Database Watch 2月版 Page 2/2
日本法人を立ち上げた“黒船”MySQLの本気度
加山恵美
2006/2/14
■ハチの次はヘビか、毒を持つものが好き(?)なDB2
DB2の次期バージョンはコード名「Viper」です。2005年11月の「XML 2005 Conference」にてIBMデータベースサーバ担当副社長のボブ・ピキアーノ(Bob Picciano)氏がDB2 Viperを披露し、ネイティブXMLデータ管理とリレーショナルデータ機能を併せ持つ点を強調しました。サービス指向アーキテクチャ(SOA)とXML機能がより強化されたものになりそうです。
ところでViperという名前ですが、由来が気になります。違うかもしれませんが、1988年のアメリカ映画に同名の作品があります。邦題は『バニシング・チェイス』です。テロ対策作戦の秘密を暴こうとして死んだ兵士がいて、その妻が命を懸けて謎を追うというストーリーです。その秘密が「コードネーム・ヴァイパー(毒蛇)」だとか。あまりDB2とは関係なさそうですが、毒を持つ動物でハチよりも強そうなところが当たっているような、当たっていないような。
IBM、実は虎視眈々(たんたん)と敵をにらんでいるのかもしれません。いやそれよりも「にらみ」をきかせているのはマイクロソフトもです。これまでも競合他社からの移行を支援する各社の取り組みを報じてきましたが、マイクロソフトがOracleからの移行支援をさらに強化しました。プレスリリースによると、マイクロソフトは1月25日よりOracle DatabaseからSQL Serverへ移行するためのツール「SQL Server Migration Assistant for Oracle 日本語版(SSMA for Oracle)」をWebから無料で提供しています。
Oracleの反撃やいかに。その答えは3月1日から始まる「Oracle OpenWorld Tokyo 2006」で分かるかもしれません。
- Oracle OpenWorld Tokyo 2006
(3月1〜3日 東京国際フォーラム)
■コミュニティからの声も聞こう
ギラギラとにらみあう話が続いてしまいましたが、データベースはそんなに殺伐とした世界ばかりではありません。1月25日に開催された「PASSJ Conference 2006」では、コミュニティで中心的な役割を果たしているメンバーが舞台に立ちました。
ソフトウェアに関する講演ではベンダ関係者からの発言が多くなりがちですが、たまにはベンダとはまた別の立場の声を聞くことは有意義なことだと思います。例えばPASSJ Conference 2006では技術解説をするかたわら「ここの部分はヘルプには少ししか記述がありません。そういうときはヘルプのフィードバック欄で遠慮なく悪い評価を付けてマイクロソフトに送信しましょう」と登壇者が話していたりしました。これは嫌がらせの指令を出しているわけではありません。より良い製品にするために必要な意見は遠慮なく表明しようということです。
こうした忌憚(きたん)のない発言は純粋にベンダが実施するイベントでは耳にできません。ベンダの声と使い込んだユーザーの声、どちらがいいとはいいません。両方ともバランス良く聞くとバランスの良い情報が得られ、その微妙な違いにほほ笑むのもまた楽しいことでしょう。
■日本PostgreSQLユーザ会はNPO法人に
オープンソース勢は組織力を強化するニュースが続いています。本連載2005年10月号では日本PostgreSQLユーザ会がNPO法人化に向けて準備していると触れましたが、いよいよ始動です。
もともと日本PostgreSQLユーザ会(JPUG)は1999年7月に設立され、イベントの開催やドキュメントの翻訳・出版などさまざまな活動を行ってきました。よりいっそうの社会的認知と活動の自由度を得るため、昨年から法人格を持つべく準備を進めてきました。特定非営利活動法人(NPO)の設立申請と認証を受け、2005年12月20日に法人登記申請を行い、あらゆる処理が2006年1月には完了したようです。サイトもリニューアルして、2月からは任意団体の日本PostgreSQLユーザ会から特定非営利活動法人の日本PostgreSQLユーザ会へと新しい一歩を踏み出しました。サイトを飾るカメさんがまぶしいです。
さっそくNPO法人として初めてのイベントが開催されます。PostgreSQLグローバル開発チームコアメンバーが来日してPostgreSQL 8.1の解説をするそうです。
- PostgreSQL
Conference 2006
(2月17〜18日、東京・品川イーストワン会議室)
■MySQLは日本法人を発足
一方、MySQL側はMySQL株式会社が誕生しました。本家となるスウェーデンのMySQL AB社が100%出資する日本法人です。偶然にもPostgreSQLユーザ会のNPO法人と同じ2月1日からスタートを切ったというから驚きです。
日本法人設立の知らせを受け、コミュニティではお祝いのオフ会が企画されているのではないでしょうか。まだMySQL株式会社はできたばかりですが、今後はコミュニティとも親交を深め、より積極的に日本のMySQL市場をけん引してもらいたいですね。
■今年は火の鳥 2.0も飛ぶ?
オープンソースRDBMSというといつもPostgreSQLとMySQLの話をすることが多く「両雄」などという表現まで使っているのですが、「Firebirdの記事が初回以外は出てきていないので残念」というご意見が寄せられました。確かに本連載初回では「Firebird」もウオッチすると宣言したのに期待に添えず申し訳ありませんでした。オープンソースもご三家だったのですね。
軽くFirebirdの歴史を振り返ると、起源は米ボーランド社の「InterBase」にあります。2001年1月にInterBase 6.0がオープンソースとして公開されたところから有償版と無償版へと分岐します。この無償版ソースコードが公開された時点からFirebirdプロジェクトが発足します。従って、InterBase 6.0とFirebird 1.0は機能的にはほぼ同じです。
2004年にはFirebird 1.5が登場し、これが現時点で最も安定して使えるバージョンです。2006年1月24日には1.5.3がリリースされました。次期バージョンは2.0で、現時点ではベータ1でテスト中ですが2006年4月ごろには正式版が出る見込みだそうです。今後はもう少し詳しく追ってみていきたいと思います。
ではまた来月、お会いしましょう。
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連載 Database Watch 2月版 日本法人を立ち上げた“黒船”MySQLの本気度 |
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1 ・ベンダRDBMSでExpressの乱 |
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