連載 サハロフ秋葉原経済研究所

第4回 Windows XPに向けたパワーアップ大作戦

2. マザーボード価格の分類から動向をチェック

デジタルアドバンテージ/監修:サハロフ佐藤
2001/11/27

 次は、マザーボードの価格動向をチェックしてみよう。マザーボードにはプロセッサを始め、メモリやグラフィックス・カード、そしてIDEハードディスクまで、数多くのパーツを搭載/接続する、まさに「プラットフォーム」だ。マザーボードの種類を決めると、ほかのパーツの仕様も決まってくる。

 そのマザーボードの機能や性能、信頼性まで大きく左右するのは、チップセットである。同じチップセット*1を使っているマザーボードなら、例えば装着可能なプロセッサの種類や最大メモリ容量など基本スペックは、おおよそ共通である(一部例外もあるが)。そのため、チップセットごとにマザーボードを分類すると、各プラットフォームの指向や人気/不人気などが明らかになってくる。そうした狙いで作成したのが、下のグラフである。

*1 「同じチップセット」とは、この場合、チップのリビジョンまで同じことを意味する。リビジョンが異なると、プロセッサやメモリのサポート範囲まで変わることがある。
 
マザーボードの平均価格とチップセットとの関係
このグラフは、チップセットの種類ごとに各マザーボード製品の平均価格を集計したものだ。縦軸が価格で、横軸がチップセットの種類である。点が多いチップセットほど、採用マザーボードの製品数が多く、人気があることを意味する。

すでに秋葉原ではPentium 4のプラットフォームが主力

 まず目に付くのは、Pentium 4対応マザーボードの数の多さだ。特に、SDRAMに対応したIntel 845チップセット搭載マザーボードが多い。Pentium III/Celeronの標準チップセットであるIntel 815Eおよび815EPの両方を足しても、Intel 845には及ばない。秋葉原では、すでにPentium 4が主力になっていることが分かる。安価なSDRAMの採用と度重なるPentium4の値下げにより、Pentium 4搭載システムのトータルな価格が下落したことで人気が集中しているのだ。

SiSのPentium 4対応チップセット「SiS 645」
出荷されたばかりでまだ採用マザーボードは少ないが、VIAのP4X266のようなIntelとのライセンス問題は生じておらず、今後の普及が期待できる

 その一方で、高価なDirect RDRAMを用いるチップセットIntel 850の数も意外に多い。これは、秋葉原でマザーボードを購入するユーザー層のうち、コストパフォーマンス(価格対性能比)よりあくまでも性能を重視するユーザーの割合が多いことを表している(ベンチマークでは、Intel 850搭載システムの方が、Intel 845搭載システムより10%ほど性能が高いという結果が出ている)。市販のPCで、Intel 850採用マシンをあまり見かけないのとは対照的である。

 それぞれの価格差に注目すると、やはり性能の高いIntel 850搭載マザーボードのほうが高価だが、Intel 845搭載マザーボードもPentium III/Celeron用マザーボードに比べれば、まだ高い。これは、Intel以外のサードパーティによるチップセットがPentium 4向けにはほとんど普及しておらず、価格競争になっていないことが影響しているのだろう。実際、サードパーティ製であるVIA P4X266とSiS 645搭載マザーボードは、より高速なDDR SDRAM対応であるにもかかわらず、SDRAM対応のIntel 845より安価だ。Pentium 4のマザーボードの価格(すなわちPentium 4搭載PCの価格)は、まだまだ下がる余地が残されているといえそうだ。

価格のバラツキはなぜ生じるのか?

 どのチップセットについても、マザーボードの価格にはバラツキがある。例えばIntel 845の場合、1万5000円から2万3000円程度までバラついている。この理由は複数ある。

 主因として挙げられるのは、マザーボードに統合された機能の違いだ。代表的なのはIDE RAIDコントローラで、そのほかにはLANインターフェイスやサウンド回路がある。こうした機能がオンボード実装されているほど、当然ながら高機能かつ高価なマザーボードになる。ベンダによっては単一のマザーボードの設計を用いて、IDE RAID搭載の高機能モデルと未搭載の普及モデルというラインナップを展開していることもある。

 なかには価格に影響を及ぼさない機能もある。グラフィックス・コアがそのいい例で、例えばグラフィックス内蔵のIntel 815Eと、非内蔵のIntel 815EPの間には、明確な価格差が見られない。

 各種機能がマザーボードに統合されていると、後から拡張カードを追加する必要がなく、また全体的なコストは抑えられることが多い。その一方で、統合された機能に不満があると、結局拡張カードを追加して代替するしかなく、結果としてかえって高くつくこともあるなど、一長一短がある。

 価格がバラつくそのほかの理由としは、やはりマザーボード・ベンダのブランド力の違いがある。例えばASUSTeKやAOpenなどメジャーなマザーボード・ベンダの製品は比較的高価だが、一方で新興ベンダは極端に安い値付けをして市場に食い込もうとすることがある。しかし、両社の製品を比べるとスペック上はほとんど変わらないことも多い。

 これと関連して、マザーボードの出荷時期の違いが価格のバラツキを招くこともある。チップセットの出荷が始まったばかりで生産量が少ない場合、大手マザーボード・ベンダに対して優先的に供給される。ただし、初期出荷時の価格は高めなので、このとき製造されたマザーボードの価格も高めになりやすい。その後、生産がこなれてくると、新興ベンダなどにも供給されるようになる。このときのチップセット価格は下がり始めているため、マザーボードの価格も下げやすい。しかし大手ベンダは、初期に仕入れたチップセットの在庫が残っていたり、出荷されたマザーボードがPCパーツ・ショップに残っていたりすることなどから、すぐさま製品の出荷価格を下げられないことがある。その結果、同一チップセットでも出荷時期で価格が異なる、という事態が生じるわけだ。大手ベンダも追従して価格を下げることができれば、この現象は一時的なもので終わる。

 結論としては、チップセットの種類を決めたら、あとは統合された機能やブランド、発売時期といった違いを価格と照らし合わせながら選択することになる。

妙に高価なマザーボードの存在理由

 グラフ縦軸の3万円のラインに注目すると、ほかの点から離れて2つだけ高価な製品が目に付く。チップセットの種類はVIA AP266T(Apollo Pro266T)と、AMD-760MPである。これらの共通点は、デュアルプロセッサ構成でDDR SDRAMをサポートしていることだ。やはり性能重視のマザーボードだけあって、シングルプロセッサ構成よりずっと高価である。

 もっとも、これがSDRAMサポートのデュアルプロセッサ・マザーボードだと、シングルプロセッサ並みに安くなる。Intel 815EやVIA AP133x(Apollo Pro133x)のうち、1万8000円〜1万9000円の価格帯には、実はデュアルプロセッサ対応製品が混ざっている。性能を高めるためのデュアルプロセッサ対応なのに、メイン・メモリが低速なSDRAMというのは、バランスが悪いといわざるを得ない。だからこそ、これほど安いのだろう。

DDR SDRAM搭載マザーボードが人気のAthlon/Duronプラットフォーム

 Athlonシリーズ/Duronプラットフォームに注目すると、数が多いのはAMD-760とVIA KT266である。どちらもDDR SDRAM対応チップセットで、早い時期から出荷されていた点が共通している。これに対して、VIA KM133AやVIA KT133などSDRAM対応チップセットは、価格が安いものの数は多くない。前述のIntel 850チップセットと同様、性能重視の製品に人気が集中していることが分かる。


 INDEX
  連載]サハロフ秋葉原経済研究所
  第4回  Windows XPに向けたパワーアップ大作戦
    1.世代交代のまっただ中にあるプロセッサ
  2.マザーボード価格の分類から動向をチェック
    3.PCシステム全体を考慮したパーツ選択を目指す

「連載:サハロフ秋葉原経済研究所」


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