Master of IP Network
第9回 読者調査結果発表
〜2003年の通信/回線サービス導入状況と、注目ネットワーク・トピックスは?〜
小柴 豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2003/4/17
ブロードバンド、新世代WANサービス、IPv6…… 。ここ数年、情報通信をめぐって次々と新しい技術やサービスが登場している。とはいえデフレ経済が長引く今日、企業ネットワークで導入される技術やサービスも、おのずと厳しく峻別されよう。果たして現実的なネットワークのトレンドはどうなっているのか? Master of IP Networkフォーラムが実施した第9回読者調査から、その状況をレポートしよう。
■通信/回線サービス:普及進むブロードバンド+インターネットVPN
まずは法人向けの各種通信/回線サービスについて、読者のかかわるネットワークで「現在導入済みのもの」および「今後導入を予定/検討しているもの」を聞いた結果が、図1だ。“現在の導入率”について、1年前の2002年3月に実施した第6回読者調査と比較すると、「ISDN」が62%から57%に減少した反面、「xDSL」(2002年3月
36% → 2003年3月 53%)や「FTTH」(同 11%→24%)といったブロードバンド回線のポイントが大きく伸びている。今後の導入予定を見ても、ISDNとブロードバンドの勢いの差は明らかであり、企業通信回線の主役交代は時間の問題と思われる。
またVPN関連で過去1年間の推移を見ると、新世代のWANサービスである「IP-VPN」「広域イーサネット」の導入率は前年比+1〜3%の微増にとどまる一方、「インターネットVPN」の導入企業は13%から24%にまで拡大している。インターネットVPNはIP-VPNなどに比べて安全性/信頼性に劣るといわれているが、上述したブロードバンド回線の普及を背景に、手軽にVPN網を構築する手段として注目を集めている様子だ。
図1 通信/回線サービス導入状況(複数回答 n=294) |
■これからのWANサービス選びで重視するポイントは?
次に、読者が今後WANサービスを選択するうえで重視する点を尋ねたところ、全体の過半数が「ユーザー側の機器コストが安いこと」を選択した(図2)。またそれに次いで「長距離通信の際の料金」が挙げられるなど、総じて通信コスト削減意識が強く表れる結果となった。図1でインターネットVPNの導入意向が高かったのも、こうしたコスト意識を反映したものだろう。
しかし、重視点の3番目に「帯域保証があること」が挙げられているように、価格重視のベスト・エフォート型サービスだけが望まれているわけではない。今後のWAN構築では、“広域イーサネットによるルータレス・ネットワーク構築”のような、コストと信頼性のバランスがポイントになりそうだ。
図2 WANサービス選択時の重視点(3つまでの複数回答 n=294) |
■ArcstarがリードするIP-VPN/混戦模様の広域イーサネット
続いて、新しいWANサービスとして注目されるIP-VPN/広域イーサネットについて、それぞれの導入者/導入予定者が具体的にどの事業者のサービスを選択しているのか、見ていこう。
まずIP-VPNサービスでは、NTTコミュニケーションズの「Arcstar IP-VPN」がほかを一歩リードしており、KDDIの「KDDI
IP-VPN」、日本テレコムの「SOLTERIA」がそれに続いている(図3)。
図3 導入している/導入予定のIP-VPNサービス(IP-VPN導入者/予定者 複数回答 n=106) |
一方広域イーサネットサービスでは、IP-VPN同様NTTコミュニケーションズの「e-VLAN」がトップに立ったものの、パワードコムの「Powered Ethernet」が僅差で続く結果となった(図4)。
図4 導入している/導入予定の広域イーサネットサービス(広域イーサ導入者/予定者 複数回答 n=87) |
■2003年注目のIPネットワーク・トピックスとは?
最後に、上記以外の主なネットワーク関連技術/製品/サービスについて、読者のかかわるネットワークの導入状況/導入予定を紹介しておこう。現状(図5
青棒)では、「無線LAN」の導入率が4割に達し、普及期を迎えた点が注目される。セキュリティや今後の規格統一などの課題は残されているものの、無線LAN機能を組み込んだインテル“Centrino”プラットフォームが登場したこともあり、企業ネットワークの無線化はさらに広がりそうだ。
一方今後の導入予定(図5 黄棒)からは、「VoIP/IP電話」を筆頭に、「ギガビット・イーサネット」「ネットワークセキュリティの一元管理」「IPv6」などの導入検討が進んでいることが分かる。これらの中で特にVoIP/IP電話への注目度が高い背景には、インフラとしてのIPネットワークの普及、既存電話回線と比較した際のコストメリット(の分かりやすさ)、“050”番号の割り当て開始など、さまざまな要因が考えられる。
最近では、社内PBXを撤廃してプロバイダのPBX機能を利用する“IPセントレックス”が話題になるなど、VoIP/IP電話によるコスト削減への期待はますます高まっているように思われる。経済停滞下の今日、VoIP/IP電話は、2003年最も注目すべきIPソリューションといえるかもしれない。
図5 その他ネットワーク関連技術/製品/サービス導入状況 (複数回答 n=294) |
- 調査方法:Master of IP Network フォーラムからリンクした Webアンケート
- 調査期間:2003年2月24日〜3月24日
- 回答数:397件(うち、ネットワーク業務関与者294件を集計)
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