特別企画:
「Groove」とは何か?
〜 コミュニケーションの形を変える
PtoP時代の新世代グループウェア 〜
吉川満広
ネットマークス
2001/12/26
皆さんは、「Groove」というソフトウェアをご存じだろうか? 簡単にいえば、「ピア・ツー・ピアを通信手段としたグループウェア」だと考えてもらって構わないだろう。従来までのクライアント/サーバ型のグループウェアでは、クライアント数や使用するユーザーが増えるごとに、サーバの増設作業や管理工数の上昇に悩まされていた。しかし、ピア・ツー・ピアを通信手段とするGrooveでは、各クライアントにサーバとしての機能とクライアントとしての機能、その両方を持ち合わせており、互いが対等の関係にある。
画面1 Grooveの実行画面(画面をクリックすると拡大表示します) |
これが意味するのは、ネットワークの構成にとらわれない、自由なコラボレーション環境が構築できるところにある。従来までのように、社内のあるグループで情報共有やコミュニケーションを取ることはもちろん、自宅から会社のPCにあるスケジュールやメールを参照したり、さらには異なる会社に所属する技術者同士が意見交換を行うことも簡単にできたりするのだ。
本稿では、Grooveが持つ各種機能や便利な活用法などを、駆け足ではあるが、紹介していこう。
■Grooveの原点はロータスノーツにあり
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Grooveは、Groove Networksという米国の会社からリリースされている。このGroove Networksは、グループウェアの元祖、ロータスノーツの生みの親であるレイ・オジーが設立した会社である。ロータスノーツで大成功したレイ・オジーはロータスを退社後、1997年8月にGrooveの製品コンセプトを作成し、同年10月にGroove Networksとして会社を立ち上げた。その後、ロータスの設立者であるミッチー・ケーパーが経営に参加するとともにGroove Networksに投資を行い話題となった。
Grooveは2000年7月にPreview Editionとしてリリースされるまで、そのコンセプトを含めた情報は秘密とされており、「ピア・ツー・ピアのアプリケーションらしい」という情報以外は、公式に漏れることはなかった。最近のニュースでは、2001年10月にマイクロソフトがGroove Networksに約60億円の出資を行い、レイ・オジーがマイクロソフトのWindows XPや.NETへの全面的なサポートを表明したことが話題となった。
Preview Editionとして登場したGrooveは、ロータスノーツを使用したことがある人にとっては、その類似点を容易に探すことができる製品となっている。例えば、「ディスカッションなどを閉じる場合『Esc』キーを使用する」「未読の文書に未読マークが表示される」といったような、ノーツでのユーザー・インターフェイス(UI)がそのまま踏襲されている。
冒頭で、「Grooveは各クライアントにサーバとしての機能とクライアントとしての機能の両方を持ち合わせ、互いが対等の関係にある」と説明したが、それを実現したのはロータスノーツでも評価の高かった「レプリケーション技術(各クライアント同士のデータの同期、Grooveでは“Sync”となっている)」である。図1は、Grooveがどのようなパーツを組み合わせて成り立っているかを説明したものだ。Sync(データの同期)が中心にあり、各機能が周りを取り囲むようになっているのが分かる。ユーザーは、この図にある「Transceiver」をUIとしてGrooveを使用する。
図1 Grooveを構成するパーツ |
現在のバージョンは1.3であり、1.0までは使用できなかった日本語も扱えるようになった。UIの部分を除いては、日本語での共有スペース名、共有ファイル名、チャットをはじめとして、ほぼ日本語が使用できている。だが一部では、「インラインで日本語の入力ができない」「ディスカッションのタイトルが文字化けする」などの制限が依然としてある。一部制限こそあるものの、使用において不便と思うことはほとんどない。
■Grooveのどこが便利なの?
早速だが、Grooveをどのように使うといいのか、紹介していきたいと思う。Grooveの基本がグループウェアであることは冒頭で述べたが、ほかのユーザーと何らかの情報を共有しながらプロジェクトを進めたりするのに便利なツールである。同じグループウェアであるノーツなどと違うのは、ピア・ツー・ピアで動作しているのでサーバが必要ない点だ。Grooveでは、「共有スペース」と呼ばれる情報共有の場所を作成し、このスペースを介してほかのユーザーとのやりとりが可能となる。
画面2 共有スペースの例。本原稿は、この共有スペースで情報交換を行いつつ、執筆が行われた(画面をクリックすると拡大表示します) |
画面2は、共有スペースの例だ。ここでは、ファイルの共有(入稿原稿)/ディスカッション(ご意見)/アウトライン(原稿の検討)とチャットが行われている。画面では、左側にこのスペースを共有しているメンバーの一覧と現在のステータスが表示されている。その下の「Conversation」と書かれたエリアには、音声での通話を行うためのボタン(上)、チャットの表示のオン/オフ(下)が用意されている。一番下にある「Navigate Together」をそれぞれのユーザーがチェックすると、ユーザー全員で同じ動作を行うようになる。
共有スペースを作成する場合、あらかじめその目的に沿ったツール・セット(Standard tool sets)を選んで共有スペースを作成するか(画面3のConversationではSketchpad/Notepad/Web Browser/Filesが用意されている)、各ツールを選んで作成するかを選べる。これらのツールは、共有スペースを作成した後でも追加、削除できるので(変更内容は共有している全ユーザーに反映される)、あまり深く考えずに作成しても構わない。
画面3 共有スペースの作成画面(画面をクリックすると拡大表示します) |
作成したスペースは、ロータスノーツなどの従来のグループウェアと何ら変わることないUIで使用できる。ロータスノーツでは、新しいディスカッションなどをほかの人と共有する場合、サーバ管理者にスペースを使用する了承を得てから使用することが必要であった。また、管理者はそのスペースが大きくならないかを常に監視しておく必要があった。しかし、Grooveではだれでもが共有スペースを作成でき、共有するメンバーを招待(GrooveではInvite)し、招待されたユーザーが合意すれば、共有スペース上のデータやアプリケーションを容易に共有できる。
画面4 共有スペースにデータを置き、そのデータを公開したユーザーを左上の「Invite」ボタンで招待する。このように、Grooveではユーザー間でのデータ共有やアプリケーション共有が容易に行える(画面をクリックすると拡大表示します) |
ここで、Grooveの持つ主なコラボレーション機能の特徴を簡単にまとめておこう。
●インスタント・メッセージング
インスタント・メッセージングは、Grooveをインストールした時点からすぐに使用できる。ピア・ツー・ピアで動作しているので、常に相手のステータスが把握できるインスタント・メッセージングはとても便利である。バージョン1.3からは、Windows
XPのWindows Messengerのユーザーと相互にメッセージがやりとりできるようになった。
●リアルタイム・チャット
1対1のやりとりであるインスタント・メッセージングに対し、複数のメンバーでチャットが可能なリアルタイム・チャットも実装されている。チャットには、先に紹介した音声での通話ボタンが用意されているので、音声での通話もできるようになっている。また、チャットの内容は「Save
as Space」で共有スペースとして保存しておくことができる。チャットでのやりとりから新たなプロジェクトが始まる場合、このスペースの保存を行い、後からツール群を追加していけば、立派な共有スペースが完成する。
●音声通話
Grooveには音声通話機能があり、それを使用することで音声通話ができる。初期のバージョンでは、音声を発声しない無音状態でも「Hold-to-Talk」を押したままにした場合、継続的に音声が相手側に送られていて耳障りなことが多かったが、最近のバージョンでは「Hold-to-Talk」を押したままにしても、音声を発声しなければサンプリングされず無音状態になり、かなり使い勝手が良くなった。ADSLの上り512kbpsと128kbps(マンション共有)で通話を行ったところ、固定電話には及ばないものの、携帯電話程度の音声品質で遅れもほとんど感じず通話できた。このように接続したままの状態であれば、「Navigate
Together」のチェックボックスをオンにすることにより、同じWebページの閲覧やSketchpadの使用などで、リアルタイムのコラボレーションが容易に行える。
特別企画:Grooveとは何か? | |
Page.1 Grooveの概要を知る ・Grooveの原点はロータスノーツに ・Grooveのどこが便利? |
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Page.2 Grooveの仕組みと使い方のコツ ・特徴は通信の仕組みにあり ・Grooveの便利な使い方 ・Groove入手方法と使用上の注意 ・これからのGroove |
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