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第2回目は、システム・インテグレータでもあり、ソリューション・プロバイダでもある(株)日本総合研究所の細川努氏に、ビジネスの最前線で激変するシステム開発の現状とそのソリューションとしてのコンポーネントベースの開発について伺います。 (聞き手:@IT藤村厚夫)
藤村●いま、ソフトウェア開発やシステム開発では大きな転換点を迎えています。その結果、ビジネスの現場ではどのような変化が起きていて、どのような取り組みがされているのでしょうか?
しかし1990年代後半からは、インターネットおよびERPなどのアプリケーションパッケージの登場により、「ビジネス+IT」が“広義のビジネス”という意味で経営者レベルの課題になってきました。例えば、米国ではIT主導のビジネス開発などが常識になっています。「ITを活用していかに短期間で他社との競争優位を実現するか」が、米国だけでなく日本でも共通の課題になってきているのです。その一方で、皮肉にも、ビジネス側が短期間の変革を求めているのに、システムを開発する側がついて行けていないという傾向を昨今感じております。 藤村●ボトルネックは、ビジネス側ではなく技術者の側にあるというわけですか? 細川●そうです。すでに顧客(ビジネス側)の要求が従来と変わってきているにも関わらず、開発サイドは2〜3年かけてシステム構築をしたり、本当に一から作り上げたりといった従来型のシステム開発を行ってきたため、すでに顧客ニーズに対応しきれなくなっています。納期だけでなく、コストパフォーマンス的にも要求は厳しくなっており、すでに開発サイドにとって環境はまったく変っているのではないかと私は考えています。 藤村●ビジネスの中心的要素としてのITの重要性が認知されてきたことにより、開発期間やコストが厳しくなってきているということでしょうか? 細川●そう思います。さらにこのところ、センセーショナルな事件がいくつかありました。特に金融系のシステムなどはその信頼性が社会的な課題ともなり、場合によってはその企業の経営を揺るがしかねない時代になっています。すなわち、開発期間やコスト面だけではなく、信頼性や処理性能まで含めて、システム開発に課せられる要求は非常に厳しくなってきているのです。 藤村●ビジネスの形態や産業そのものの構造が変わってきている中で、システム開発の手法や考え方も変わらなければならないわけですね。 細川●いくつかの戦術があるかと思います。最近増えてきているのが、例えばR/3のようなパッケージを導入し、そこにビジネスを合わせてしまうビッグバン型、つまりBPR(Business Process Re-engineering)です。逆に従来のように3〜5年かけて、まったく新しいシステムを組み上げる事例は、少なくなる傾向にあります。
藤村●ビジネスサイド、マネジメント層からの要求が変わってきたことに対して、サービスを提供する側の取り組みはどのように変化しているのでしょうか? 細川●日本総研にも従来からビジネスコンサルティングの部門がありますが、最近の傾向としては経済動向やビジネスのBPRのような経営の変革を前提とし、どのようなシステムを構築しなければならないかという点を、経営層や情報システム部から切実に求められています。そういった意味で、いままでのように単純にシステムの一部を直していくようなやり方は、経済的価値が相当下がってきています。 藤村●システムプロバイダの側にも、単にユーザー企業の要求や仕様が満たす機能を実現するだけでなく、それに加えて、ビジネス現場の変化に対応してそれをキャッチアップする、あるいはリードするような提案が求められているのですね。 細川●そうです。システムを作る側も、システムを通して「ビジネスをどう改革するか」というユーザー企業の課題に一緒に取り組んでいく機会が増えてきています。 藤村●それをブレイクダウンすると、最終的にはコードを実装するような開発者も関わってきます。こうしたレベルの開発者には、どういう影響がありますか? 細川●3つあります。1つ目は、トップダウンとしての要求項目をいかに的確に開発するかということについて、ますます要求が激しくなってきているということです。従来はどこでも似たようなことをシステム化していたのですが、改革型プロジェクトでは未経験の要求がなされる可能性があります。 2つ目は大規模化、信頼性向上の観点で、技術者にとって従来のメインフレームにも増して、厳しい要求事項に、有機的に応えなければならないという点です。 3つ目は、やはり開発が短期間型になっていることです。これが非常に厳しい話で、3カ月でやってほしいといった話が非常に多く、1年間の開発期間がキープできると気持ち的にかなり楽だという状態です(笑)。このような劇的な短期間型開発要求の中で、システム作りのアプローチが従来型だと、とてもやっていけない状況になりつつあります。
藤村●技術者サイドとしては、超短期型の開発モデルをどう実現すべきなのでしょうか? 細川●まず上流行程で、短期間に的確に要求を捉えるということです。昨今、UMLによってビジネスモデリングからオブジェクト指向で行うという動きになっていますので、そういったテクノロジをどう活用するかにかかっているでしょう。 もう1つは、翼システム様が取り組まれているような、コンポーネントを活用してシステムを組み上げていくというやり方です。そこでいま一番足りないのは、いろいろなコンポーネントを組み合わせて、システムを作り上げていくという経験とノウハウです。短期間でどのように再利用性を高め、組み換えを行い、新しい変革を起こすかが、開発サイドに問われています。
藤村●その問題をクリアしていくのは、単にツールだけの話でもなく、製品選択だけが課題でもありませんね。もちろん、アーキテクチャを考える人間だけの問題でもないわけですね。そのあたりは、これからどう向かっていかなければならないのでしょうか? 細川●まずシステムをどのように設計するかという点が1つあります。もう1つは、部品の組み換え、組み合わせ型のソリューションをどのような形、レベルで実現するかということですね。これはEAIのような、専用の大がかりな仕組みもありますし、コンポーネント自体が組み合わせ自在になるというアプローチもあると思います。 基調講演の中で詳しくご説明しますが、例えば帳票に関してR/3からJ2EEまで多様なものとの組み合わせを可能にするという翼システム様のアプローチは、非常に分かりやすいと思います。さらに、これからは小さな業務コンポーネントから大規模なシステムを含めて、システム同士をあたかも部品を組み合わせるように、統合・連携するということが多くなると考えます。テクノロジ面では例えば、JCA(Java Connector Architecture)などによって、コンポーネント的アプローチでシステム同士を連携するための新しい基盤が整備されつつあります。 また、最近のWebサービスの登場によって、インターネット上で他企業ないしグループ企業とのシステムを連携するようなアプローチが出てきています。今後はこれらの技術を活用したコンポーネント型、組み合わせ型のシステムソリューションが有力になってくるでしょう。そうなると、SEはシステム技術面と、顧客要求の取りまとめとの両面において、高い調整能力が問われることになります。
藤村●これから企業統合やM&Aが頻繁に行われる時代になりますが、そうなるとメガクラスのシステムを繋いだり、1つのものに統合する機会が増えていきます。いままでの企業の情報システム部門になかったチャレンジが起きてくるのではありませんか? 細川●最近の銀行再編はそうしたシステム統合、ビジネス統合の好事例だと感じています。当社でも大規模なシステム構築にいくつか関わっておりますが、最近の傾向としてはERPなどのパッケージを導入する場合でも統合や改変などを見越して標準的なものを選んだり、実際の統合の際にはシステムのどの部分を活かすのか取捨選択する能力、それから異なるシステム同士を接続するためにEAIのような大がかりな仕組みできちんと実績とノウハウを持っているかというあたりが、勝負の分かれ目になってくるのではないでしょうか。 藤村●IT活用は大企業だけでなく、企業の部門レベルやミドルクラス以下の企業でも必要ですね。そうした中堅企業の場合は、どのような取り組み方があるのでしょうか? 細川●そうした中堅企業向けのソリューションとしては、ASP(Application Service Provider)が一昨年ぐらいに話題になっていたかと思います。いまは少し盛り上がりに欠けていますが、将来的には標準のビジネスサービスをアウトソーシングして使うというのは間違いのない方向性だと感じています。利用がいまひとつ進んでいない背景には、やはり、提供されているサービスのビジネス機能がきちんと絞り切れていないというところにあるように思います。利用する側の方々からすると、自分の業務に合わせておきたいというところがありますので、なかなか抵抗はあるかと思います。 しかし今後、大企業のシステムのあり方がどんどん変わってくるのに対して、中小の企業が一社一社同じように進化するというのは無理な話で、やはり次世代型にシステムが進化することによって、中小はそれぞれのサイズに最適なシステムのあり方というのが明確になってくると思います。
藤村●オブジェクト化、コンポーネント化をいかにシステムに取り込むかが重要になってきていますが、どんなコンポーネントが求められてられているのでしょうか? 細川●旧来のERPのようなアプリケーションも大きな粒度としてはコンポーネントと考えてよいわけですが、それを構成する業務機能要素はコンポーネントではありません。今後、業務機能要素もコンポーネントのような設計が非常に重要になってくると思います。例えば、R/3などは「販売(SD)」「会計(FI)」「購買在庫(MM)」というように、組織や業務ごとに大きな単位では部品になっていますが、中身は非常にカスタマイズしづらい設計です。場合によってはアドオンで拡張する比率が50%を超えてしまうことがあります。少なくとも、こういった業務システムを開発する上での手法としては、オブジェクト指向のコンポーネントとして設計するというところは間違いないと思います。では、受注業務、在庫管理業務を標準的なコンポーネントとして設計できるスキルがある技術者がいるかというと、まだまだ少ないというのが現実です。 藤村●日本の産業の中から使いやすいコンポーネントが出てくるかどうかは、ちょうどシステムを上流工程から設計するようなスキルやナレッジに問われるものとほとんど同列の課題のような感じがするのですが、そう受け止めてよろしいですか? 細川●おっしゃるとおりです。日本の中でも、今回講演でお話しいただけるイーシー・ワン様やコンポーネントスクエア様、富士通様を含めた何社かは、再利用する業務部品とはどうあるべきかということで、非常に活発な活動をしているかと考えています。 藤村●最後に、そういうコンポーネントに早い時期から携わり、事業を推進してこられた翼システム様が持たれているコンポーネント事業、ビジネスに対する期待がありましたらお願いします。 細川●今回の話でBPRや開発生産性の話ばかりでしたが、一方ではユーザビリティ(ユーザーにとってのシステムの使いやすさ)も大切ではないでしょうか。例えば、海外製のパッケージが出力する帳票には、罫線がないなど、非常に味気ないもの多いということがあります。それに比べて、日本のシステムの帳票文化やユーザーインターフェイス文化は、利用者への優しさがあったと考えています。ところが、そういった従来の日本流のユーザーに対する優しさというものを貫き通すと、そこに凝るばかりでなかなかシステム的には進化できないという面がありました。 その点、翼システム様はそういうユーザーインターフェイスを日本の文化に合わせて非常に使いやすくきめ細やかに美しく実現しながら、コンポーネント技術を活かして、R/3などのパッケージやJ2EEなどの新技術と連携するというアプローチをされていらっしゃいます。今回これだけ多くのベンダー様が賛同したのは、まさしくその現れでしょう。われわれシステム・インテグレータも非常に期待大ですので、今度とも協調してビジネスを伸ばしていきたいと思っています。 藤村●基調講演を楽しみにしております。ありがとうございました。
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