AIを“人減らしの道具”にされないために 導入側も知るべき「自律型ビジネス」の本当の意味:約8割が人員削減、それでも成果は変わらない?
AIを活用した「自律型ビジネス」に取り組む企業の約8割が人員を削減したものの、ROIとの明確な相関は見られなかった。Gartnerによると、そもそも自律型ビジネスの目的は人員削減ではない。その本来の目的とは。
IT調査会社Gartnerは2026年5月5日(米国時間)、「自律型ビジネス」(Autonomous Business)と、AI導入に伴う人員削減に関する調査結果を発表した。自律型ビジネスとは、AIエージェントなどのAIを活用して業務運営の自律化を目指す考え方だ(詳細は後述)。
調査によると、自律型ビジネスを試験導入または本格導入している組織のうち、約80%が人員を削減していることが明らかになった。ただし自律型ビジネスの導入に伴う人員削減と投資収益率(ROI)の高さには、明確な相関は見られなかった。つまりAIを中心とした自律型技術から高いROIを得た企業と、十分な成果を得られなかった企業とで、人員削減率はほぼ同じだったのだ。
自律型ビジネスは「AIで人を不要にする仕組み」ではない
「CEOはAIによる迅速なリターンを示すために人員削減に目を向けがちだが、この姿勢は的外れだ」。Gartnerのヘレン・ポワトバン氏(ディスティングイッシュトバイスプレジデント アナリスト)はこう述べる。そもそも自律型ビジネスについても、AIによって人を置き換えることを目指すものではないという。
ポワトバン氏は「人員削減は予算の余地を生み出す可能性があるが、リターンは生み出さない」と指摘する。同氏によると高いROIを実現しているのは、人を減らすことに注力している企業ではない。人材育成や役割の見直しなど、人とAIが協働するために投資している企業だ。
人とAIがそれぞれの強みを生かし、協働する――。こうした組織への変革を目指す考え方が、本来の自律型ビジネスだとGartnerは説明する。ポワトバン氏によると、自律型ビジネスは「人がいないビジネス」を意味するのではなく「AIによって人の能力が強化されたビジネス」を意味する。
自律型ビジネスの実現に役立つ技術は幾つかある。Gartnerはその例として、AIエージェントやインテリジェントオートメーション(AIを活用して業務の判断や処理を自動化する技術)、RPA(ロボティックプロセスオートメーション)、デジタルツイン(現実の設備や業務をデジタル空間に再現する技術)などを挙げる。
むしろ雇用を促進する自律型ビジネス
AIエージェントの普及に伴い、自律型ビジネスの取り組みは今後さらに広がるとGartnerはみる。AIエージェント関連ソフトウェアへの支出は、2025年の864億ドルから2026年には2065億ドル、2027年には3763億ドルに拡大すると同社は予測する。
「長期的には、自律型ビジネスは人にとって、より多くの仕事を生み出す」とポワトバン氏は語る。Gartnerは、自律型ビジネスの普及によって新たな業務や役割が生まれることから、2028〜2029年に雇用機会は純増するとの見通しを示す。
ポワトバン氏は、自律型技術が普及しても人の役割が失われるわけではないと指摘する。高度な意思決定や顧客との信頼関係構築など、人にしか担えない業務が残るためだ。自律型ビジネスの運営やガバナンスにおいても、引き続き人が中心的な役割を担うと同氏は指摘する。
この調査はGartnerが2025年7〜9月に実施したものだ。年間売上高が10億ドル以上、または同規模の組織に所属する世界のビジネスエグゼクティブ350人を対象とした。回答組織はいずれも、AIエージェントやインテリジェントオートメーションといった自律型技術の少なくとも1つを試験導入または本格導入していた。
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