6GやAIインフラへの投資で世界の通信産業が2030年に860兆円市場へ Omdia予測:Amazon、Google、Apple、MSなどハイパースケーラーが主導
2028年以降、投資の勢いは固定通信からモバイルネットワークにシフトする。
市場調査企業のOmdiaは、2025年10月29日(英国時間)、通信産業の成長を予測したレポートを発表した。世界の通信プロバイダー(CP)の売上高は2030年までに5.6兆ドル(約860兆円、1ドル=153円の為替レートで換算。以下同)に達する。2025年からの年平均成長率(CAGR)は6.2%を見込む。この成長は、6G(第6世代移動通信システム)やAI(人工知能)への戦略的投資、技術革新、インフラ拡張によってもたらされるという。
Omdiaの予測は、67カ国の過去データ、地域市場の動向、規制トレンド、技術移行パターンを組み込んだ包括的なモデルに基づくものだ。
Omdiaのリサーチディレクターを務めるダリオ・タルメシオ氏は、次のように述べる。「通信プロバイダーは戦略的投資の新たな局面に入っている。6Gが視野に入り、AIインフラの需要が加速する中で、接続性ビジネスは量ベースの価格設定から価値提供型の接続にシフトしている」
通信プロバイダーの中でもハイパースケーラーが市場をけん引
同レポートによると、従来の通信サービスの売上高は2.7%のCAGRで緩やかに成長する。一方、テクノロジーセグメントは急速な伸びを見せる見込みだ。Amazon.com、Alphabet(Google)、Apple、Meta Platforms(旧Facebook)、Microsoftなどのいわゆる「ハイパースケーラー」が主導し、9.4%のCAGRで拡大する。2030年には通信プロバイダー全体の売上高の55.9%を占める見通しだ。
6G展開の準備が進む、設備投資の動向
Omdiaは、通信プロバイダーの設備投資(CAPEX)が2030年までに3950億ドル(約60兆6000億円)に達し、CAGRは3.6%になると予測している。一方、テクノロジー企業の設備投資は5450億ドル(約83兆6000億円)に急増し、CAGRは9.3%に達する見込みだ。
2028年以降、投資の勢いは固定通信からモバイルネットワークにシフトすると予想される。固定通信の設備投資は、市場飽和によって徐々に減少する一方で、米国や西欧などのTier 1(大手プロバイダー)市場は6G展開に向けた準備を推進する。
AIインフラ、クラウドサービス、各国のデータ主権政策(自国内でのデータ保管義務など)通信プロバイダーの投資を後押ししており、データセンターの拡張や特殊なハードウェアの導入が加速する見通しだ。
主要な市場トレンド
同レポートでは、以下の主要トレンドを挙げている。
1人当たりの通信プロバイダーの設備投資は、2024年の74ドル(1万1364円)から2030年には116ドル(1万7815円)と57%増加する。通信プロバイダーの設備投資は世界のGDP投資の2.5%に達する見込みだ。
通信における資本集約度(売上高に対する設備投資の比率)は2027年まで低下し、その後モバイルネットワークのアップグレードによって上昇する。
売上高と設備投資の地域別リーダーには、北米、オセアニア・東アジア、西欧が含まれる。中央/南アジアは最も高い成長の可能性を示している。
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