「ネットワークがもはや時代遅れ」 IT部門が疲弊するクラウド接続、どう解消?:AI活用の足も引っ張る問題
企業はクラウドやAI利用を支えるためのネットワークの準備ができていると考える傾向にある。だがIXを運営するDE-CIXの調査では、それとは異なる実態が浮かび上がった。企業のIT部門が疲弊しているクラウド接続問題と、それを解消する方法とは。
クラウドやAI(人工知能)の活用が進む中、それらを支えるネットワークが思わぬ足かせになりはしないか――。今後AIの利用も本格化する見通しであることを受けて、企業はネットワークの在り方を見直す必要性に迫られている。
インターネットやクラウドへの接続、AIの通信などを相互接続するインターネットエクスチェンジ(IX)を運営するDE-CIXは2026年7月30日(米国時間)、企業のクラウド接続に関する調査結果を公開した。
大半の企業は、自社のネットワークがクラウドやAIの接続ニーズに対応できていると考える傾向にある。だが調査データは、それとは異なる事実を示した。企業はクラウド接続においてどのような問題に悩まされ、どう解消する必要に迫られているのか。
AI投資拡大も「ネットワークが時代遅れ」 何が問題か?
調査では、今後2年間(2028年まで)で自社のネットワークがクラウドとAIの取り組みをサポートする準備ができていると「確信している」とする回答者は96%に上った。一方で、ネットワーク接続の問題解決に費やす時間は週平均11.5時間と、1営業日分を超えている。週10時間超を費やしている回答者は49%を占めた。
AIの普及を受け、「GPU」(グラフィックス処理装置)やデータセンターなど、高負荷の計算を支えるインフラへの投資が拡大している。一方で、忘れられがちだがAIインフラを支える要素として欠かせないのが、それらを結ぶネットワークだ。
クラウドやAIアプリケーションの利用を安定して支えられるネットワークがなければ、ユーザーは高速かつ安全にそれらのサービスを利用することができない。ところがDE-CIXの調査では、多くの企業がネットワーク接続の維持に、多くの時間を費やしている実態が明らかになった。
クラウド接続の問題解決に週11〜20時間を費やす企業は3分の1を超え、週21〜40時間を費やす企業も1割弱に上った。
全世界で、企業は2030年までにデータセンターインフラに7兆ドル近くを投資する見込みだ。その一方で多くの企業が、ネットワークという重要な要素を見落としたままだとDE-CIXは指摘する。ユーザー、アプリケーション、データ、クラウドをつなぐ通信のトラフィックを安定してさばけるだけのネットワークがなければ、計算リソースへの投資を拡大しても、その性能を十分に引き出せない可能性がある。
遅延、セキュリティ、データ主権――クラウド接続を難しくする要因
企業のIT部門がクラウド接続の問題解決に多くの時間を費やしている背景には、マルチクラウド環境の利用拡大に伴い、ネットワーク構成やデータの流れが複雑さを増していることがある。
クラウド接続を複雑にする要因は、接続先の増加だけではない。DE-CIXは、企業が考慮すべき課題の一つとして「データ主権」を挙げる。
各国・地域の規制や地政学的なリスクなどを背景に、企業にはデータをどこに保存し、どこで処理し、どの地域を経由して転送するのかを適切に管理することが求められるようになっている。調査では、今後12カ月(2026〜2027年)におけるクラウド接続の最も大きな課題として、23%が「データ主権/地政学」を挙げた。
今後12カ月におけるクラウド接続の課題として挙がった主な項目は次の通り。
- 遅延や性能低下:28%
- セキュリティの脆弱(ぜいじゃく)性やDDoS(分散型サービス拒否)攻撃 :27%
- ダウンタイムや信頼性の問題:26%
- 接続コスト:24%
- データ主権や地政学:23%
- 担当者のスキル:22%
- データの流れに対する可視性や制御の欠如:20%
「接続コスト」や「担当者のスキル」「データの流れに対する可視性や制御の欠如」などは、特に現代のマルチクラウド環境を接続、管理することの複雑さを浮き彫りにしている。
クラウド接続の負担をどう減らす? 広がる「専用接続」
こうしたクラウド接続の複雑化や運用上の課題を受けて、企業の間では、クラウドサービスに「専用のネットワーク」で直接接続する動きが広がっている。通常のインターネットを経由してトラフィックをやりとりするのではなく、専用のネットワークを介してクラウド事業者に直接接続する方式により、低遅延や高い回復力、セキュリティの強化、安定した通信性能などが見込めるという。
こうしたクラウドへの専用接続を既に利用している企業は61%、積極的に検討している企業が31%を占めた。企業規模別に見ると、従業員1000人以上の企業では71%がクラウドへの専用接続を利用している。一方、従業員100〜249人の企業では31%にとどまった。
クラウド接続の問題解決に費やしている時間も、企業規模別で違いがあった。問題解決に週21〜40時間を費やしている割合は、従業員100〜249人の企業では8.62%だったのに対し、従業員1000人以上の企業では2.53%だった。
こうした結果を受け、専用のネットワークでクラウド事業者と直接接続する方式が重要な要素になりつつある一方、その導入や活用は企業規模によって差があるとDE-CIXは指摘している。
トラブル対応の時間をAI活用に振り向ける
DE-CIXは、クラウドへの接続環境を改善する効果が、アプリケーションの性能向上だけではないと指摘する。もう一つの効果が、複雑なクラウド接続によって生じる運用負荷の軽減だ。
接続問題のトラブルシューティングに費やす時間を減らすことができれば、IT部門はその分をAI活用の推進やシステムのモダナイゼーション、セキュリティの強化、ユーザー体験の改善といった業務に振り向けられる。特にAI活用が本格化する中、日々のネットワークトラブルへの対応に追われるのではなく、AIをどう業務に取り入れ、活用を広げていくかに時間を割ける体制を整備することが重要になる。
本調査は、英国と米国のITおよびインフラ関連の意思決定者400人超(従業員100人以上の組織に所属)を対象に実施したものだ。
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