第3回 いま、ネットワークに何が起きているのか

@IT編集部
2011/8/30

元@IT編集人で、現在はブログメディアPublickeyを運営している新野淳一氏をパーソナリティとし、ゲストとともにIT業界の注目トピックを解き明かすUstream番組!!

 元@IT編集人で、ブログメディア「PublicKey」を主宰する新野淳一氏が、IT業界の注目トピックを主要ベンダのゲストとともに解き明かすUstream番組「新野淳一の@IT Technology Key Point」が、久しぶりに帰ってきました。

 第3回のテーマは「ネットワークに何が起きているのか」。最近、イーサネットを取り巻く技術が進化し、これまでイーサネットを特徴付けてきた「ループ構造があってはいけない」といった原則が崩れ始めようとしています。

 その向かう先にある「ファブリックネットワーク」とは何か。柔軟なシステム、柔軟なクラウドの実現に必要な「ネットワークの仮想化」は何を意味するのか――こうした問いへの答えを、ブロケード・コミュニケーションズ・システムズ データセンターテクノロジー部 部長の小宮崇博氏と共に語ります。

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イーサ「ネット」から「ファブリック」へ、ブロケードの提案(@ITNews)
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 この記事では対談の一部を抜粋しました。詳細はぜひ、以下のビデオアーカイブをご覧ください。



 キーポイント1「イーサネットはどこまで速くなっていくのか」

 サーバの分野では、10BASE-Tや100BASE-Tといった速度は過去のものになりつつあります。イーサネットはこの先どこまで高速化していくのか、その道筋を探ります。

新野:いまサーバを買うと、たいてい1Gbpsのポートが付いてきますし、10Gbps対応のアダプタも出てきています。この先は100Gbpsになるのでしょうか? イーサネットはどう進化するのでしょう?

小宮:データセンターやISPを中心に、ようやく10Gbpsに対するニーズが生まれてきましたが、現時点では10Gbpsという技術を使っているのは一部のユーザーですね。ただ10Gbpsについては標準化が済んでいて、各社が対応した製品を出荷しています。

新野:つまり、「ほしい人はお金を出せば買える状態」ですね。その先はどうでしょう?

小宮:2つあります。1つは100Gbpsイーサネットです。サービスプロバイダーや電話会社、インターネットエクスチェンジなど、広帯域を要求するところに適用する形で、いま、ブロケードでも検証をしています。

 もう1つは40Gbpsという技術です。これもいくつかのスイッチメーカーが製品をアナウンスしており、これから出てくる状態です。40Gbpsはどこで使うかというと、今日の時点では「アグリゲーション」になります。

新野:どうして40Gbpsと100Gbpsに分かれるのでしょう。その理由は?

小宮:はい。100Gbps用のCFPというオプティカルモジュールがあるんですが、その価格はベンツ1台分もするもので、いくつも買えるユーザーはそうそうありません。一方で40Gbps用のQSFPというモジュールは小さなタイプで、価格も数十万円にとどまっており、比較的使いやすいんです。

新野:値段はこれから下がっていく傾向にありますよね?

小宮:もちろんです。数量が出てくれば下がります。

新野:さて、その先はどこまで速くなるんでしょうか?

小宮:400Gbpsや1Tbpsというところまで見据えた議論がスタートしています。2020年ごろには、2020年には1Tbpsというようなスピードになるのかなと思います。

新野:将来的には、サーバの内部バスと外部ネットワークのスピードの差がなくなってきて、外のサーバにメモリアクセスにいったりするようになり、サーバが流動的な存在になるかもしれませんね。

 キーポイント2「みんなイーサネットに統合されるのか?」

 ストレージを接続するファイバチャネルやHPC分野で利用されてきたInfinibandといったイーサネット以外のネットワーク。これらをイーサネットに統合する動きについて考察します。

新野:FCoEによって、ストレージ専用のファイバチャネルネットワークをイーサネットに統合する動きがあります。また、この先イーサネットが高速化すれば、Infinibandなどの技術もイーサネット側に寄ってくるかもしれません。世の中みんな、イーサネットに統合されていくのでしょうか? ブロケードという立場からは「なります」となるんでしょうが……(笑)。

小宮:私たちはもちろんFCoEを推進しているんですが、これにはいくつかのフェーズがあると思います。直近、2015年までの範囲で言えば、エンタープライズのお客様ではまだ統合されないと思います。

新野:ファイバチャネルを使いつつ、イーサネットも使うという形ですね。

小宮:Infinibandも含め、用途に応じて使い分けるという形になると思います。個別のネットワークがあってそれらが競合し合わないということですね。

新野:とはいえ、ファイバチャネルの速度は8Gbpsが主流で、イーサネットはいま10Gbpsから100Gbpsです。イーサネットの方が速いですよね。なぜ使い分けるのでしょう?

小宮:それは、3つめのテーマにも関わるのですが、ファブリックという発想が関係してきます。InfinibandやファイバチャネルのようなI/Oに近い部分のメッセージをイーサネットに統合するには、ロスレス性などが必要になりますが、直近では、エンタープライズのお客様では、そういった要素を備えたイーサネットのメリットはまだ大きくないかもしれません。

 というのも、いま、現実的にサーバ仮想化で使われているストレージ接続の76%はファイバチャネルなんです、アメリカでは。日本の場合、定量的なものはありませんが、感覚的にはもう少し低いと思います。そこでFCoEを使うというのは現実的ではありません。ピュアなFCoEの技術は、いまのインフラのライフサイクルが一回りしないと出てこないと思います。

 ただ、これはエンタープライズのお客様の場合であって、サービスプロバイダーの場合は違うと思います。サーバをトップオブラックのスイッチに集約することで、コストメリットが生まれます。ただ、既存の投資はありますから、全部がいきなり統合されるということはないでしょう。

 キーポイント3「ネットワークの将来像、『ファブリック』とは何か」

 話題は核心の「ファブリックネットワーク」へ。従来のトポロジからファブリックネットワークへの移行が、仮想マシンを活用したこれからのクラウドインフラにどのように寄与するのかを語ります。

新野:ネットワークの将来像としてよく「ファブリック」という言葉を聞くんですね。また、最近、僕のブログで「僕が20年前に倣ったイーサネットの基礎がずいぶん変わってますね」という趣旨の記事を書いたところ意外と人気があり、みんなイーサネットの新しい構造に興味があるんだなということに気付きました。ブロケードもビジョンの中に「ファブリック」というキーワードを使っていますね。まず、トポロジの進化といった観点から教えてもらえませんか。

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Publickey:さよなら、僕が知っていたイーサネット
http://www.publickey1.jp/blog/11/post_165.html

小宮:ファイバチャネルやInfinibandで構成するHPCの場合、たくさんのノードがつながります。もしここで、イーサネットでツリー構造を作ると、いままでですとスパニングツリープロトコル(STP)を使うため、ブロックポートが生じます。これはHPCでは最悪なので、Infinibandを使ってファットツリーを構成する、そういう発想が出てきました。

新野:Infinibandはサーバとサーバを高速につなぐために使われますね。そして、できれば本当に網の目のようにして、どこからどこに対しても高速に通信できるようにしたい、と。そういうときに、ツリートポロジしかできない、いまのイーサネットだとつらいというわけですね。

小宮:高スループット化したいというニーズをイーサネットでどう実現するか。そこで、IETFで議論していたTRILL(TRansparent Interconnection of Lots of Links)という技術を使い、イーサネットで、メッシュでもリングでもファットツリーでも、どんなトポロジでも、結んだらちゃんとループを許容するネットワークになりますよ、としているわけです。

 ファブリックネットワークにおいてはもう1つ重要な要素があります。分散アーキテクチャです。何か1つのコントローラが管理するのではなく、それぞれのスイッチがインテリジェンスを持っていて、つないだら自動的にほかのトポロジを認識し、どこに何があるかを知る――そういったインテリジェントサービスが動いていることが重要だと思います。

新野:それができると何が違うんですか?

小宮:VMotionなどで仮想マシンを移動させるとき、VLAN IDやQoSというようなポートプロファイルというような属性情報もともに移してあげないといけません。このとき、システムとして全体が1つのシステムになっていないと、どこに何が移ったかということを認識できず、ポートプロファイルを適用することもできなくなります。

 もう1つの重要なポイントとして、全体が論理的に1つだと、運用性も非常に改善します。10台、100台というスイッチでも論理的には1台として管理できれば、非常にコストが下がります。

(続きは動画をご覧ください)

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