JR西日本が生成AIで「APIレビューを3時間超→数十分」に短縮――開発現場の“詰まり”をどう解消した?:“API公開に1カ月”からどう脱却したのか
API定義ファイルの作成やレビューを担える担当者が限られ、確認や修正のやりとりに時間を取られていたJR西日本。生成AIで作業時間を短縮し、負荷を軽減した。どのような仕組みで実現したのか。
JR西日本は2020年、業務システムのAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)を公開する際の接続経路を一本化し、社外システムとの連携を効率化する「API共通基盤」を構築した。交通系アプリケーションを提供する事業者から、鉄道の運行情報や遅延情報などのデータ提供を求める声が寄せられており、こうした需要の増加に備えるためだ。
APIの新規開発や変更の際、JR西日本では各業務システムの開発会社や社内エンジニアで構成する開発チームがAPI定義ファイル(APIの仕様書)を作成し、API共通基盤の運用チームが内容をレビューしていた。作成やレビューには専門知識が必要なことから、担当できるスタッフが限られていた。両チーム間で確認や修正のやりとりを繰り返す必要があり、APIの公開までに1カ月近くかかることもあったという。
生成AIで開発の“詰まり”をどう解消?
こうした課題を解決するための手段として、JR西日本が目を付けたのが生成AIだ。その活用により、API定義ファイルのレビュー精度向上や、修正作業の時間短縮といった効果を確認したという。どのように実現したのか。
JR西日本は2025年初頭、API共通基盤の構築を支援したTISIから、生成AIを活用した「API定義作成支援ツール」の提案を受けた。TISIが開発したAPI定義作成支援ツールは、設計書との不整合や記述エラーを検出するレビュー機能と、指示や要件に応じてソースコードを生成・修正する機能を備える。
API定義作成支援ツールの実力を確かめるために、JR西日本はTISIと共同でPoC(概念実証)に取り組んだ。PoCでは、JR西日本独自の仕様やルールに沿ったソースコードを生成できるように、TISIがAPIの仕様や認証ルール、記述方法などを同ツールに参照させる調整を施した。TISIのネットワーク内での検証で、JR西日本のセキュリティ基準を満たすかどうかも確認した。
レビュー精度と作業効率を改善、本番運用へ
2025年10〜12月には、API共通基盤で実際に利用しているAPI定義ファイルを使い、API定義作成支援ツールのレビュー機能と修正機能の精度を確かめた。レビュー機能では、ベテランエンジニアが指摘した誤り8カ所のうち7カ所を検出し、87.5%の検出率を記録した。修正機能では、検証した9件全てで期待した修正結果が得られたという。
従来3時間以上かかっていたAPI定義ファイルのレビュー作業は数分から数十分程度に、1〜2時間かかっていた修正作業は約30分に短縮できることを確認した。開発チームと運用チームがそれぞれAPI定義作成支援ツールを使い、API定義ファイルの不整合や記述エラーを確認することで、不備による差し戻しを減らし、両チームの作業負荷の軽減につなげた。
API定義作成支援ツールが出力するレビュー結果や修正案は、人による最終確認の前段階で活用できる水準に達していると、JR西日本は判断。担当者の経験やスキルへの依存を抑え、API定義ファイルの品質の平準化にも寄与すると評価した。こうした結果を踏まえて、同ツールの本番利用を始めた。
JR西日本は今後も、API定義作成支援ツールなどの生成AI活用を推進する。API定義ファイルの作成やレビューに加えて、要件定義や設計レビュー、テスト工程など、他の開発工程にも生成AIの活用を広げる考えだ。TISIが2026年9月28日、本事例を公開した。
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