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@IT総合トップ > @IT セミナー&カンファレンス > @IT特別協賛 翼システム カンファレンス2002 > Keyman Interview[1] |
第1回は、帳票などを中心にエンドユーザーに一番近い部分で、ユーザーニーズを大切にソフトウェア開発を行ってきた翼システムの内野弘幸氏に、これからの情報システムの開発スタイルの方向性を伺います。 (聞き手:@IT藤村厚夫)
藤村●翼システム様は帳票に関わるツールベンダとして非常に重要なポジションを得てらっしゃいますが、ここに至るプロセスを振り返っていただけますか。
当時はMS-DOS時代でしたが、もっと美しいと思えるビジュアルな画面が欲しい──。翼システムはそうした顧客の厳しいニーズに何とかして応えたいと考えており、それをFITの持つ技術力とシーズに結びつけることで胸を張って世に出せる帳票ツールを作ることができたわけです。開発はMS-DOS環境から始まったのですが、製品としてのターゲットはWindows 3.1ベースの帳票ツールになりました。 藤村●クライアント/サーバ型システムだったのですか? 内野●まずは汎用機のモデルからでした。最初の大きな案件に、汎用機に端末としてWindows 3.1ベースのPCをつなげるシステムがありました。ダム端末のエミュレータをWindows上で動かし汎用機の端末としていたのです。そこでの課題が印刷でした。そのユーザー企業は半官半民系だったので、プリンタは特定のメーカーに片寄らないように各社の製品が入っていたのです。 キヤノン製プリンタであればLIPS、リコーならばRPDLというように、言語やプリンタのスペックによって、罫線の太さや頭出し位置が微妙に違います。しかし、出力する帳票はそのユーザー企業にとってのお客様に提出するものですから、きちんと見た目もそろえる必要があったのです。これをわれわれがツールを開発することでカバーすることができました。これをスタートの段階からやったことが、その後の帳票ツールベンダとしての基盤固めになったと思っています。いまでもわれわれの強みになっています。
藤村●多様なプリンタの違いを吸収してくれる優れた帳票ツールの原型がそこで生まれたのですね。現在はWebコンピューティングという大きな波が到来していると思うのですが、それへの対応はどうでしょうか? 内野●いまから4年ほど前なのですが、FITの技術チームから「PDFの生成エンジンを作った」という話が出てきました。技術者のほうで「絶対にインターネット上でも帳票のニーズがあるはずだ」と開発を始めていたのです。当時はまだWebの仕組みで業務アプリケーションを走らせるようなことは、そもそも誰も考えていなかったような時期です。ですから、使われてもほんの一部だろうと考えていました。 それまでアドビシステムズさんがPDF作成ツールを提供していましたが、それではバッチ的にまとめてPDF化するやり方しかできませんでした。一方、当社の技術的なアプローチは、クライアント/サーバでネイティブプリンタドライバをターゲットとしてネイティブコードを生成するというものでしたから、リアルタイムに帳票を出力できるものです。そこでWebシステムでも、PDFをプリンタドライバの1つとして扱って、ダイナミックにPDFを生成する技術を開発しました。 藤村●Webを業務システムに利用するという発想から、Javaへの全面的な取り組みが開始されたのですね? 内野●なぜJavaを選んだのかといえば、単純です。ツールベンダにはマルチプラットフォーム対応が求められます。特にWebシステムではサーバ側はUNIXマシンということが多くなります。このケースでは同じUNIXとはいえ、さまざまなバージョンや対応機種があり、組み合わせの数が指数的に広がっていきます。これでは、とてもやっていられません。 それを救うのがJavaだと考えたのです。そして、いままで積み上げてきたノウハウをJavaに持ち込もうということになりました。マルチプラットフォーム化が出発点で、そこでPDF生成エンジンのニーズが強くあったのです。まだネイティブプリンタドライバ対応ではありませんでした。その後、私たちが感じたのは、「ネイティブにプリンタコードを生成したい」というニーズが必ず起こる。これをプラットフォームごとにCでコーディングしていては大変だ──ということです。そこで初めてプリンタドライバも全部Java化にしようと決めたのです。様式を合わせるためにプリンタドライバごとに細かいコード解析もしました。単に「Java化」といっても、大変な作業でしたね。
内野●私たちのドメインの原点は、「いかにプリンタに忠実に、スピーディに帳票を出力するか」ということでした。これをずっと積み上げてきました。 日本の企業において、帳票の重要性はものすごく高いものがあります。単に罫線がきれいであるとか、見た目が整っているというようなことを超えた部分があるのです。企業運営の中で帳票はとても大事なものなのです。 米国などでは、見た目には貧弱な帳票を用いていますが、帳票を軽んじているかというと決してそうではありません。向こうではフォーム(書式)という考え方が整備されています。したがって、電子フォームという世界でそれをどう実現するかということも、テクノロジを積み上げています。例えば、電子フォームには「入力する」という作業があるのですが、入力を支援するためのデータ形式のチェックや、「上の欄がこうだからその下にあるこの欄にはこういうデータが入力されるはずだ」といった、入力する人に便利な補助機能を持っているわけです。 Webコンピューティングの時代になってとても変わった思うことがあります。Webコンピューティング時代は、使いたい人が情報を自由に扱える環境となります。ドキュメントについても同じで、自分が欲しいときに欲しい形で使えるようにしたいわけです。これに対し電子フォームが的確に生成されれば、「紙に出さなくても十分人にインパクトを与えるだけの情報が渡せる」と私たち自身が体感しています。 いままでは特定の管理業務に携わっている人が、仕事に必要な情報を帳票にして出すという狭い領域でのソリューションだったものが、あらゆる人々があらゆる社会生活の局面で、必要とする情報をフォーム化して、オンラインやオフラインで創り出していくというニーズに応えるアプローチが必要になると考えています。 そうなってきて、私たちも自分のドメインを、単にプリンティングだけでなく、「人に情報をいかに伝達するか」というテーマのシステム作りというところにまで広げられると思っているのです。 藤村●まさにWebコンピューティングの時代ならではの課題ですね。 内野●私たち自身がそれに気づき、事業の命運をかけて全面的にやろうと決意して、電子フォームへの取り組み始めています。これはいまに始まったことではなく、この数年の中でわれわれ自身が積み上げてきたものが背景にあると思っています。
内野●開発工期が短期間になり、コストが限られるというところに如実に現れています。ですから、いままでのように言語でゴリゴリと一から十まで作るなどということは許されません。使えるものは使って、ニーズに応えなければなりません。 ソフトウェアの部品化をようやくやろうという気運がわき上がってきたのは、もちろんJavaを含めたテクノロジが成熟してきたという背景もありますが、まさに経済環境を含めて全部条件がそろってきたからです。私たちツールベンダもそれをしっかり受け止めて、主体的になって推進していかなければなりません。 「ツールベンダは自分のプロダクトがよい品質で出せれば良い」ということでは済まなくなってきています。ここ数年目立ってきたのは、私たちのプロダクトにとどまらず、Webアプリケーションサーバ製品など、他社のミドルウェアとの連携などの質問がどんどん弊社に寄せられるようになっていることです。マーケットの変化のスピードに、ベンダやサプライヤがなかなか対応できなくなっている面があると思いますね。 そこで、そうしたマーケットで求められる短期開発、ローコストなどの要求に応えるために必要なソフトウェア部品やミドルウェア、ツールなど、当社製品と連携する部分を検証し、その使い方などの情報をお客様に提供できるものを整理して、それを顧客や開発者への主体的なサポートに盛り込んでいくという作業をすべきだと決意しました。その1つの現れが「帳票iワールド」ですね。
例えば、翼システムさんの持っているアライアンスの広がり、それから多様なソリューションが紹介されます。また、今回アットマーク・アイティが協力させて頂く「デベロップメントトラック」では、開発者側の問題意識やその解決のための考え方や手法などが総合的に論じられます。 内野●おっしゃるとおりです。日本のITはあまり良い状態ではないと思っています。だからこそ起死回生のチャンスがあると思うのです。 それは何かといえば、日本の製造業がこれだけ世界で発展できた仕組みの1つである「部品化」という技術です。きちんとした機能をコンパクトに仕上げるという仕事は、日本人に向いています。その部品化されたものをいかに効果的に使っていくか。これが次のテーマといえると思います。 ソフトウェア部品を効果的に使っていくことが、日本のITの次のステップに向けて非常に大きなうねりになってくるのではないでしょうか? 日本のIT業界もそこに向かっているとすれば、私には大いにチャンスがあると思っています。 藤村●大変期待できそうですね。ありがとうございました。
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