ターゲットはネットブックだけじゃない
モバイル端末とともに進化するMeeGo〜解説編



K.I.マヘーシ
2010/7/20


通信サービス(Comms)と密接なOSSプロジェクト

 MeeGoのミドルウェアレイヤには各種のサービスがあり、その中の1つに通信サービスがあります。音声/データなどの通信を管理するために、通信サブシステムがサービスを提供しています。

 またAPIを提供することによって、携帯電話やIP電話の通話、Wi-Fi、3G、WiMAX、Bluetoothのようなさまざまなデータ通信技術を管理できるようになっています。通信サービスは下記のような4つのアップストリームOSSプロジェクトと密接に連携しながら機能しています。

1. ConnManプロジェクト(接続管理)http://connman.net/

 ConnManがLinuxで動いているデバイス向けのインターネット接続管理用のデーモンを提供します。特にWiFi、WiMAX、3Gなどの接続を管理します。

2. oFonoプロジェクト(テレフォニー API)http://ofono.org/

 oFonoはテレフォニーサービスを提供します。oFonoは拡張可能なアーキテクチャを提供することで、複数のプラットフォームとモデムをサポートします。oFonoは主に、コアデーモン、oFono atoms、ドライバ、プラグインという4つのコンポーネントから構成されています。

3. Telepathyプロジェクト(VoIP、IM、プレゼンス)http://telepathy.freedesktop.org/

 TelepathyはD-バスベースのフレームワークで、インスタントメッセージング(IM)、インターネットリレーチャット(IRC)、IP電話(VoIP)用にすべてのプロトコルを一体化して提供し、リアルタイムコミュニケーションを可能にしています。

4. bluezプロジェクト(Bluetooth)http://www.bluez.org/

 bluezはLinux用の公式なBluetoothプロトコルスタックで、Bluetoothデバイスを制御するために使用します。bluezにより、高品質なオーディオデータを伝送できるA2DP(Advanced Audio Distribution Profile)や音声入出力可能なHSP(Headset Profile)、発呼および着呼の制御を行えるHFP(Hands-Free Profile)が可能になります。

MeeGoのロードマップ

 MeeGoは今年2月に発表され、約3カ月の開発を経て5月26日に初めてのリリースであるMeeGo 1.0が公開されました。MeeGo 1.0では、コアOSのコンポーネントを含むネットブック向けのリッチユーザーエクスペリエンスが提供されました。

 しかしMeeGoがターゲットにしているのはネットブックだけではありません。これ以外にも多数のユーザーエクスペリエンスをサポートする予定です。また、MeeGoアプリ開発者向けに、Linuxホスト上で利用可能なMeeGo APIやSDKも公開されました。現状では、まだ日本市場にはMeeGoを搭載したモバイル機器は出ていません。 モバイル機器メーカーとともにMeeGoの製品化を実現していくことが、今後の課題といえそうです。

Moblinアーキテクチャ
図3 MeeGoプロジェクトのWebサイト

 MeeGoプロジェクトでは、今後6カ月サイクルで最新版を公開していく予定となっています。MeeGo 1.1は2010年10月にリリースを予定しており、このバージョンではネットブック以外にハンドセットにも対応する予定です。同時に、タッチユーザーインターフェイスに対応する計画もあるようです。

 またMeeGoの開発者向けに、MeeGoの新たなAPI機能として、MeeGo Web Runtime機能やLinux以外のほかのホスト向けにSDKを提供することも計画し、これにより、MeeGo向けのアプリ開発を普及させようとしています。開発者が作成したアプリケーションは、ノキアの「Ovi Store」やインテルの「AppUp Center」などの、複数のアプリケーションストアにアプリを提供できるようになると思われます。今後MeeGoは複数のデバイスに順次対応していく予定ですが、それに伴いアプリケーションも複数のデバイスで利用可能となり、それは開発者にとって大きなメリットになるでしょう。

 また、自動車業界の車載インフォテインメントシステム(IVI)向けのオープンソースリファレンス プラットフォームの開発および導入を推進しているGENIVI Allianceも、多彩なアーキテクチャをサポートしているMeeGoへの関心を示しています。今後もMeeGoへの期待感は高まっていくことになるでしょう。

関連リンク:
MeeGOプロジェクト

前のページ
2/2

Index
ターゲットはネットブックだけじゃない
 モバイル端末とともに進化するMeeGo〜解説編
  Page 1
 多様なデバイスをターゲットにする「MeeGo」の特徴
 アーキテクチャの概略
  Page 2
 通信サービス(Comms)と密接なOSSプロジェクト
 MeeGoのロードマップ

Linux Square全記事インデックス


 Linux Squareフォーラム 仮想化技術関連記事
連載:実践! Xenで実現するサーバ統合
有力な仮想化技術として注目を集めるようになった「Xen」。このXenを活用してサーバ統合を実践していく手順を具体的に紹介します
特集:サーバの仮想化技術とビジネス展開の可能性
jailからUML/VMwareまで
1台のマシンで複数のサーバを動かす「仮想化技術」。VMwareやUMLの登場により、WebサイトだけでなくOS自体を仮想化できるようになった
特集:仮想化技術のアプローチと実装
VMwareから要注目技術Xenまで

1台のサーバで複数の仮想マシンを実行する仮想化技術は、空間コストを引き下げる可能性を持つ。最新の仮想化技術を概観してみよう
特集:仮想OS「User Mode Linux」活用法
技術解説からカーネルカスタマイズまで
Linux上で仮想的なLinuxを動かすUMLの仕組みからインストール/管理方法やIPv6などに対応させるカーネル構築までを徹底解説
特集:仮想化技術の大本命「Xen」を使ってみよう
インストール & Debian環境構築編

高いパフォーマンスで本命の1つとなった仮想マシンモニタ「Xen」。日本語による情報が少ないXenを、実際に動かしてみよう
特集:仮想化技術の大本命「Xen」を使ってみよう
Xen対応カスタムカーネル構築編

Xen環境およびその上で動作する仮想マシン用カーネルを自分で構築しよう。これにより、自由にカスタマイズしたカーネルを利用できる
特集:IPv6、UML、セキュリティ機能の統合
全貌を現したLinuxカーネル2.6[第4章]

今回は、これまでに紹介し切れなかった機能を一気に紹介する。これを読めば、カーネル2.6の正式リリースが楽しみになるだろう
Linux Squareプロダクトレビュー VMware Workstation 4
PC/AT互換機エミュレータとして不動の地位を築いたVMware。その新バージョンがリリースされた。新機能を早速試してみよう
古くて新しい「サーバ仮想化技術」の行方
サーバ仮想化を実現するための技術がソフトウェア、ハードウェアの両面で出そろってきた。ハイパーバイザーのさらなる高速化に向けた動きを紹介する
Linux Squareフォーラム全記事インデックス


Linux & OSS フォーラム 新着記事
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

Linux & OSS 記事ランキング

本日 月間