したりしました。数学の問題としてではなく、ゲームでしたから楽しかったですね。

そのまま起業できたかも? 大学で体験した「会社作り」

阿部川 なるほど、それは、間違いなく数学好きになりますね。その後、大学に進学されます。

モドリック氏 はい。フランスのエンジニア系大学のシステムは少し他の国々のものとは違っています。最初の2年間は、数学、物理学、化学、英語の4科目だけを1週間で40時間、ノンストップで学習します。朝早くから夜遅くまで勉強した後で宿題も盛りだくさんです。大学のための大学、といった感じです。その大学はESIAL、現在はテレコムナンシーといいます。

大学3年生のときにダブリン・シティー・ユニバーシティーに入学し、コンピュータサイエンスやeコマース(電子商取引)などを学びました。印象深かったのは、大学にはビジネス側の人とIT側の人が半々くらいの割合でいたことです。お互いやっていることを理解できないだろうという前提があって、「じゃあ理解し合いましょう」といった授業がありました。

阿部川 技術とビジネスの2つを結び付ける、いい授業ですね。

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阿部川“Go”久広

モドリック氏 その授業では200ページのレポートをチームで書き、仕上げました。製品として作れるようなアイデアや組織を考えて、まるで小さな会社を運営しているようでした。

阿部川 そのまま起業してしまえばよかったのに(笑)。

モドリック氏 いや、やめて正解でした(笑)。課題としては十分だったと思いますが、売り上げは上がらなかったと思います。

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