新入社員の78.3%が生成AI活用経験者に 企業はどう向き合うべきか:生成AIに“オールイン”するDeNAは、活用動向を可視化する「DARS」を導入
産業能率大学総合研究所が新入社員を対象にした調査によると、78.3%が生成AIを活用した経験があるという。企業が生成AI活用を推進するか否かにかかわらず、デジタルネイティブな若手従業員ほど自律的に生成AIを使い始めつつある。だが、生成AIの活用を禁止すれば、業務効率化やイノベーションを阻害するリスクにもなりかねない。どう向き合うべきなのか。
生成AI(人工知能)の活用が、もはやIT業界や一部の先進企業だけの話ではなく、社会全体に広がるトレンドとなって久しい。
産業能率大学総合研究所が実施した調査「2025年度新入社員の会社生活調査(生成AI活用意識編)」によると、2025年度の新入社員の78.3%が、生成AIを活用した経験があると回答。2024年度調査と比べても増加傾向にあり、新入社員が検索や情報収集、文章作成、就職活動で生成AIを利用している状況が明らかとなっている。
つまり、個々の企業が生成AI活用を推進するか否かにかかわらず、デジタルネイティブな若手従業員ほど自律的に生成AIを使い始めつつある社会に突入している。個人の生成AI活用は、企業にとってセキュリティリスクやガバナンスの問題をはらむ「野良AI」「シャドーAI」にもつながりかねない。だが、生成AIの活用を一律に禁止すれば、業務効率化、あるいはイノベーションを阻害するリスクにもなりかねない。
生成AIの活用が社会で広がる今、個人の活用スキルを組織の力にどう変えられるかが問われている。では、企業は生成AIにどう向き合うべきなのか。
個人の「点」の活用を、組織の「面」の力に変えるには
「AIオールイン」を掲げ、全社での生成AI活用に注力するディー・エヌ・エー(以下、DeNA)は2025年8月6日、AIネイティブな組織への変革を目的とした新指標「DeNA AI Readiness Score」(DARS)の導入を8月末より開始すると発表した。
DARSは、従業員個人のAI活用スキルと、部署、チーム単位のAI活用レベルをそれぞれ5段階で評価する指標だ。DeNAは、DARSを通じて個人のスキル可視化に加え、組織全体のAI活用状況を定量的に把握することで、従業員全体のAI活用レベルを底上げし、より強固なAIネイティブな組織の構築を目指すという。
個人レベルでは、開発者(開発を主業務とするエンジニア)と非開発者(ビジネス/クリエイティブ職/マネジャーなど)に分類し、AI活用の習熟度に応じてレベル1から5までの段階を設定。レベル1は「基礎的な知識や利用習慣がある」、最上位のレベル5は「AIを軸とした全体設計やビジネス変革ができる」と定義している。組織レベルでは、「組織の中でAIを試し始めている段階」をレベル1とし、「AIだからこそ可能な戦略が実行されている段階」をレベル5と定義。半期の評価サイクルごとにAI活用の状況を可視化するという。
ビジネスとITが直結する今、生成AIのような先端技術の導入は、もはやツールを導入、管理するだけの話にとどまらない。生成AIにオールインするDeNAの取り組みが示すのは、経営層が「生成AI活用」の号令をかけたり、一律に禁止したりすることではなく、従業員一人一人のスキルと組織の成熟度を可視化し、適切なサポートとガバナンスを両立させることの重要性だ。
従業員が身に付けたAIスキルをリスクとして排除するのではなく、企業のビジネスにどう寄与するのかを経営層が見極め、IT部門と協働して活用ルールを整備し、組織全体の競争力、ビジネスの付加価値につなげていく取り組みが求められている。
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