「出社しないとつながりが薄れる」は誤解? 約7700人の追跡調査が示す実態:米コロラド大の調査研究(1/2 ページ)
コロラド大学ボルダー校は相次ぐ「出社回帰」の動きに対し、一律の出社義務化によるリスクを浮き彫りにした研究結果を発表した。「離職防止や生産性維持に必要なのは場所の統制ではなく自律性や柔軟性を保つことだ」と指摘している。
米コロラド大学ボルダー校(リーズ・スクール・オブ・ビジネス)などの研究チームは2026年8月12日(米国時間、以下同)、大規模ヘルスケア組織の従業員7704人を対象に実施した働き方とウェルビーイング(身体的、精神的、社会的な健康状態や幸福度)についての調査結果を発表した。
調査の結果、完全テレワーク(フルリモート)で勤務する従業員が最も高いウェルビーイングを示し、完全出社(オンサイト)して勤務する従業員が最も低い数値を記録したことが明らかになった。また完全テレワーク勤務者が同僚や職場の組織文化から孤立しているという傾向はほとんど見られず、むしろ組織文化で肯定的な評価を下す割合が高いことも判明した。
同研究の成果は、学術誌「Frontiers in Psychology」に掲載された。
多くの企業においてテレワークの導入が進む一方、従業員をオフィスへ呼び戻す「出社回帰」の動きが広がる背景には、経営陣やマネジャー層の間で「在宅勤務を続けると従業員が孤立し、チームワークが損なわれ、離職につながりやすいのではないか」という根強い懸念がある。だが同調査は、そうした懸念が必ずしも実態と一致していないことを示している。
「出社回帰」は正しいのか? 7704人の追跡データが示す実態
研究チームは、米国の大規模ヘルスケア組織に所属する従業員7704人から収集された職場調査データを詳細に分析した。対象となった従業員の勤務形態の内訳は、約半数が事業所や現場に常時出勤する完全出社勤務であり、残りの半数は出社と在宅勤務を組み合わせるハイブリッド勤務、または完全テレワーク勤務だった。
分析において明確に浮き彫りとなったのは、勤務形態によって従業員のウェルビーイングに顕著な差がある点だ。最も高いウェルビーイングを報告したのは完全テレワーク勤務のグループであり、次いでハイブリッド勤務のグループが高く、最も低い水準にとどまったのは完全出社勤務のグループだった。
同研究の共著者であるステファニー・ジョンソン氏(組織リーダーシップおよび情報アナリティクス教授)は、自身が当初想定していた仮説と調査結果が異なっていたと分析している。「オフィスと自宅の双方で働くハイブリッド勤務が、双方の利点を享受できる最も幸福な働き方ではないかと考えていた。オフィスに定期的に通うことで人と顔を合わせ、人間的なつながりを得られると考えたからだ。しかし、データが指し示した方向はそれとは異なっていた」
「同僚とのつながりが薄れる」 懸念を覆す調査結果
この「同僚とのつながり」について、調査データは興味深い結果を示している。
調査では、自社の組織文化を表現する複数の言葉を参加者に挙げてもらう設問が設けられていた。回答データを分析したところ、完全テレワーク勤務者はハイブリッド勤務者やオフィス勤務者と比較して、「チームワーク」「インクルージョン(包摂性)」「サポート(支援)」といった肯定的な言葉を用いる割合がわずかに高い結果となった。
ジョンソン氏は、「物理的に離れて勤務しているにもかかわらず、テレワーカーは同僚や組織でより前向きな関係性を実感していることを示す表現を多く用いていた」と説明している。同僚と直接対面していなくても、業務上の支援やチームとしての協調関係が十分に機能していれば、組織との心理的距離は離れないことが示唆されている。
ただしジョンソン氏は、対面でのやりとりが不要であると結論付けているわけではない。特にキャリアの初期段階にある若手や新入社員が組織内での人間関係を一から構築する場面においては、対面のコミュニケーションが有効に機能する側面もあると言及している。
「互いの人となりを理解した後の段階においては、テレワークは極めて円滑に機能する。従って、一定の対面コミュニケーションを持つこと自体には依然として価値がある」(ジョンソン氏)
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