連載 サハロフ秋葉原経済研究所 第3回 「大きいことはいいこと」なのか、ハードディスクのおいしい容量
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まず最初にハードディスクを取り上げてみましょう。単体でエンドユーザー向けに市販されているハードディスクだけでも、いろいろな種類があります。大きく分けると、デスクトップPC向けの3.5インチIDEハードディスクと、サーバ/ワークステーション向けのSCSIハードディスクや、ノートPC向けの2.5インチIDEハードディスクとなります。以下、それぞれについて価格動向をまとめてみました。
デスクトップPC向けIDEハードディスクの全体的な動向
主にデスクトップPC向けとして市販されているIDEハードディスクは、そのスピンドル・モータの回転速度*1で2つに分類できます。一方は7200RPM以上の高性能PC向けディスク、もう一方は5400RPM前後の低価格PC向けディスクです。次のグラフは、それぞれのIDEハードディスクで容量と価格がどのように分布しているかを表しています。
*1 (編注)スピンドル・モータとは、ハードディスク内部の記録用ディスク(円盤)を回転させるモータのこと。大雑把にいえば、このモータの回転は高速なほど、ハードディスクの性能も高まる。スピンドル・モータの回転速度は、「スピンドル回転数」「スピンドル回転速度」などと呼ばれる。 |
IDEハードディスクの容量と価格の関係 | |
左グラフは容量と平均価格の関係を、右グラフは容量と1Gbytes当たりの単価の関係をそれぞれ表したものです → 拡大グラフへ |
[高性能PC向けIDEハードディスク]
― IBMとSeagateの製品に人気集中 ―
高性能PC向けディスクは、IBM製の「Deskstar 60GXP」シリーズ(10G〜60Gbytes)とSeagate Technology製の「Barracuda ATA IV」シリーズ(20G〜80Gbytes)の人気が高く、多数のショップが両シリーズの在庫を持っています。発売時期は後者のほうが新しく、1枚当たり40Gbytesの高密度記録プラッタ(表面に磁性体が塗布されたデータ記録用円盤)を搭載しているほか、スピンドル・モータの軸受け部分に流体軸受け*2を採用し、静音設計をうたっているのが特徴です。
*2 (編注)スピンドル・モータの軸受け部分には、これまでボール・ベアリングを用いるのが一般的だった。流体軸受けとは、金属製ボールの代わりに粘性のある油を利用した新しいタイプの軸受けのこと。静音性や耐衝撃性に優れるほか、軸のぶれも小さくなることから磁気ヘッドの位置決め精度も高まり、結果としてアクセス性能も高まるといわれている。 |
Barracuda ATA IVシリーズは値動きも活発で、最近4週間の値下がり率は4.6〜12.6%に達しました。容量40GbytesのST340016Aは1万2000円台と安く、入手性も大変良好です。このほか、7200RPMで目下唯一の100GbytesモデルであるWestern Digital製の「WD1000BB」が大幅に下落し、中心価格帯が3万1000円台となっています。
メーカー名/シリーズ名 | 型番 | 容量 | 最安値 | 中心価格帯 |
IBM Deskstar 60GXP | IC35L060AVER07 | 60Gbytes | 1万4699円 | 1万7000円前後 |
IC35L040AVER07 | 40Gbytes | 1万1999円 | 1万2000円台 | |
IC35L020AVER07 | 20Gbytes | 9999円 | 1万円台 | |
IC35L010AVER07 | 10Gbytes | 8750円 | 9000円前後 | |
Maxtor DiamondMax Plus 60 |
5T060H6 | 61.4Gbytes | 1万7500円 | 1万8000円台 |
5T040H4 | 40.9Gbytes | 1万2700円 | 1万3000円台 | |
5T030H3 | 30.7Gbytes | 1万999円 | 1万2000円前後 | |
5T020H2 | 20.4Gbytes | 9980円 | 1万円台 | |
Seagate Technology Barracuda ATA IV |
ST380021A | 80Gbytes | 2万2799円 | 2万3000円前後 |
ST360021A | 60Gbytes | 1万7800円 | 1万8000円前後 | |
ST340016A | 40Gbytes | 1万2470円 | 1万2000円台 | |
ST320011A | 20Gbytes | 9780円 | 1万円前後 | |
Seagate Technology Barracuda ATA III |
ST340824A | 40.8Gbytes | 1万2270円 | 1万2000円台 |
ST330620A | 30.6Gbytes | 1万1099円 | 1万1000円台 | |
Western Digital | WD1000BB | 100Gbytes | 2万9800円 | 3万1000円台 |
WD800BB | 80Gbytes | 2万950円 | 2万1000円台 | |
WD600BB | 60Gbytes | 1万8000円 | 1万8000円台 | |
WD400BB | 40Gbytes | 1万2700円 | 1万3000円前後 | |
WD300BB | 30Gbytes | 1万1250円 | 1万1000円台 | |
WD200BB | 20Gbytes | 9850円 | 1万円台 | |
富士通 | MPG3409AH | 40.9Gbytes | 1万1770円 | 1万2000円前後 |
高性能PC向けIDEハードディスクの価格 |
[低価格PC向けIDEハードディスク]
―
MaxtorとSeagateの製品が大きく下落 ―
低価格PC向けディスクは、Maxtorの各シリーズとSeagate Technologyの「U Series 6」(20G〜80Gbytes)の下落傾向が目立ちます。容量別に見ると、40Gbytesが1万円台、60Gbytesが1万4000円〜1万5000円台となっており、100GbytesモデルのMaxtor製「536DX 4W100H6」は2万8000円台に下がりました。
一方、Western Digitalは前述のWD1000BBを除き、最近になって値上がり傾向が出始めました。8月下旬から品薄続きだった80Gbytesの「WD800AB」は、9月下旬に再入荷したものの、最近4週間で平均価格が若干(1.2%)ですが上昇しています。ここ数カ月の間、他社より安値で販売されてきたWestern Digital製ハードディスクですが、現状ではやや高めの価格帯に移ったといえます。
メーカー名/シリーズ名 | 型番 | 容量 | 最安値 | 中心価格帯 |
Maxtor DiamondMax D540X(D) |
4D080H4 | 80Gbytes | 2万440円 | 2万円台 |
4D060H3 | 60Gbytes | 1万3900円 | 1万5000円台 | |
4D040H2 | 40Gbytes | 1万200円 | 1万円台 | |
Maxtor DiamondMax D540X(K) |
4K080H4 | 80Gbytes | 1万7700円 | 1万8000円台 |
4K060H3 | 60Gbytes | 1万3460円 | 1万4000円前後 | |
4K040H2 | 40Gbytes | 9900円 | 1万円前後 | |
Maxtor 536DX | 4W100H6 | 100Gbytes | 2万7980円 | 2万8000円台 |
4W080H6 | 80Gbytes | 1万7980円 | 1万9000円前後 | |
4W060H4 | 60Gbytes | 1万4160円 | 1万4000円台 | |
4W040H3 | 40Gbytes | 9999円 | 1万円台 | |
Maxtor 541DX | 2B020H1 | 20Gbytes | 8780円 | 9000円前後 |
Seagate Technology U Series 6 |
ST380020A | 80Gbytes | 1万9800円 | 2万円台 |
ST360020A | 60Gbytes | 1万4380円 | 1万4000円台 | |
ST340810A | 40Gbytes | 9960円 | 1万円台 | |
ST320410A | 20Gbytes | 7999円 | 8000円台 | |
Western Digital | WD800AB | 80Gbytes | 1万9180円 | 1万9000円台 |
WD600AB | 60Gbytes | 1万4450円 | 1万5000円前後 | |
WD400AB | 40Gbytes | 1万960円 | 1万1000円台 | |
WD300AB | 30Gbytes | 9980円 | 1万円前後 | |
富士通 | MPG3049AT | 40.9Gbytes | 9970円 | 1万円台 |
低価格PC向けIDEハードディスクの価格 |
[超高速SCSIハードディスク]
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Seagateの最新製品が入手可能に ―
SCSIタイプは、スピンドル回転速度が1万5000RPMという超高速ハードディスク、Seagate Technology製「Cheetah X15」シリーズの最新モデルを、いくつかのショップで見掛けるようになりました。動画のリアルタイム編集といった高い性能が求められる用途に向けた、特殊用途向けともいえるモデルですが、秋葉原なら入手は比較的容易です。
メーカー名/シリーズ名 | 型番 | 容量 | 最安値 | 中心価格帯 |
スピンドル回転速度15000RPM | ||||
Seagate Technology Cheetah X15 36LP | ST336752LW | 36.7Gbytes | 7万5800円 | 7万5800円 |
ST318452LW | 18.4Gbytes | 4万1000円 | 4万2000円台 | |
スピンドル回転速度10000RPM | ||||
IBM Ultrastar 36LZX | DDYS-T36950 | 36.7Gbytes | 4万900円 | 4万1000円台 |
DDYS-T18350 | 18.3Gbytes | 2万980円 | 2万1000円台 | |
DDYS-T09170 | 9.1Gbytes | 1万7080円 | 1万8000円前後 | |
Seagate Technology Cheetah 73LP | ST373405LW | 73.4Gbytes | 9万2800円 | 9万2800円 |
Seagate Technology Cheetah 36XL | ST336705LW | 36.7Gbytes | 4万4800円 | 4万5000円前後 |
ST318405LW | 18.4Gbytes | 2万4980円 | 2万6000円前後 | |
ST39205LW | 9.2Gbytes | 2万680円 | 2万1000円前後 | |
スピンドル回転速度7200RPM | ||||
IBM Ultrastar 36LP | DPSS-336950 | 36.9Gbytes | 2万4800円 | 2万6000円台 |
DPSS-318350 | 18.3Gbytes | 1万4800円 | 1万5000円台 | |
DPSS-309170 | 9.1Gbytes | 1万980円 | 1万2000円台 | |
Seagate Technology Barracuda 180 | ST1181677LW | 181.6Gbytes | 19万5000円 | 20万円前後 |
SCSIハードディスクの価格 |
[ノートPC向けハードディスク]
― 9.5mm厚で40Gbytesの大容量モデルが登場 ―
ノートPC向けの2.5インチIDEハードディスクでは、9月下旬に容量40Gbytesの東芝製「MK4018GAP」が発売されました。1枚あたり20Gbytesのプラッタを2枚搭載しており、9.5mm厚のモデルとしては容量が最大です。また、日立製作所からは流体軸受け採用の30Gbytesモデル「DK23CA30F」も出回り始めました。店頭価格は通常モデル「DK23CA30」より15%ほど高めに設定されています。両者は型番末尾に付加された「F」で区別することができるので、購入時には型番をよくチェックした方がいいでしょう。
メーカー名/シリーズ名 | 型番 | 容量 | 最安値 | 中心価格帯 |
IBM Travelstar 48GH | IC25T048ATDA05*3 | 48Gbytes | 4万9500円 | 5万円前後 |
IBM Travelstar 30GN | IC25N030ATDA04 | 30Gbytes | 2万1800円 | 2万2000円台 |
IC25N020ATDA04 | 20Gbytes | 1万4780円 | 1万5000円前後 | |
IBM Travelstar 20GN | DJSA-220 | 20Gbytes | 1万3800円 | 1万4000円前後 |
DJSA-210 | 10Gbytes | 9600円 | 1万円前後 | |
東芝 | MK4018GAP | 40Gbytes | 2万9800円 | 3万円前後 |
MK2018GAP | 20Gbytes | 1万2800円 | 1万4000円前後 | |
MK3017GAP | 30Gbytes | 1万9400円 | 2万円前後 | |
MK1517GAP | 15Gbytes | 1万1980円 | 1万2000円前後 | |
日立製作所 | DK23CA30F | 30Gbytes | 2万2580円 | 2万3000円前後 |
DK23CA30 | 30Gbytes | 1万9400円 | 2万円前後 | |
DK23CA20 | 20Gbytes | 1万3700円 | 1万4000円前後 | |
ノートPC向け2.5インチIDEハードディスクの価格 | ||||
*3 これのみ12.5mm厚でスピンドル回転速度5400RPMです。ほかはすべて9.5mm厚で4200RPMです。 |
[CD-R/RWドライブ]
― 16〜20倍速に買い得感、コンボ・タイプも一部が値下がり ―
ここ1〜2カ月の間に、CD-R/RWドライブは非常に安くなりました。9月下旬の時点でCD-Rの最大書き込み速度が24倍速のモデルの中で、代表的なプレクスターの「PXW2410TA」が1万9000円台で販売されています。またメルコの「CRW-24FB」は、比較的価格が高めに設定される大手ショップでも1万3000円台で見つけることができます。
主流といえるCD-Rの書き込み速度が12〜20倍速のドライブでは、リコーの20倍速モデル「MP7200A」が1万1000円台、アイ・オー・データ機器などの16倍速モデルが1万円台と、速度による価格差はいまやほとんどありません。DVD-ROMの読み出しが可能な、いわゆるコンボ・タイプの製品は、12倍速モデルが1万4000円台に値下がりして、手ごろな価格帯になってきています。
メーカー名 | 製品名 | 最大速度 | 最安値 | 中心価格帯 |
DVD-ROMとのコンボ・タイプ | ||||
アイ・オー・データ機器 | CRWD-AB20J | 20/10/40 | 2万3500円 | 2万4000円前後 |
CDRWD-AB1210J | 12/10/32 | 1万4499円 | 1万4000円台 | |
リコー | MP9200A | 20/10/40 | 2万2450円 | 2万4000円前後 |
MP9120A | 12/10/32 | 1万3800円 | 1万4000円台 | |
通常タイプ | ||||
アイ・オー・データ機器 | CDRW-AB24B | 24/10/40 | 1万3200円 | 1万4000円前後 |
CDRW-AB16J | 16/10/32 | 1万600円 | 1万円台 | |
アドテック | ADRW2410B | 24/10/40 | 1万1790円 | 1万2000円前後 |
ソニー | CRX200E*4 | 12/8/32 | 2万6800円 | 2万9000円台 |
TDK | ICD2410A | 24/10/40 | 1万3480円 | 1万3000円台 |
ティアック システム クリエイト | CDRW516EKB | 16/10/40 | 1万300円 | 1万円台 |
プレクスター | PXW2410TA | 24/10/40 | 1万8795円 | 1万9000円台 |
PXW1610TA | 16/10/32 | 1万3800円 | 1万4000円台 | |
PXW1210TA | 12/10/32 | 1万1980円 | 1万2000円台 | |
メルコ | CRW-24FB | 24/10/40 | 1万3499円 | 1万3000円台 |
ヤマハ | CRW2200EVK | 20/10/40 | 1万6800円 | 1万8000円前後 |
CRW2100EVK | 16/10/40 | 8979円 | 9000円台 | |
リコー | MP7200A | 20/10/40 | 1万990円 | 1万1000円台 |
MP7125A | 12/10/32 | 7750円 | 7000円台 | |
ATAPI内蔵型CD-R/RWドライブの価格 | ||||
*4 DDCD-R/RWにも対応しています。 |
■
今回は、ハードディスクとCD-R/RWドライブの価格動向を見てきました。ハードディスクは、これまで値下がり一辺倒であったのが、製品によっては若干値上がりが見られるなど、少々不安定な状況になってきています。今後、どのような動きとなるのか、継続的な調査が必要でしょう。
一方のCD-R/RWドライブは、これまで価格が下がり始めると、書き込み速度が向上するなどして、ドライブ単価としては比較的安定した動きを続けてきていまいた。しかし、ここ数カ月は24倍速モデルが登場しながらも、値下がり傾向にあります。DVD+RWドライブなどの書き換え型DVDドライブの登場によって、CD-R/RWドライブがどのような影響を受けるのかも興味が尽きないところです。
INDEX | ||
[連載]サハロフ秋葉原経済研究所 | ||
第3回 「大きいことはいいこと」なのか、ハードディスクのおいしい容量 | ||
各種ハードディスクとCD-R/RWドライブの動向 | ||
「連載:サハロフ秋葉原経済研究所」 |
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