検索
ニュース

AI時代の「液冷」運用超入門 代表的な3つの冷却液は? 点検を怠ると“藻が湧く”?:AIデータセンターの冷却を支える技術

データセンターの発熱対策として導入が進む「液冷」。その仕組みや運用上の注意点を把握できているだろうか。AI時代に不可欠な液冷を適切に運用するために、押さえておきたいポイントを解説する。

Share
Tweet
LINE
Hatena

 AIの学習や推論を支えるデータセンターでは、CPUやGPU(グラフィック処理プロセッサ)などのチップの消費電力と、ラックの密度が高まり続けている――。データセンター設備を手掛けるシュナイダーエレクトリックは、こう説明する。背景には、AIの処理量の増大があるという。

 消費電力が増えれば、チップの発熱も増える。ラック当たりの搭載機器や消費電力が増えれば、限られた空間で処理すべき熱量も増えることになる。こうして増える発熱を、いかに効率よく冷却するかが課題になっている。

 冷却の手段として脚光を浴びているのが、液体で熱を運ぶ「液体冷却」(液冷)だ。液冷は一般的に、送風でチップを冷やす「空気冷却」(空冷)と比べて、より多くの熱を運べる。そのため発熱が集中する高密度なラックの冷却に適しているという。液冷はAI向けのデータセンターに欠かせなくなったものの、冷却に使う液体である「冷却液」をどう選び、どう管理すべきかまで、正しく理解できているだろうか。

そもそも液冷に使う「冷却液」には、どんな種類がある?

 シュナイダーエレクトリックは、データセンターに使う冷却液について、関係者からよく寄せられる疑問に答える解説を、報道関係者向けのニュースインフォとしてまとめた。冷却液にはどのような種類があるのか、主流の冷却液とは何なのか、液冷に使う装置内の冷却液をどれぐらいの頻度で点検すべきかなどを解説している。ニュースインフォの内容を見ていこう。

 データセンターの液冷システムで企業が採用できる主な冷却液として、シュナイダーエレクトリックは「絶縁性液体」「添加剤入り脱イオン水」「PG25冷却液」の3つを挙げる。1つ目の絶縁性液体は主に、サーバを冷却液に浸す「液浸冷却」で使う。同社によると、AI処理に使うチップの発熱量は増え続けており、絶縁性液体では高まる冷却要件に追い付くのが難しくなっている。

 不純物を取り除いた水である、2つ目の脱イオン水は、3つ目のPG25冷却液よりも優れた冷却性能を備えるとシュナイダーエレクトリックは説明する。ただし液体を清浄な状態に保つのに相応のコストがかかるのが課題だ。そこで脱イオン水に近い冷却性能を持ちながら、冷却液のメンテナンスの負担を大幅に抑えられるPG25冷却液が、データセンターで広く採用されるようになったという。

 データセンター向けハードウェアの設計をオープンソース化する非営利コミュニティーのOpen Compute Project(OCP)は、PG25冷却液を推奨している。微生物の繁殖や銅の腐食を防ぐ性能を備えることが理由だという。

主流の「PG25冷却液」とは?

 PG25冷却液は、チップに取り付けた「コールドプレート」などの冷却部品に冷却液を流す「チップ直結型」(Direct-to-Chip)冷却で、広く使われている冷却液だ。水75%とプロピレングリコール(以下、PG)25%で構成される。シュナイダーエレクトリックによると、PGは濃度が25%程度になると、微生物の増殖を抑える性質である「静菌性」を示す。濃度が10%程度だと、藻類などの微生物がPGを栄養源にして、かえって増殖することがあると、同社は説明する。

 一般的に、PG25冷却液は添加剤を含む。細菌の増殖を抑えたり、CDUと冷却部品の内部に使う銅の腐食を防いだりするためだ。例えばコールドプレートの内部には冷却用のフィンが並び、フィンの間を冷却液が流れる。このフィン間隔は50マイクロメートル程度と狭い。そのためコールドプレート内で微生物が増殖すると冷却性能に影響し、温度上昇時にチップが性能を自動で落とす「サーマルスロットリング」を招いたり、高価なIT機器を損傷させたりする恐れがある。

CDU内の冷却液の点検頻度は?

 冷却液の性能が落ち始めると、微生物の繁殖や腐食、スケール(固形物の付着)の発生につながり、最終的にIT機器の障害を招く恐れがある。冷却液を検査すれば、異常や劣化を早期に検知し、微生物が繁殖する前に対策を講じられる可能性がある。

 シュナイダーエレクトリックは、液冷の主要コンポーネントである「冷却液分配ユニット」(CDU)のループ(冷却液が循環する経路)内の冷却液について、検査の頻度を段階的に変える方法が有効だと説明する。CDUは、液冷システムにおいて冷却液をループに分配する役割を果たす。

 新たに設置してコミッショニング(試運転と性能確認)を終えたばかりの液冷システムでは、1日1回、場合によっては1日に複数回の検査を、シュナイダーエレクトリックは推奨する。PG濃度の低下など、悪影響につながる化学的な変化を早期に捉えるためだ。

 冷却液が初めてCDU内を循環する際は、フラッシング(配管内の洗浄)に使った脱イオン水が残り、混ざることでPG濃度が大きく変わることがある。水に対するPGの割合を50%に高めたPG50冷却液を追加して、冷却液全体のPG濃度を高めるのは難しくないものの、それが必要かどうかの判断には実際の検査が欠かせない。

 検査を始めて1週間程度が経過したとき、または検査で濃度の安定を確認できたときは、検査の頻度を週1回程度に切り替えてよいと、シュナイダーエレクトリックは説明する。冷却対象のIT機器で処理を実行し始めていれば、負荷がかかった状態で濃度がどう変化するかを監視する。

 負荷がかかった状態でも、冷却液の濃度が安定していることを確認できれば、月1回など頻度をさらに下げられる。ただし正確な頻度は、施設の状況やリスクとコストのバランスの取り方で変わると、シュナイダーエレクトリックは注意を促す。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

ページトップに戻る