[UMLツールレビュー]
オープンソース、無償モデリングツールの実力派
有限会社メタボリックス
山田正樹
2003/9/11
連載のまとめ |
3回にわたり、9つのツールを評価してきた。有償の商用ツールの多くは、評価期間も短く、もう少しじっくりと評価できればよかったのだが、という後悔が先に立つ。最初はUML-jpメイリング・リスト参加者の協力も得て、UMLツールのベンチ・マークになるような指標を確立できればと考えていたのだが実際にツールを評価してみると、ツールごとにレベル、ターゲット・ユーザー、目的などまちまちで、まだしばらくベンチ・マークの確立は難しいことを思い知らされた。まだまだUMLツールというものが未成熟ということなのかもしれないし、ソフトウェア開発の、しかも上流部分を支えるツールには(UMLという標準があっても)、本来このような多様性がつきまとうものなのかもしれない。
個人的には、現在使っているツールから、今回評価したツールのどれかに乗り換えるかと聞かれたら答えはおそらくノーだ。もちろん魅力的なツールもあるけれど、いままでせっせっとメンテナンス・フィーを払い続けてきた(本人は「育てた」つもりでいたりするのだが)ツールを捨てるところまでには至らなかった。特に、無償のツールの中のいくつかは(無償ということも含めて)かなり水準に達しているものがある。私がツールに期待する条件の1つとして、「UMLメタモデルがよく見えるツール」というかなり特殊な条件があるのだが、それさえなければ普通のプロジェクトでモデリングするだけならば使ってみたいものもあった。
今回の評価の中心になったのは「使いやすいか」ということだ。ゆえに、あえて表形式の横並び比較ではなく、若干の偏りは承知のうえでレポート形式で評価を記述した。なぜなら、UMLツールはもうすでに「とにかく絵が描けさえすればいい」という段階をとっくに通り越し、「機能が多ければよい」という段階も経ながら、「実際の仕事でUMLモデルを快適に描き、楽しく推敲(すいこう)できるか」という段階にきていると考えたからだ。そういう意味で、レポート中ではあえてツールの利点ばかりを取り上げるのではなく(それはツール・ベンダのWebサイトを見ればよく分かる)、仕事に使っていて気に障る点を多く取り上げた。これもツール・ベンダ各社にとっても、現役のUMLモデラーにとっても、未来のUMLモデラーにとっても、UMLツールをよくしていくために必要な道だと思っている。
正直言って製品評価は非常に大変な作業だったが、筆者にとってそれなりに興味深い体験だった。読者の皆さんにも単なる製品評価以上の何かが伝わり、役に立つことが少しでもあれば望外の喜びである。
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