Windows開発者に贈る
Kylixの全貌
注目のLinux開発環境「Borland Kylix」がいよいよ見えてきた。Delphiと同様の開発手法が登場したことにより、Windows開発者のLinux市場への参入も大幅に容易になることが期待される。ここに、英語版の発売を目前に控えたKylixの機能やアーキテクチャを紹介しよう。
大野 元久
ボーランド株式会社
2001/2/20
現在、Linuxは、特にサーバ用途で着実に普及している。安定した動作や安価な運用コストはLinuxの大きな魅力になっている。しかし、クライアントOSとしての利用はまだ少ない。その理由の1つとして、Linux用のアプリケーションが限られていることが挙げられる。Windowsでは、選ぶのに困るくらい多くのアプリケーションがそろっているのとは対照的である。
アプリケーションの数が少ない理由には、Linuxの開発が高度で難しいことがある。Linuxアプリケーションの開発には、ソースコード主体の開発ツールを使わなければならない。しかも、対話型のデバッグ環境はないに等しい。プログラマーの方なら開発におけるデバッグの重要性については、説明の必要はないだろう。これも、Visual BasicやDelphiのようなビジュアル開発ツールがそろっているWindowsと違う。
つまり、生産性の高い開発ツールがないためアプリケーションが充実せず、アプリケーションが少ないことでLinuxの普及が進まず、市場が広がらないために開発ツールがそろわないという状況に陥っていたのだ。
Borland Kylix(ボーランド・カイリックス、以下Kylix)は、この循環を断ち切るキラーアプリケーションになるだろう。Kylixは、これまでLinuxの開発環境に欠けていたビジュアル開発という手段、機能的なソースレベルデバッガ、商用品質の最適化コンパイラを提供する。
Kylixは、Linux用のネイティブアプリケーションを作成するためのビジュアル開発ツールである。ボーランドは、Windows用のビジュアル開発ツールとしてDelphiやC++Builderを、Java対応のビジュアル開発ツールとしてJBuilderを発売しており、その操作性や機能で高い評価を受けている。そして、その技術がLinuxプラットフォームで利用できるようになるのだ。
機能(一部)
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Server | Desktop |
ネイティブコードコンパイラ |
○
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○
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ビジュアル開発環境 |
○
|
○
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ソースレベルデバッガ |
○
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○
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CLXコンポーネント |
130以上
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165以上
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CLXソースコード |
○
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○
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XMLデータベースエンジン MyBase |
○
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○
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InterBase/MySQL ネイティブドライバ |
○
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○
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Oracle/DB2 ネイティブドライバ |
○
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−
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WebBroker |
○
|
−
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NetCLXコンポーネント |
○
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−
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表 Kylix機能一覧 |
Kylixは、Windows用のDelphiをLinuxに移植したものと見なせばよい。実際、操作性やプログラミング言語はDelphiとほとんど同じであり、環境がLinuxであることを忘れさせるほどである。Delphiに限らず、Visual Basicのようなビジュアル開発ツールを使ったことがある人なら、Kylixの手法にはすぐになじめるだろう。
Kylixには、Server DeveloperとDesktop Developer、そしてOpen Editionという3つの製品ラインナップがある。米国ではServer版とDesktop版の出荷を2001年第1四半期中に開始することが予定されている(日本版については未発表)。Open Editionは今年半ばのリリースが予定されているが、これはオープンソース開発のみに用途を限定する代わりに、無償ダウンロードとして提供されるものだ。
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Index | |
Windows開発者に贈る Kylixの全貌 | |
Kylixの正体 | |
開発工程を一変させるビジュアル開発環境 コンポーネントベースの統合開発環境 ソース編集を可能にする2Way-Tool 強力なソースレベルデバッガ |
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コンポーネントフレームワークCLX BaseCLX VisualCLX DataCLX NetCLX |
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高速なネイティブコンパイラ | |
Kylixのデータベース開発機能 | |
Apacheにも対応したインターネット開発 | |
KylixがLinuxを変える |
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