AIによる大量通信時代、なぜ「SD-WAN」に4つの機能が必要なのか? Ciscoが解説:“人間ユーザー前提”だった企業ネットワークはもう古い?
AI活用が企業システムに広がれば、それを支えるネットワークにも変化が求められる。AI時代の企業ネットワークでは、何を考慮する必要があるのか。
AI活用がPoC(概念実証)から本番環境へと広がり、利用するAIの種類や用途が増えれば、企業ネットワークへの影響も大きくなる。AI時代のネットワークでは何が変わり、どのような機能が必要になるのか。
Cisco Systems(以下、Cisco)は2026年8月3日(米国時間)、AI時代の「SD-WAN」(Software-Defined WAN)に求められる要件を同社ブログで説明した。
人ではなく「AIが生むトラフィック」へ ネットワークはどう変わる?
AI活用を背景にした変化としてまずCiscoが指摘するのが、ネットワークトラフィック(以下、トラフィック)の発生源が従来とは異なるものになることだ。これがなぜ企業ネットワークに大きな影響をもたらすのか。
企業ネットワークはこれまで、従業員がアプリケーションを開き、Web会議に参加し、クラウドサービスにアクセスするといったように、「人のアプリケーション利用からトラフィックが生まれる」ことを前提としてきた。しかし、自律的に動作するAIエージェントが普及すると、“マシン”が大量の通信を発生させるようになる。
例えば、AIエージェントへの1回の要求から、データの取得やAPIの呼び出し、他のエージェントへの問い合わせ、ワークフローの実行などが連鎖する。1回の要求が、人が直接起こしたわけではない数十回のマシン間通信につながる可能性もあるという。
Ciscoと調査会社Foundryが2026年にIT、ネットワーク部門のリーダー3472人を対象に実施した調査では、AIに関連するキャンパスと拠点のトラフィックは前年比で平均34%増加した。一方、必要な規模でAIを支えられるだけの柔軟性と適応性がネットワークにあると答えたのは15%にとどまった。73%は既に容量の限界に直面しているか、24カ月以内に直面すると見込んでいる。
ただしCiscoは、単純に“通信量が増加する”ことを問題としてはいない。人が直接関与しない通信であっても、その重要度をネットワークが識別し、優先し、保護し、必要な品質を保証できるかどうかが重要になるとしている。
AIワークロードは一様ではない
AIによってトラフィックはバースト(突発的に増加する)的になり、拠点やクラウド、データセンター、AIインフラなどに分散する。遅延への要求も厳しくなり、通信が異なる地域やデータ領域をまたぐことで、適用すべきポリシーも複雑になる。
さらに、ネットワークに求められる要件はAIの用途によっても異なる。例えば、「AI音声アシスタント」はレイテンシ(遅延)の影響を受けやすい。「検索拡張生成」(RAG)はモデルと複数のデータソースをまたいで通信する。「映像解析」や「データ取り込み」では継続的なスループットが求められ、「エッジAI」や「自律型ロボット」では業務を実行する場所の近くで予測可能な性能を確保する必要がある。
加えて、AIエージェントの通信は“増幅する”という特性がある。1回の要求から情報の取得やAPIの呼び出し、他のエージェントへの問い合わせ、ワークフローの実行などが連鎖するためだ。
こうした点を踏まえ、Ciscoは全てのAIトラフィックを一律に扱うのではなく、ワークロードごとの特性を把握し、それぞれに応じて制御することが重要になるとしている。
AI時代のSD-WANに求められる4つの機能
AI活用を受けたトラフィックの変化に対応する上で、CiscoはSD-WANの役割が広がるとみる。従来の人を起点としたアプリケーショントラフィックの最適化だけでなく、動的かつ分散した機械生成のワークフローについても、必要な品質やセキュリティを確保する必要があるためだ。
そのために必要な機能として、次の4つを挙げている。
- AIワークロードの認識:AIに関連するトラフィックを識別し、性能やポリシーの要件を把握する
- 体験の保証:ネットワークの状態を継続的に測定し、遅延の影響を受けやすいAIトラフィックなどを、より適切な経路にリアルタイムで振り分ける
- セキュリティとガバナンスの統合:検査やセグメンテーション、データの取り扱いポリシーを拠点をまたいで一貫して適用する
- 運用の可視化:AIによる通信が社内をどう通過しているかを把握し、トラブルシューティングや統制、キャパシティー計画に生かす
AI活用の拡大によって、企業ネットワークで発生するトラフィックの量だけでなく、その発生源や性質も変わりつつある。Ciscoは、SD-WANを企業のAI活用を支えるポリシー、品質保証、可視化のレイヤーとして位置付けることが重要になるとしている。
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