「1人1AI」のアプローチは破綻する――チームでAI共有時のセキュリティ問題を解決するベストプラクティス:Anthropicが「Slack」による社内コラボレーションに広く活用(2/2 ページ)
Anthropicは、「Claude Tag」における「エージェントアイデンティティー」アクセスモデルの仕組みと、チームのワークスペースでこれを構成する際のベストプラクティスを解説したブログ記事を公開した。
境界の仕組み
エージェントIDは、「このユーザーは何ができるか」という問いを、「このエージェントはこの区画で何ができるか」という問いに置き換える。これは、ユーザー単位のACL(アクセス制御リスト)からの転換だ。
Claude Tagは、プライベートチャンネルごとに個別のIDを作成する。一方、ワークスペース内のパブリックチャンネルは、ワークスペースレベルのIDを共有する。
例えば、エンジニアリングチャンネルにおけるClaudeのIDは、そこで許可されていない法務文書を読み取ることができない。Claudeがプライベートチャンネルで学習した内容は、より広いワークスペースには決して現れない。
ツールとコンテキストへの広範なアクセス
Anthropicが社内でClaude Tagを運用する中で、Claudeは、ツールやコンテキストに広範にアクセスできるほど、より大きな価値をもたらすことが分かった。コンテキストを広く統合し、例えばSlackのスレッド、Googleドライブのドキュメント、トラッカーのチケット、データウェアハウスへのクエリを抽出し、1つの回答にまとめることができるからだ。
Anthropicは、幾つかのチャンネルで基本的なプロファイルから始め、監査ログを確認して、業務上の必要性に応じて、付与するアクセス権を徐々に拡大することを勧めている。
また、きめ細かなアクセス制御を行いたい場合、管理者は特定のチャンネルでClaude Tagを無効化したり、RBAC(役割ベースアクセス制御)を適用し、Claude Tagを利用するユーザーを限定したりできる。
ダイレクトメッセージ
Claude Tagでは、DM(ダイレクトメッセージ)は、共有チャンネルとは動作が異なる。各ユーザーのclaude.aiアカウント上で実行され、本人のコネクターや認証情報を使用し、結果に表示される名前もそのアカウントに依存する。そのため、DMは、メールの下書きや、チャンネル内に置いてはならないタスクやツールを、Claudeで扱う場として適している。
セキュリティ
管理者がチャンネルのプロファイルに接続を追加すると、認証情報は独立して保存され、そのチャンネルのIDにひも付けられた後で、リクエスト時にネットワーク境界で注入される。管理者が許可していないホストへのアウトバウンドトラフィックはブロックされ、全てのルーティン、メモリ書き込み、ネットワーク呼び出しが記録される。
今後の予定
Anthropicは今後、Claude Tagにジャストインタイムの認証情報付与機能を追加し、ユーザーがエージェントの権限範囲を恒久的に広げることなく、その場限りの機密性の高いアクションを承認できるようにする計画だ。
複雑な権限構造を持つ組織向けに、チャンネルのプロファイルと、リクエストを行ったユーザー自身の権限の両方が許可している場合にのみ、Claude Tagが動作するようにすることも予定している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
今の認証セキュリティでAIエージェントの普及を支えられるか 米Oktaなどが推進する2つの標準プロトコルとは
自律的に動作するAIエージェントは、大きなセキュリティ課題を引き起こす。認証セキュリティにおける解決策の一つとして、米Oktaが競合他社と進めるオープン標準とは。
「250万超AIエージェント作成」の裏で同時多発する課題を回し切ったIT部門の運用術
ソフトバンクは、生成AIサービスを数万人規模で全社展開しましたが、その裏側では従来のSaaS導入とは異なる課題が同時多発的に発生しました。それを支えたのは、切り分け・情報整理・関係者調整・粘り強い説明といったIT部門の基礎力と現場の経験です。この事例は、生成AI時代の企業ITが「整ったものを入れる」から「未整備なものを運用で成立させる」仕事に変化していることを示しています。
MicrosoftがAIエージェント管理で新製品 「野良AI」使用者の特定、ブロックに対応
Microsoftは、企業内のAIエージェントを一元的に制御する「Microsoft Agent 365」の一般提供を開始した。併せてサードパーティー製プラットフォームとの統合拡張のプレビュー版も公開している。
「ログイン認証はもう無意味」 AIが勝手に認証情報を使う今、1Passwordは何を“1つ”に統合するのか
1Passwordは、人間とAIエージェント、マシンIDのアクセスを統合管理できる「Unified Access」の提供を開始した。ログイン認証を中心とした従来のID管理では対応できないリスクへの対応を目的としている。
ゼロトラスト戦略の“盲点”? ガートナージャパンが生成AI、AIエージェント全盛時代のセキュリティに警鐘
ガートナージャパンは、ゼロトラストの最新トレンドを発表した。クラウドへの移行や「マシンID」の台頭など、企業が直面する課題と対策の重点領域を明らかにした。