進化するRubyのビジネス活用最前線 業務特化型SaaSから国民的フィットネスサービスまで:Ruby biz Grand prix 2025、大賞は「STORES」と「chocoZAP(チョコザップ)」(3/3 ページ)
2025年11月6日、島根県松江市のくにびきメッセにて、プログラミング言語Rubyを活用した革新的なビジネスを表彰する「Ruby biz Grand prix 2025」の表彰式が開催された。第11回目となる本アワードでは、全国から応募された17のサービスの中から、大賞2点、特別賞3点、そして、その他の賞としてAIxRuby賞2点の計7サービスが選出された。
技術的な新規性や社会的なインパクトにおいて素晴らしい実績を持っている
審査委員長を務めたまつもとゆきひろ氏は、受賞者への祝辞とともに、Ruby biz Grand prixの意義について言及した。
まつもと氏は、ファイナリストに残った7つのサービス全てが、技術的な新規性や社会的なインパクトにおいて素晴らしい実績を持っていることに感動したと述べた。
「裏側をオープンにしていただかないと、そのサービスがRubyでできているのか、Pythonでできているのか、Javaでできているのか、全く分からない」状況の中、Rubyでできていることを公に示し、インパクトのあるサービスがRubyで作られているという事実を可視化することで、「受賞者の方々が表彰され、アワードもプレゼンスを発揮できるというWin-Winの関係を築くのがRuby biz Grand prixだ」と、本アワードがRubyコミュニティとビジネス界の相互発展に果たす役割を強調した。
特に大賞の選定においては、STORESが日本のオンラインストアの草分け的存在として圧倒的な支持を集めたこと、chocoZAPは、非IT企業がフルスケールのDXを実装し、技術スタックにとどまらない全方位的な事業展開を実現している点が評価されたと説明した。
また、AIxRuby賞について、まつもと氏はその意義を詳しく解説した。
「AI領域の開発においてはPythonが先行しているという認識があるものの、Rubyもその組み合わせで新しい価値を生み出せると信じています。AIxRuby賞は、AIを応用しつつRubyのサービスを提供している事例や、その組み合わせによる革新性、新次元へのチャレンジを評価したものです。
受賞したアイブリーやトッツゴーの事例のように、AIを使いつつRubyのサービスを展開していることが重要であり、この融合が新しい可能性を示している点を高く評価しました。AIxRuby賞は、AI技術が進化する時代においても、Rubyがビジネスの現場で重要な役割を担い続けることを証明するものであると考えます」(まつもと氏)
Rubyコミュニティは、30周年
Ruby biz Grand prix 2025の表彰式は、国際的な技術カンファレンス「RubyWorld Conference 2025」と、同日、同会場にて開催された。この配置により、RubyWorld Conferenceに集うRuby開発者や技術関係者に向けて、ファイナリストたちのサービスプレゼンテーションが披露された。
RubyWorld Conferenceでは、Ruby開発者であるまつもと氏による「Rubyコミュニティの30年」と題した講演が行われた他、「PicoRubyが拓く電子工作の世界」や、Ruby活用事例の共有といった多様な技術セッションが展開された。


「RubyWorld Conference 2025」講演抜粋、左より「東京ガスグループの地震防災システムにおけるRuby活用事例の紹介」「歯科医療DXを支えるRuby - クラウド歯科業務支援システム『Dentis』の開発事例」「Building the Real World with Ruby」まつもと氏は、Rubyは「全ての人間のエンジニアのためのプログラミング言語」であるべきという理想を掲げており、この国際会議の場で、ビジネス側と開発コミュニティーが一体となって、Rubyの可能性を追求する機会が創出されたことは、Rubyコミュニティが30周年を迎えるに当たり、特に意義深い出来事であった。
Ruby biz Grand prix 2025は、Rubyが単なるプログラミング言語ではなく、社会に変革をもたらすビジネスの基盤となっていることを明確に示した。大賞を受賞した「STORES」と「chocoZAP」は、それぞれオンラインストアとヘルスケア分野におけるデジタル化の推進者であり、Rubyの持つ生産性とRubyコミュニティの力を最大限に活用している。
特別賞の3サービスは、端末管理、家計管理、飲食業仕入れに付随するさまざまな「不便」をRubyを使って解決する取り組みが評価された。また、AIxRuby賞は、RubyエコシステムにおけるAIの活用という新たな潮流を可視化し、Rubyの未来の可能性を示唆した。
まつもと氏が「素晴らしいサービスにたくさん応募していただき、本当に感謝しております」と結んだように、本アワードは、Rubyを用いる企業が今後も革新的なサービスを生み出し、Rubyの発展に貢献していくための強力な推進力となることが期待されている。
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