[UMLツールレビュー]
UMLモデリングツール、使いやすさの鍵とは?


有限会社メタボリックス
山田正樹
2003/6/24

リアルタイム・コラボレーション機能が特徴
Konesa Client Evaluation 1.1c

製品名: Konesa Client Evaluation 1.1c
ベンダ: オージス総研
URL: http://www.ogis-ri.co.jp/otc/products/konesa/

多様なライセンス形態を提供するKonesa

 第2弾はKonesaである。米CanyonBlueが開発、オージス総研が日本国内で販売している。

 オージス総研から送っていただいたのは30日評価版というもの。Konesaの大きな特徴としてリアルタイム・コラボレーション機能があるが、評価版は「Hosted版」だった。これは用意されているサーバにデータ(つまりモデル)を置き、ツールは、このサーバのフロントエンドとして機能する(つまり機能の半分はサービスとして提供するのである)。ほかにSelfHosted版(自分でサーバを立ち上げられる)、StandAlone版(普通のUMLツールと同じ)がある。Hosted版やSelfHosted版でも、オフラインモードで起動すればおそらくStandAlone版と同じになるのだろう。

 価格は、StandAlone版が19万8000円。2年目からはサポート費用が年に4万円。Hosted版は1人1カ月2万円。SelfHosted版は、サーバが150万円、クライアントは12カ月契約で1人4万8000円/年である(3カ月、6カ月契約もある)。時間制限フリーのバージョンは、1人9万6000円(2年目からはサポート費用が2万円)。ただし、自分でサーバを立ち上げるためにはOracleが必要である。このようなさまざまなライセンス形態は、多様なニーズが求められる昨今の現状を考えると非常に適しているのではないだろうか。
 
 送られてきたCDにはインストーラと、PDFのインストールマニュアル、ユーザーズ・ニュアルが含まれている。「インストールマニュアル」「ユーザーズガイド」「Konesaガイド」は日本語になっているが、「コード生成マニュアル」と「コマンドリファレンス」は英語版のみである。ファイル形式は独自のバイナリフォーマットである。XMIでも書き出せる。

インストールは5分で終了

 インストールは、必要な再起動時間も含めて約5分で終了した。インストール直後のインストールフォルダの容量は59.1Mbytesだった。「インストールマニュアル」を読むと、通常は、サーバに接続するためにproperiesファイルを自分で編集するのだが、今回の場合はあらかじめホスト名が設定してあった。

 ログインすると、モデルを作成することができる。今回のレビュー環境は上り512kbps、下り1MbpsのケーブルTVインターネット接続だったが、この時点ではまったく違和感はない。だが、使い始めると、少々のもたつき感があった。この理由を探ってみる。本体はexeになっているが、サーバとの通信はJavaのServlet(要はRMI)を使用しているようだ。実装のほとんどはJavaではないだろうか。かなり細かい粒度で通信していると思われる(そうでなければ、リアルタイム・コラボレーションはできないだろう)。なお、Konesaを動かしているマシンはNATルータ経由で外につながっていたのだが、問題はなかった。

リアルタイム・コラボレーション

 動作面で多少気になる点を指摘しておく。ある要素から別の要素に関連を引いてから確定するまでに4秒くらいかかることがあった(この場合はコラボレーション機能をoffにした)。モデルの読み込みにも多少時間がかかる。1枚の図、数個の要素だけのモデルでも15秒。もちろん、ローカルのファイルシステムにモデルファイルを保存することもできる(ダウンロードという)だが、この場合はもちろんコラボレーションはできない。

チャットを活用して共同作業を行うことができる(クリックすると拡大)

 リアルタイム・コラボレーションは、図を編集しているだれかがそれを変更すると、同じ図を編集している別の誰かの画面がほぼ即時に変更される。これは純粋に面白い。この機能は遠隔作業を行う場合、あるいはチームで同じモデルを作成する場合に威力を発揮するだろう。ただし、変更不可の作業を独自に行っている場合には、機能制限を設定する必要がある。

 ネットワークを使っているとやはり機密性が気になる。SSLに対応しているため、通信経路上はある程度セキュアな状態を保っているが、Hosted版の場合はサーバ上でどう管理されているのか、サーバ自身がセキュアかどうかは大きな問題である。

快適な機能、気になった機能

 さて、 ローカルな世界に戻ろう。ウィンドウ構成はRoseとほぼ同じだが、一番下にチャット(ブルティン・ボードと称する)やログインしている(つまり同じモデルを作成している)ユーザーを表示するためのウィンドウがある。起動時のメニュー数は8、トップ・レベルのメニュー項目数は約65。機能が多い割には比較的シンプルである。

 図を描く段階で気になった点を指摘する。例えば、新しく図を作ったとしてもそれだけでは表示されず、さらにダブル・クリックしなければならない点。ユースケースの長い名前が“…”で省略されてしまう点。確かに、縦横比が一定なので、名前を全部表示させる場合には、大きな大きなだ円になってしまう。これを回避するには、一度右クリックで「オートサイズ」すればいい。さらに、ダイアログの表で(例えばメッセージのパラメータ一覧)、ある行を消したとしても、その場では消えずにダイアログを閉じるときに初めて確認され、消される点。追加したいときにも、一度OKしてダイアログを消してからでないと、詳細設定ができない点など。プロジェクトを2つ以上同時に開くこともできない点も気になった。

 ほかにはない快適な機能も、もちろんある。ある要素を削除すると、その場では「削除」マークが付き、後で「パージ」したときに初めて消えるのだ。「削除」マークが付いたものは、後で選択して復活させることもできる。これはコラボレーションの実現上必要な機能だろう。 「何を消したのか」が見えているのは、確認作業を行う上で非常に有効だろう。ただし、「パージ」するためにはコラボレーション機能をoffにして起動しなければならない。ある要素を中心に、その要素に関連する要素を集めた図を作成できる点も特筆ものだ。

ダイアグラム作成

 KonesaはUML1.3に準拠しているが図の描き方は、ほかのツールと比較して独特のものがある。例えば、関連がないクラス間では、シーケンス図上でもメッセージが送れないケース。確かに、標準の仕様を厳密に判断した場合、関連がないクラス間ではメッセージは送れない。だが、1モデラーとして見た場合、毎回必ずしも関連すべてが決まってから、メッセージを送るわけではない。また、アクティビティ図/コラボレーション図は、クラスの下にしか作れないようだ。さらに、状態チャート図で複合状態/単純状態をすぐに変換できるのは便利だが、複合状態に描いてあった中身は全部消えてしまう。複合状態の中身を別の状態チャート図に描くことも不可だった。

 このように、あるツールでは何ができて、何ができないのかということは、実際に試してみないと分からない。

バージョン管理、レポート、印刷

 バージョン管理の機能は、デフォルトで組み込まれている。何の準備もいらないのはうれしい。ただしチェックイン(Konesaではベースラインという)できるのはそのモデルのオーナーという特別の人で、コラボレーションがoffのときだけだ。もう1つの利点は、モデルのdiff(差分)を取れること。ただし、diffを取るときには、現在開いているモデルは閉じなければならない。diffは特別なモデルとして図上にマークが付いて(例えば、追加された要素にはR+)示される。要素の位置、大きさの変更も差分として反映される(色、線の太さ、フォントの違いは無視するらしい)。「バージョン管理」→「履歴」からではなく、「ツール」→「モデルディフェレンサ」を起動した場合にはマージもできる。

 もちろん、レポートを作成することもできる。UML図も挿入され、非常にわかりやすい。だが、ファイル名は固定で、形式は変更できない。レポートは全体で1つのHTMLファイルに書き出される(今回の場合4.4Mbytes!+jpegファイル多数)ことになる。

 印刷はプレビューを経由すると、「背景を印刷しない」や「1ページに印刷」などヘッダ/フッタ制御ができるが、直接印刷しようとすると1枚の図がいきなり4ページにわたって印刷されて驚くこともある。いずれにしろ図は1つずつしか印刷できないようだ。図あるいは図の選択部分をjpegファイルに落とすこともできる。

リバース・エンジニアリング

 今度はリバース・エンジニアリングをしてみる。オンライン・モードでは不可。「ツール」→「Java」→「リバース・エンジニアリング」で何の設定もせずにリバースしてみる。 途中で「どのクラスは関連にして、どのクラスは属性にするか」と聞かれるが、このような質問にその場で答えるのは難しい。25秒で終了、速い。エラーにはならなかった。Roseと同様、図も作られない。デフォルトでJDKのクラスは無視してくれるようだ。JDKのパッケージには<<SUN_JDK>>というステレオタイプが付く。

 今度はこれを、フォワード・エンジニアリングしてみよう。53秒。元のソース・コードとは別の場所も指定できる。コードには大量のアノテーション(タグ付け)が入っている。ant buildは成功した。

 ところで、Konesaには拡張性はほとんどない。基本的なモデリング作業を行う、という用途を前提に設計されているためか、モデリングに必要な機能はひととおり揃っている。そのため、特に問題はないのだが、モデリング上級者の“わがまま”にどこまで応えられるかが気になる。各要素に対してステレオタイプ、タグ付き値、制約は定義できるが、定義できるというだけで、アイコンは設定できず、ステレオタイプのセットを保存することはできない。制約の中身を書くこともできない。APIも公開されておらず、プラグインのメカニズムもなさそうだ。モデリングを行うという用途は十分満たしており、余計な機能拡張は必要としないユーザーも多いため、これはこれで1つのツールのあり方だろう。ただし、深くKonesaを使い込もうとするユーザーに対しては、さらに細かいサポートを行っていく余地があるのかもしれない。

オージス総研のコメント
 記事を拝見させて頂きました。なかなか辛口の評価内容となりましたが、ユーザー様のご意見として、今後の製品改良に役立てさせていただきます。今回ご指摘いただいた使用感についての問題は弊社・開発元ともに認識しており、次期バージョンにて大幅に改善される予定です。

 なお、記事中の操作性に関する説明について補足させていただきますと、例えばダイアログの行の追加・削除は、ダイアログ中の [適用] ボタンを押下することでも確定されます。また、次期バージョンではモデルにアクセスするためのJava API、メニューの拡張、ステレオタイプに対するタグ付値の割り当てなどの機能拡張も可能になる予定です。

 Konesaは2001年に発売を開始した UML モデリングツールとしては後発のツールです。文中でも取り上げて頂いたモデル共有・アクセス権限設定・バージョン管理等々については、他ツールにない機能として多くのお客様から共鳴をいただいております。

  今回の記事では単独ユーザでの評価となっていますが、この機能は複数ユーザによりモデル共有を行うことで真価を発揮します。また、記事中では、多少のもたつき感があるとのことでしたが、パフォーマンスはネットワーク環境や PC 環境に依存する部分も少なからずあります。実際にKonesaが他ツールより軽快だというお声も多数頂戴しておりますので、こちらについては読者ご自身の環境にてお試しいただければ幸いです。ただ今評価版を配布しておりますので、Konesaに興味をお持ちになった方は弊社(オージス総研 UML ソリューション部)まで、ご連絡ください。

 なお、次期バージョンで追加される予定の機能は、コメント冒頭で述べたJava API以外にも、小規模チームを対象とした新しいサーバ製品、JBuilderとの統合などが予定されています。この次期バージョンは、ソフトウェア開発環境展[SODEC](2003年7月9日開催)でご覧頂けます。コストパフォーマンスに優れ、チーム開発をもっとも良くサポートするモデリングツールをぜひ、ご自身の目でお確かめください。

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INDEX
UMLモデリングツール、使いやすさの鍵とは?
  レビューの基準
  Rational Rose Enterprise Edition
Konesa Client Evaluation 1.1c
  Pattern Weaver Standard Edition 1.1
モデリングツールから統合開発環境へ
  WithClass 7.0J Enterprise Edition
Describe Developer for Sun ONE Studio 4
  Together Control Center 6.0.1
オープンソース、無償モデリングツールの実力派
  Jude 竹1.1
  Enterprise Architect 3.51 Professional Edition
  Poseidon Community Edition 1.6.0_01
  まとめ

IT Architect 連載記事一覧


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