PwCがテクノロジー、メディア、情報通信業界における生成AI利用の最新調査結果を発表:生成AIの実装に関する検討事項4つのステップ
PwCコンサルティングは、テクノロジー、メディア、情報通信業界における生成AIの現状と将来展望に関する調査結果を発表した。それによると技術インフラの準備は、生成AIを実装する上で企業が直面するビジネス上の最大の課題であることが分かった。
PwCコンサルティングは2025年9月4日、テクノロジー、メディア、情報通信(TMT)業界における生成AI(人工知能)の現状と将来展望に関する調査結果を発表した。同調査は、生成AI利用が急速に増加しているインドの企業を対象にしている。
テクノロジー企業は生成AIの実装に外部コンサルタントを利用
今回の調査では、テクノロジー企業やエンターテインメント&メディア企業は、生成AIの実装に外部コンサルタントを利用する傾向があるのに対し、情報通信企業は生成AI社内での戦略開発を選択していることが分かった。
具体的には、生成AIのユースケースを「外部コンサルタントと共同で調達」と回答した企業の割合は全体の50%。内訳はテクノロジー企業48%、エンターテインメント&メディア企業58%、情報通信企業30%だ。
PwCは「外部コンサルタントとの協業により、企業はブレーンストーミングから開発、ビジネス価値の割り当て、大規模プロジェクトへの移行まで、生成AIの取り組みを迅速に開始できる。それに対して、社内で生成AIモデルを構築した場合は、自社のニーズに最適化された機能と特徴が保証される」と分析している。
情報通信業界の40%がオンプレミスのプラットフォームを選択
企業が生成AIソリューションを展開しているプラットフォームを見ると、TMT業界に属する企業の39%が、プライベートクラウドを採用していた。その大半は、独自のデータを用いてAIモデルを一から学習させた「カスタムAIモデル」を選択していた。
テクノロジー業界では、回答企業の半数近くがプライベートクラウドを選択しており、そのうち50%以上がカスタムAIモデルを利用している。エンターテインメント&メディア業界では約3分の1がプライベートクラウドを好み、うち46%がカスタムAIモデルを選択している。情報通信業界の40%がオンプレミスのプラットフォームを選択し、その大半が学習済みのオープンソースAIモデルを利用していた。
今回の調査を通して、PwCは、生成AIの実装に関する主な検討事項として次の4ステップを挙げている。
1.ROI(投資利益率)を評価しつつ、機会とインパクト領域を特定する
生成AIソリューションを導入する企業の最初のタスクは、生成AIがセールスやマーケティング、カスタマーサービス、製品開発、オペレーションの最適化、データ分析、意思決定プロセスを向上させる機会と提供可能な領域の特定だ。生成AIには、革新的な新製品や新サービスの開発、実用的な知見のためのレポートの要約、ステークホルダーに対する報告の支援など、多種多様な適用範囲がある。
PwCは、予算とリソースの配分に際し、情報に基づいた意思決定をするには、生成AIの実装に関するROIを理解することが重要だとしている。
2.適切な導入アプローチを選択する
インパクト領域と機会を特定できたら、次のステップは、企業内での生成AIの適切な実装戦略の決定だ。社内開発や外部コンサルタントの雇用、ハイパースケーラーとの戦略的提携、生成AIの能力を持つ企業との合併や買収など、さまざまな選択肢がある。企業固有の要件と目的に基づいた慎重な検討が必要だ。
3.適切な展開モデルとプラットフォームを選択する
企業は、特定のニーズやスケジュール、予算に基づいて、展開モデルとプラットフォームの種類を選択できる。PwCでは、堅牢(けんろう)なデータセキュリティを確立するには、高レベルのセキュリティを提供するオンプレミスまたはプライベートクラウドが、スケーラビリティを優先する場合は、パブリッククラウドが推奨されるとしている。
4.生成AIを受け入れるための従業員の準備を整える
生成AIの実装が成功するか否かは、従業員がこの技術をどのように受け入れ、生産性の向上につなげるかに大きく左右されるとしている。実際、TMTセクター企業の68%は、生成AIのベネフィットと利用効率に関する認識を共有するために、ワークショップを実施し、さまざまな学習モジュールを提供していた。
PwCは「生成AIがもたらすベネフィットを最大化するには、強固なデータガバナンスの実施とスキルアップへの投資が不可欠だ」としている。
このニュースのポイント
Q: 生成AI実装における業界ごとの特徴は?
A: テクノロジー企業やエンターテインメント&メディア企業は外部コンサルタントを利用する傾向が強く、情報通信企業は社内で生成AI戦略を開発する傾向がある。
Q: プラットフォーム選択にはどのような傾向があるか?
A: TMT全体では39%がプライベートクラウドを選択し、カスタムAIモデルを多く利用。情報通信業界では40%がオンプレミスを選択し、その大半が学習済みオープンソースAIモデルを利用している。
Q: PwCが提示した生成AI実装の4ステップは?
A:「ROIを評価しつつ機会とインパクト領域を特定する」「社内開発や外部協業など適切な導入アプローチを選択する」「ニーズや予算に基づいて展開モデル(オンプレミス、プライベートクラウド、パブリッククラウド)を選ぶ」「従業員にワークショップや学習モジュールを提供し、生成AI受け入れの準備を整える」。
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