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テレワーク廃止で人が辞める――複数調査で露呈する「出社回帰」の落とし穴なぜ企業は“出社させたがる”のか?

企業が進める「出社回帰」――なぜ企業は従業員に出社させたがるのか。出社後に顕在化する課題や離職リスク、さらに「テレワークは孤立を招く」という説の真偽について、ITエンジニアや大手組織を対象とした複数の最新調査から実態を解き明かします。

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 近年、国内企業の間で「出社回帰」の動きが着実に進んでいる。しかし、安易なテレワークの制限や廃止は、従業員の離職や生産性低下といったリスクをはらんでいる。企業側と従業員側の間にある「働き方」に対する意識のズレは、どこから生じているのだろうか。

 本稿では、テレワークと出社に関する3つの最新調査レポートを基に、企業がオフィス出社を求める真の理由、働く側がテレワークに見いだす価値、そして働き方が従業員のウェルビーイングや離職率に与える影響を整理する。

企業が求めているのは「出社そのもの」ではない

 国内企業では出社頻度を増やす動きが顕著だ。Job総研の調査(2026年3月実施)によると、回答者の75.5%が「前年より出社頻度が増える」と回答し、その主な理由は「会社の方針が変わったため」だった。

 しかし、出社回帰は働き手に少なからずネガティブな影響を与える。日本生産性本部の調査では、テレワーク制度が制限・廃止された場合、非管理職の16.4%が「退職・転職を検討する」と回答している(管理職は9.6%)。

 では、退職リスクを抱えてまで、企業はなぜ出社させたがるのか。レバレジーズの調査によれば、出社を増やす理由のトップは「マネジメントをしやすくするため」(52.6%)、次いで「生産性を向上させるため」(47.4%)だった。

 ここから読み取れるのは、企業はオフィスに人を集めること自体を目的としているわけではなく、出社によって得られていた「メンバーの状況が見える」「すぐに声を掛けられる」といった状態を求めているという実態だ。マネジメント実務の有無が、テレワークへの意識差を生んでいる要因といえるだろう。

「出社」に戻った人ほど集中力が続かないという皮肉な実態

 マネジメント側の意向で出社回帰が進む一方、現場の従業員はテレワークによって得られた「自律性」を高く評価している。

 テレリモ総研の調査(2026年9月発表)によると、テレワークを通じて自分で決められることが「増えた」と感じる場面として、「集中と休憩のリズムを自分で作れる」(43.4%)や「集中したい作業に没頭できる」(35.5%)が上位に挙がった。労働時間配分や作業ペースを自身でコントロールできることにメリットを感じている層が多い。

 興味深いのは、出社形態別の課題だ。テレワークにおいて自己管理が難しいと感じる場面を尋ねたところ、「集中力が続かない」と答えた割合は、フルリモート勤務層(16.0%)よりも、出社主体のフル出社層(27.7%)の方が11ポイント以上も高かった。出社での働き方に戻った人ほど、長時間の集中維持に難しさを感じている傾向がうかがえる。

 また年代別に見ると、20代・30代の若手層は、テレワークでの集中力維持や優先順位付け、報連相のタイミングに難しさを感じている割合が高いものの、同時に「自己決定範囲の広がり」を肯定的に受け止めている。若手にとっても、裁量を持って働ける環境は重要であることが分かる。

「出社しないとつながりが薄れる」は経営陣の誤解か

 出社回帰を進める経営陣やマネジメント層の根底には、「在宅勤務を続けると従業員が孤立し、チームワークが損なわれ、離職につながりやすいのではないか」という懸念がある。しかし、別の大規模な追跡調査はこの見方を真っ向から否定している。

 米コロラド大学などの研究チームが、米国の大規模ヘルスケア組織の従業員7704人を対象に実施した調査(2026年8月発表)では、完全テレワークで勤務する従業員が最も高いウェルビーイング(身体的、精神的、社会的な健康状態や幸福度)を示し、完全出社勤務が最も低い結果となった。

 懸念されがちな「同僚とのつながり」についても、完全テレワーク勤務者は孤立するどころか、「チームワーク」や「サポート」といった組織文化を示す言葉を肯定的に用いる割合が他の勤務形態より高かった。業務上の支援や協調関係が機能していれば、物理的な距離があっても組織との心理的距離は離れないことが示唆されている。

 さらに、1年後の離職記録との照合により、「ウェルビーイングのスコアが高い従業員ほど、離職する可能性が低い」ことも判明した。通勤や交通渋滞といった細かなストレス要因が排除され、日々のスケジュールにおいて高い裁量権(自律性と柔軟性)を持つことが、結果的に離職防止につながるとしている。

過去のやり方への回帰ではなく、データに基づく制度設計を

 複数の調査が示すのは、一律の出社回帰命令は従業員のウェルビーイングを損ない、結果として「退職・離職」という経営課題を引き起こすリスクがあるということだ。

 企業が求める「マネジメントのしやすさ」や「つながり」は、完全出社勤務だけに頼る必要はない。むしろ従業員に働き方の選択肢を与え、自律性と柔軟性を認めることの方が、組織に優れた成果をもたらす可能性が高い。

 テレワークという潮流は一時的なものではなく、今後も定着し続ける。「慣れ親しんだ従来のやり方」へ単に戻ろうとするのではなく、データに基づいた合理的な判断の下、自社に最適な柔軟な働き方を再構築することが求められている。

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