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@IT総合トップ > @IT セミナー&カンファレンス > @IT特別協賛 翼システム カンファレンス2002 > Keyman Interview[3] |
いまや情報システムは、企業の戦略を左右する重要な鍵といえます。システム開発者に求められるスキルは、技術はもちろんのこと長期的なビジネスビジョンを見据えたシステム構築が不可欠となっています。いま企業が求めるIT戦略とその課題は何か、業界キーマンに聞き、次代のITビジネスの方向性を展望していきます。
第3回は、運送業界でいち早く戦略的情報システム化を推進し、業務の効率化と顧客サービス向上を実現してきた佐川急便の丸田正明氏にシステム構築の変遷とその現状、さらに今後ビジネスに求められる情報システムについて伺います。
(聞き手:@IT藤村厚夫)
藤村●佐川急便様は、運送業界のリーディングカンパニーとして、常に先端を走り続けていらっしゃいますが、ITをビジネスにどのように組み込み、業務効率、顧客満足度の向上を実践しているのですか?
しかし、当社が取扱う貨物数は一日400万個、年間で11億個を超えます。これは世界2位の数字で、取引企業数でいえば170万社以上です。日々、お客様の要望は高度化しており、これらの膨大なデータを取扱いながら、全国で均一なサービスを提供していくためには、システムの統合が不可欠でした。 そこで、当社では「新・情報化システム計画」を掲げ、1997年ごろから大規模なシステム改革に取り掛かりました。そして、2000年3月、貨物追跡、料金請求などの勘定系、情報系の基幹システムの統合を完了させ、現在、新システム体制のもと「スピードと品質」の確立に取り組んでいるところです。 藤村●約400億円を投じて、システムを一新したとお聞きしていますが、それ以前のシステムと具体的にどう変わったのでしょうか? 丸田●それまでは分散型のシステムでしたので、プログラムの変更時など、システム個々で対応しなければならず、時間もコストもかかっていました。またシングルベンダ環境でしたので、ほかに良い製品があってもそれを取り込むという点で難しい部分がありました。 「新・情報化システム計画」では、ベンダ各社の良い部分を積極的にチョイスできるようなマルチベンダ環境をベースとした一元システムを構築しています。システムを一元管理することで、変更などへの対応も非常に早くなり、また情報の共有化はもちろん、各拠点でのサービスの均一化が可能になりましたね。 藤村●全国で均一のサービスを提供していくためには、ネットワークの強化も重要な鍵になりますね。 丸田●新システムへの移行に伴い、プロトコルをTCP/IPに統一しました。現在、支社間は1.5〜9Mbps、営業店間は64Kbpsから512Kbpsの通信環境を実現しています。例えば、貨物追跡システムの場合、北海道から九州まで、どの営業拠点でも4秒以内で照会できます。お客様は、どこの営業所に問い合わせてもすぐに追跡でき、しかも同じ品質の応対を受けられるわけです。TCP/IP環境はサービスの均一化という面で効果を上げていますね。
藤村●マルチベンダ化という部分では、帳票システムに翼システムさんのパッケージ製品「Super Visual Formade」を活用されていますね。独自のアプリケーションの開発という選択肢もあったのではないですか? 丸田●これまで自社開発してきた歴史がありますから、パッケージへの抵抗はありました(笑)。しかし、ハードウェアはもちろん、ソフトウェアについてもパッケージ製品のメリットは最大限に活用していこう、というスタンスで取り組んでいます。 「Super Visual Formade」の利点は、帳票の変更が容易にできることです。例えば、出版社などの場合、各社が同一箇所に送付するケースが多い。ある送り先に変更が生じた場合、それまでは個々にプログラムを修正する必要がありましたが、現在ではレイアウトを修正するだけで各社に対応できます。開発工数が以前と比べて1/3程度で済みますね。こういったメンテナンス性の良さを評価しての導入でした。
藤村●新システムが本格稼動して約2年、顧客のニーズはさらに複雑化していると思いますが、現在の課題としてはどのような点があげられますか? 丸田●一昨年の「新・情報化システム計画」では、内部のプラットホームを整備した段階です。第2フェーズとして、今後は顧客とのインターフェイスの部分をより強化していきたいですね。収集したデータを共有することはもちろん、分析を加え、個々の営業マンのマーケティングに活用できるような仕組みが求められますね。今日では個々のお客様の声が非常に重要になってきています。そういった要望に対応できるような、いわゆるOne to Oneマーケティングに反映できるシステムづくりですね。 藤村●CRMをはじめ、顧客情報に汎用性をもたせることは、いまどの企業でも抱えている課題ですね。その点では、創立以来、BtoBに強い佐川様の場合、これまでのノウハウが十分活かせるのではないでしょうか? 丸田●ご承知の通り、いま企業の投資に関する考え方は非常にシビアで、投資効果もより強く求められます。こうした環境下、アウトソーシングの需要が高くなります。例えば、それまでは自社で物流部門を抱えたところが、縮小して外部委託するようなケースが増えています。そういった場面では、運送のプロとしての弊社のノウハウとシステムが十分に活かせると思います。 すでに新システムでは、前述のとおり170万社を超えるこれまでの実績をもとにパターンとして組み込んでいます。例えば、企業にフィードバックする貨物状況データのフォーマットなどです。また、こうした企業個々のサービスをTCP/IPを通じて、全国で提供できることがわれわれの強みといえますね。 藤村●顧客とのインターフェイスの部分では、新システムをベースとして、顧客向けのインターネット対応の新物流サービス「e's(イーズ)」を立ち上げていらっしゃいますね。
丸田●ここでは、インターネット上のショッピングモールの出店者に対して、商品の配送と代金回収、さらに当社の流通センターを利用した在庫管理など、物流に関わる業務全般を請け負っています。インターネットを介してASP(Application Service Provider)のような形でシステムを提供しているわけですが、出店者はインターネットを通じて、商品の出荷依頼や配送指示を行うことはもちろん、配送状況についても注文番号で確認できます。 代金回収に関しても、現金による“代引”に加えてクレジットやデビットで決済できるeコレクトサービスをも業界に先駆けて実施し、代金立替の付加価値を新たに加えています。これはWeb上でショップを展開するような小規模な事業者の場合、「早く資金を調達したい」というニーズが強いためで、事業者の確実な資金回収をサポートしていくことも、当社が提供できる付加価値サービスの1つだと捉えています。
丸田●技術の進歩が激しいので、単に情報システムだけではなく、営業部門と一体になって、ビジネスを創造していけるような体制が求められるでしょうね。技術に惑わされないような「総合力」とでもいえばよいでしょうか。 当社も「スピード」を第一に今日まで邁進してきましたが、これからは「スピード+α」、つまり「品質」という付加価値の部分で精度を上げていく必要がありますね。ネットワークをフルに活かした営業マンのスキルアップやサービスの平準化はもちろん、お客様の業種や規模に合わせて、よりきめ細かな対応ができるようにしなければならない。 そのためには、各ベンダの強い分野を活かせるような自由度の高いシステム環境の整備が今後も核となります。そういった意味でも翼システムさんをはじめ、各ベンダさんと良好なパートナー関係を築きながら、より良いソリューションを提案できればと願っています。 藤村●最後に翼システムさんをはじめ、各ベンダに期待することがあれば、お聞かせください。 丸田●ユーザーに視点を置いたパッケージが欲しいですね。技術が高度化するに従って、多くの製品がシステマチックになっていく傾向があります。これではユーザー側の技術者が理解するのに時間がかかり、コストもかかってしまいます。技術的に高度になってくる分、よりユーザーフレンドリーなツールが求められるでしょうね。技術者にもエンドユーザーにもやさしい製品。またOSなどのバージョンアップへの迅速かつ継続的な対応も期待したいですね。 藤村●ますますのご発展を期待しております。カンファレンス当日はさらに具体的な現場の情報システムに携わられてきたご経験ならではの具体的なヒントがうかがえるとのこと。今日はありがとうございました。
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