AI開発を「マルチプレイ」に 対話とコードを複数人でリアルタイム共有する「Delta」:「なぜこんなコードに?」の疑問を解消
Zed Industriesは、AIエージェントと共にコードを書き、その成果を会話でレビューするためのコラボレーションコーディング環境「Delta」を発表した。会話とワークツリーをリアルタイムで複製する独自のデータベースを基盤とする。
コードエディタ「Zed」を提供するZed Industriesは2026年8月12日(米国時間)、チームでのAI開発・レビューに特化したコラボレーション開発環境「Delta」を発表し、プライベートβの受け付けを開始した。
独自開発のリアルタイム同期データベース「DeltaDB」を基盤とし、コード差分だけでなく「どのような対話を経てそのコードが作られたか」というコンテキスト(文脈)を、チームメンバーとエージェント間でそのまま保持・リアルタイム共有する仕組みを提供する。
従来のAIコーディング支援ツール(AI IDE〈統合開発環境〉)の多くが「開発者1人対AI」の閉じた対話を前提としていたのに対し、Deltaは単なるコード生成にとどまらず、開発の主軸となった「AIとの対話(スレッド)」そのものをチーム共有のドキュメントとして位置付け、協調作業の中心に据えるという。
「なぜこんなコードに?」の疑問を解消 コードの変化に“コンテキスト”が自動で追従する
Zed Industriesは、Deltaを「コードを書くのに最良の場所をつくり、次にコードについて話すのに最良の場所にする」という長年の計画の後半に当たると位置付ける。
その構想を支えるためDeltaDBは、会話とワークツリーをまとめて、スレッドに参加する全員へリアルタイムに複製する。既存のGitリポジトリで動作し、コミット間の編集と会話を記録するため、コミットとプッシュはこれまで通りに実行でき、Deltaを開かないチームメンバーからは通常のGitリポジトリとして認識される。
コミット単位のプラットフォームでは、コメントがスナップショットにひも付くため、コードが変わった時点で古くなる。Deltaでは会話やワークツリー内の任意のコード行にもコメントを付与できる。コメントはコードの変化に追随してその位置にとどまり、参加者全員が同じコンテキストを閲覧できる。
エージェントも同じスレッド内で作業するため、おかしな点があればコード差分から意図を組み立て直す必要はなく、エージェントへ直接説明や修正を指示できる。このコンテキストも履歴としてDeltaDB内に残るため、将来のチームメンバーにとっても「なぜこのコードになったのか」を把握する手掛かりにできる。
スレッドへの招待で共同作業に
チームメンバーはクリック1つで会話に招待できる。招待された参加者はリアルタイムにコメントを付け、後から作業を引き継げる。ワークツリー自体が同期されるため、各自のローカルマシンにコードがリアルタイム複製され、最新コードがコミット・プッシュされているかどうかを気にする必要もないという。
クラウドでもブラウザでも、「Claude Code」からでも
DeltaDBはクラウドにも対応する。作業をクラウドランナーに移せば、PCを閉じてもエージェントが作業を継続する。またブラウザ版(Delta.dev)はRustアプリケーションをWebAssemblyにコンパイルし、WebGLで描画しているため、インストールなしでデスクトップ同等の体験が得られるという。
「Claude Code」などの外部エージェント環境とも接続し、使い慣れたターミナルでのセッションをDeltaのスレッドにライブ同期できる。
差分や対話履歴を畳み込まず、スレッドで直接編集
一般的なAIコーディングツールは、生成量が膨大になると差分を折りたたんだり、対話履歴を要約したりして画面表示を小さく収めようとする。これに対しDeltaは、全ての差分と対話履歴をそのまま開いて描画する方式を採用した。
さらに、流れていく会話を眺めて画面下のテキストボックスから返信するだけの従来UIを改め、スレッド全体を1つの「ドキュメント」として扱う。コードエディタと同じキーボード操作でスレッド内を移動し、差分の1行や計画の1ステップ、AIの思考ブロックなど、反応したい箇所に直接カーソルを置いてコメントを入力できる。何を指して指示しているかがエージェントやチームメンバーへ正確に伝わる仕組みだ。
Zedの拡張機能ではなく「独立アプリ」として開発した理由
同社がDeltaDBの機能をZedの拡張機能として追加せず、あえて新しいアプリケーションとして構築した理由は2つあるという。
一つは数十万人が毎日使うZedの土台を作り替えてユーザーの日常ワークフローを妨げないこと。もう一つは、データベースとアプリが互いに制約なく会話中心の新しいUIを追求することだ。将来的にはDeltaDBの成果をZed側にも取り込む計画だとしている。
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