最終回 ポイントは? コストは? 事例に見る「ホントのところ」
株式会社野村総合研究所
田中 穣
首都圏コンピュータ技術者株式会社
工藤 一樹
青柳 隆
2009/7/28
アプリケーションレイヤのニーズをOSSで満たす
システムを構築した後に実際にユーザーが求めるのは、基盤の上のアプリケーションです。技術者ならば、テスト環境が欲しいなどの理由で基盤環境単体を求める場合もありますが、利用する人の多くは、会社のセキュリティポリシーを満たすための仕組みや、運用などについては考えたくありません。やりたいことを実現するための環境を素早く、簡単に用意して、本業に集中したいと思っています。
今回の事例における付加価値のポイントは、多くのユーザーが求めているアプリケーションレベルの機能を、会社のポリシーを満たす形であらかじめ用意しておくことでした。多くの人が利用したいと思っている機能をあらかじめ用意することによって、本業に費やす時間を増やすことができます。
以下に、今回用意したアプリケーションレイヤの仕組みを紹介します。これらはゲストOSをクローニングすることで複製もできますが、今回はリソースの有効利用のため、テンプレートから複数インスタンスを立ち上げることができるような複製シェルを開発し、利用しています。
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表2 アプリケーションレイヤのニーズ |
■1. 共用レポジトリ
開発系、非開発系を問わず、最近では「レポジトリ」を利用する機会が多くなってきています。単に業務上のファイルを共有するだけであればNASやファイルサーバでこと足りますが、バージョニングをしたり、内部統制のためのアクセスコントロールや監査証跡を取得するには力不足だからです。
しかし、レポジトリをいざ構築しようとしても、各チームで構築するのは大変なのはもちろん、各チームに任せては本当にセキュリティ基準を満たしているのかどうかも管理できません。また、部署ごとにいくつものレポジトリを使うのであれば、毎度サーバを用意するというのもコスト的に耐えられない場合があります。
そこで、仮想化環境を利用して内部統制の取れたレポジトリサービスを提供すれば、利用するユーザーも多いのではないでしょうか。レポジトリ機能としては、オープンソースでは「CVS」「Subversion」などが有名です。
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表3 共用レポジトリ |
■2. 共用課題管理
別名BTS(Bug Tracking System)とも呼ばれますが、タスクやマイルストーン管理を含む課題管理のシステムです。
チームでの課題管理を行うには、ホワイトボードを使ったアナログなものにはじまり、MicrosoftのExcelを利用して管理されている方が比較的多いでしょう。しかし世の中には、システム化されたツールもあります。
プロダクトによっては上で紹介したSubversionなどと連携(コミットログから自動で課題を結びつける仕組み)できるようなBTSも存在します。取り掛かりの手軽さでは、ホワイトボードやExcelにはかないませんが、逆にはじめから環境が用意されていたらどうでしょうか。単なるステータス管理だけではなく、高度な検索、ワークフロー、通知機能などが利用できたほうがうれしいのではないでしょうか。プロダクトによってはプロジェクトの追加、派生時に課題の移行や組織変更にも対応できるものもあります。
BTSではOSSで有名なものが数多くありますが、今回はSubversionとのセットでよく利用される「Trac」と、最近利用が拡大してきている「Redmine」を紹介します。
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表3 共用課題管理 |
■3.共用ポータル(CMS)
SNSやブログを筆頭に最近注目を集めているのが、ポータルやCMS(Contents Management System)です。
情報共有やモチベーション管理という意味でも、チームに1つポータルがあると生産性が大きく向上するという例もしばしばあります。グループウェアにも近いですが、チーム内でスケジュール共有、情報共有、ワークフロー、アンケート、状況数値の視覚化などがブラウザ操作で簡単にできることでコミュニケーションが活性化され、チームの雰囲気や生産性が向上します。もし、これらをメールや口頭で行っているならばなおさらです。
ポータルやCMSもチームごとに用意するのは敷居が高いので、逆に、すでに環境が用意されていれば利用したいという声は多いでしょう。プラグイン形式で機能が追加できるので、オリジナルのレイアウトや設定が可能です。
ポータルにもOSSのものがいくつかあるのですが、ここではポータルの「Liferay」とCMSの「Joomla!」をご紹介します。
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表4 共用ポータル(CMS) |
以上、バージョン管理用の共用レポジトリ、共用課題管理、共用ポータルという3つの機能を紹介しました。
これらのインスタンスを増やしたい場合、セキュリティ面や性能面から個々に独立させたい場合は仮想OS自体を分け、コスト面や運用面からある程度集約したい場合はApacheのVirtualHostで分けるというように、サイト数の増加にも柔軟に対応できます。仮想化によってサイト増加要望に簡単に対応でき、かつOSSを利用するためサイト増加に伴うコスト増加がないのがポイントです。
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