ネットワーク・ストレージを加速させる最新技術を紹介
特集:最新IPストレージ技術「iSCSI」
最近、ネットワーク分野での注目トピックの1つに、「ネットワーク・ストレージ」があります。「ストレージといえば、サーバに接続するもの」という概念を一歩抜けて、ストレージ自体をネットワーク化することで、冗長性や拡張性、容易な管理の仕組みを実現するのですが、これは一般に「SAN(Storage
Area Network)」と呼ばれています。 従来までのSANは、ファイバ・チャネルという専用インターフェイスを用いて、機器同士の接続が行われていました。ですが、高いパフォーマンスが得られる反面、価格面やエンジニアのスキルなどの問題で、普及が進みにくいということもありました。その中で登場した「iSCSI」、従来の汎用ネットワーク・インフラを用いてSANシステムを構成できる点で注目を集めつつあります。本記事では、この「iSCSI」はどのような技術なのか、その特徴や技術仕様についてまとめて解説します。 (編集局)
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青木直孝
日本アイ・ビー・エム
SNIA-Japan Forum正会員
2002/10/5
Part.1 「iSCSI」とは、どのような技術なのか? |
従来、サーバ機器の従属的な役割であったストレージ・デバイスが、SANやNASといった形でネットワークにつながり、その機能もサーバに依存しない形態をとりつつ関連技術を発展させている。しかしながらSANのネットワークは、通常のIPネットワークとは異なり、大容量かつバースト性の強いストレージ・データ転送に向いたファイバ・チャネルのインフラの上に構築されているため、インターネットに代表されるIPネットワーク網と共存することはできなかった。イーサネットのスピードが10/100Mbps当時は、この違いを埋めることができなかったが、IPネットワーク・テクノロジーの進化に伴い、転送スピードの差はなくなり、かつネットワークに対する二重投資に素朴な疑問も出てきた。そんな環境下でのiSCSIの出現は、極めて自然といえるかもしれない。
■iSCSIとは?
ストレージの世界で標準となっているSCSIのコマンドやデータをTCP/IPパケットの伝送フレームの中に包み込み、SCSIコマンド体系を外から見えなくすることにより、ストレージ製品のIPネットワークへの直接接続を可能にする。ストレージ製品がネットワークに直結できることにより、ネットワーク網を構築するハブ、ルータ、スイッチ類は従来のものが利用できるようになる。簡単にそのメリットを列記する。
- 既存のアプリケーションは、iSCSIを意識することなく従来通りローカル・ストレージにアクセスするのと同じ手順でターゲット・ストレージのデータを読み書きできる
- ディスクへの読み書きは、SANと同じブロックI/Oであり、NASのようなファイル・システムはストレージ側に必要としない
- 現在はSANのインフラ・スピード(1Gbps)とあまり変わりはないが、今後のイーサネットの伝送スピードが10倍速(10Gbps、100Gbps……)で向上すると考えると、そのメリットは計りしれない
- ネットワーク管理の面からも、ストレージ機器をほかの通信機器と同じように同一インフラ網上で統合管理が可能
■iSCSIの標準化動向
iSCSIの標準化は、Internet Engineering Task Force(IETF)のIP Storage Working Groupで行われており、Internet-Draftとして公開されている。現在、技術的な仕様は固まっており、編集上のコメント処理を残すのみとなっている。
Storage Network Industry Association(SNIA)のIP Storage Forumは、iSCSIの標準化のサポートを行っており、iSCSIの普及活動を推進している。
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次のページより、実際にiSCSIがどのような仕組みで動いているのか、技術的観点から見ていこう。
Index | |
特集:最新IPストレージ技術「iSCSI」 | |
Part.1 「iSCSI」とは、どのような技術か? ・iSCSIとは? ・iSCSIの標準化動向 |
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Part.2 iSCSI技術仕様 ・iSCSIの仕組み ・iSCSIプロトコル概要 ・iSCSIネームとその解決 |
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Part.3 iSCSIの将来と今後の課題 ・iSCSIの実装要件 ・iSCSIの技術的課題 ・他技術とiSCSIとの比較 |
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「Master of IP Network総合インデックス」 |
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