[UMLツールレビュー]
UMLモデリングツール、使いやすさの鍵とは?
有限会社メタボリックス
山田正樹
2003/6/24
軽快な動作とユニ−クなプラグイン Pattern Weaver Standard Edition 1.1 |
製品名: | Pattern Weaver Standard Edition 1.1 |
ベンダ: | テクノロジックアート |
URL: | http://www.tech-arts.co.jp/product/product.html |
■基本的にダウンロード販売
3つ目のツールはPattern Weaverだ。製品名は「パターンを紡ぐ人」という意味で、発売元であるテクノロジックアートの代表取締役社長 長瀬嘉秀氏はパターンを積極的に推し進めている人だ。クラス図に、クラスとしてパターンを作成せず、パターンとしてパターンを利用可能にする機能があるなど、他ツールとの差別化点がみられる。
送られてきたのはCD-ROMだが、上記Webサイトによれば、現在はいわゆるパッケージ販売はしておらず、基本的にダウンロード販売のみである。というのも、Version 1.1はマイナーアップデートであり、データのみの(ダウンロードで)販売なのである。ただし、企業によっては納品形態の都合上、パッケージも必要なことがあるため、購入者が「パッケージ不要」と言わない限り、パッケージも併せて送付しているという。購入するには、電子メールで申し込み、銀行に入金し、ダウンロードするという仕組みである。これは少し煩雑な仕組みかもしれないが、同社によれば相談次第で柔軟な対応も可能だという。以前は、フル機能バージョンのコミュニティ・エディションがダウンロードできたのだが、付録CD-ROMか直接担当者にメールを送ってダウンロードするようになっている。コミュニティ・エディションを使っていた人はけっこういたと思うのでぜひ簡単にできるダウンロード配布を再開してもらいたいところだ。製品版は9万5000円で価格設定も非常にシンプルである。
■軽量GUIフレームワークで軽快な動き
さて、実際にインストールをしてみると、インストールにかかった時間は約4分。インストール直後のフォルダ・サイズは19.2Mbytesだった。起動にかかる時間は約7秒。割と軽い。Pattern WeaverはJava(JDK 1.1)で書かれているが、Swingではなく自前の軽量GUIフレームワークを使っているという話で、Javaのデスクトップ・アプリケーションとしてはかなり軽快な動きをする。
起動直後の時点でメニューは7つ。トップレベルのメニュー項目はおよそ40個。ウィンドウ構成はRose風だが、別ウィンドウとして「パレット」が表示され、ダイアグラム・エディタの下に「ワークスペース」というビューがある点はほかのツールにはない工夫点である。
デフォルトパレット(クリックすると拡大) |
さっそくモデルを描いてみよう。反応は速いが、要素に名前を付けるときにその都度、ダイアログを開かなくてはいけない。ダイアログは、「見栄えに関するもの」「論理的な構造に関するもの」などさまざまな要素が一緒になっている。enterしても閉じないので、それぞれマウスで「閉じる」「適用して閉じる」などを選ぶ必要がある。このあたりの操作感は少々不便だと感じた。
図形要素をダイアグラム・エディタ上に置くには、Rose風の操作感である「クリック&クリック」ではなく、ドラッグ&ドロップで、MacOS風のダイレクトマニュピレーション(操作と結果が物理的に直接対応したGUI作法)に慣れた身には、使いやすいと思う。ただ、人によってはドロップするまでマウスを押し続けるのが苦痛という人がいるかもしれない。
図形要素には大きさを変えるポインタ(8カ所)のほかに、線を引くためのコネクタ(12カ所)があり、ダイレクトマニュピレーションで線を引くことが可能。ALTキーをクリックすれば、コネクタにカーソルを合わせなくても線を引くことができる。関連の引いてあるコネクタをクリックし、他のコネクタにドラッグすることで、再配置も可能。
複数のモデルを同時に開くことはできないが、ダイアグラム単位なら可能。関連性のあるモデルの場合、パッケージを利用することで、うまく利用できる。
Pattern Weaverの特徴はパレットやワークスペースに要素をいくらでも置いておけることだろう。ダイアグラム間のエレメント(モデル要素)移動や、パレットやワークスペースへの移動(こちらの場合はコピー&ペースト)は右クリックでドラッグすることで、ドラッグ&ドロップの操作が可能である。ダイアグラム・エディタに描いたほぼ任意のモデル要素を置いておくことができる。ワークスペースは自動的に保存される代わりに1つだけ、パレットは保存が必要だが名前を付けて複数作れるという違いがある。これはよいアイデアだ。なお、パレットにはパターンを登録でき、作業を進めるうえで非常に便利である。
ダイアグラムから別のダイアグラムにコピー&ペーストすると、コピーはされるがコピー元とコピー先は別物になってしまう。つまり、1つのモデル要素が複数のダイアグラムに出現することはあり得ないのだ。僕のようにあるクラスに対してどういう異なる見方ができるか(マルチプルビュー)というようなモデリングをしている場合には、つらい。ただし、今後、Namespaceを利用してモデル要素を管理できるようになるという。
■UML1.4準拠だが、いくつか制約がある
Pattern Weaverは、UML 1.4準拠だが、それぞれのダイアグラムでは、いくつか制約がみられた。 例えば、アクタとアクタの間には関連は引けずに汎化しか引けない点、アクティビティ図の遷移にガードが描けない点、シーケンス図で生成/廃棄のメッセージが書けない点など。シーケンス図でアクティべーションがメッセージと関係なく自由に動かせてしまったり、シーケンス図のメッセージや状態チャート図のアクションも引数を含めて単なる文字列としてしか解釈されなかったりする。逆に言えば、アクティビティ図にパッケージやクラス、コラボレーションが描ける点は評価できる。
アクティビティ図の作成シーン(クリックすると拡大) |
ファイル形式は.mdlと.dlg。.mdlは、Roseのファイルと同じ拡張子だが特に関係はなく、Javaオブジェクトをシリアライズしたもののようだ。一方.dlgはダイアグラムを単独で出力したときのファイル形式であり、これもJavaオブジェクトをシリアライズしたものらしい。XMIへの書き出しはプラグインを追加することで可能だが、書き出されるのはクラス情報だけのようだ。
印刷は図1枚ずつしかできないが、図ごとにjpeg、PDFに変換することは可能。一括して出力する機能(jpeg、PDF、WFM、Petal、dlgそれぞれ共通)は現在開発中ということらしい。ビットマップ系データの場合、どうしても解像度やデータサイズが気になるのだが、ベクター系データではPDF以外、定番のフォーマットがないため、PDF対応はユーザーにとって大きな利点となる。ちなみに、Pattern Weaverで出力したPDFは、Acrobatで編集することも可能だ。
■軽さを追求した姿
Pattern Weaverのコンセプトはともかく「軽い」ということである。バージョン管理も、ラウンドトリップ・エンジニアリングもない。これはこれで潔い割り切り方といえるだろう。「ツールの制約にとらわれることなく快適にモデリングできるようにすることを目的としたツール」(テクノロジックアート)というコンセプトを追求した結果の姿だといえる。
その半面、拡張性が高く、プラグインを活用すれば大幅なカスタマイズが可能である点がユニークだ。プラグインはリモートで(現在は開発元であるFoundataoからいくつか提供されている)ダウンロードできる。Javaの面目躍如といえよう。ただし、プラグイン作成のためのドキュメントはなく、またプラグイン作成のためにはライセンスが必要である。
プラグインマネージャ(クリックすると拡大) |
プラグインの1つ「xumlet」が面白い。これは、モデルをWebに公開できるプラグインだ。Javaアプレットを使っており、Web画面の中である程度モデルを編集できる。だが、変更は保存できない。現在はビューアーとしての役割しかないのだ。実は、このプラグインはある機能のベースなのだが、詳細は未公開らしい。アプレットのJarサイズは、750Kbytesほど。もちろん、そのほかにも、いくつか有効なプラグインが提供されている。
テクノロジックアートのコメント
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Pattern Weaverは非常に軽快な操作性とマルチプラットフォーム、パターンの利用を可能にしたコンパクトなUMLモデリングツールです。新規機能はプラグインとして提供されます。開発の上流工程でのモデリングでは、実装を意識することなく対象システムをどうUMLで記述するかが重要です。直感的な操作を実現するPattern
Weaverは、開発者にツールの制約に捕らわれることのない快適なモデリング環境をご提供します。また、UMLの教育用ツールとして各企業様研修・各種教育機関でもご利用頂いております。 記事中にもありますが、現時点でラウンドトリップ・エンジニアリングの機能は含まれておりません。この機能はまだまだ各ベンダが各々の方式で行っていますが、開発者の方々が望まれる性能まで達していないのが実状です。弊社では、OMGで仕様化が進められているMDA (Model Driven Architecture)の確定で、モデルから特定の実装技術にマッピングする仕組みが標準化されることにより、この機能がシステム開発において有効になると考えます。従って、Pattern Weaverには、この時点での機能追加を検討しています。 また近々、Pattern Weaverで利用可能な各種パターンを含むパターンライブラリを弊社HP(http://www.tech-arts.co.jp/top.html)で公開予定です。こちらは随時新規に追加していきます。是非ともご利用下さい。 |
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