連載 サハロフ秋葉原経済研究所

第4回 Windows XPに向けたパワーアップ大作戦

3. PCシステム全体を考慮したパーツ選択を目指す

デジタルアドバンテージ/監修:サハロフ佐藤
2001/11/27

 ここまではパーツ単体で価格動向を調べてみたが、PCとは複数のパーツで構成されたものであり、組み合わせ次第で良くも悪くもなることは明らかだ。特に、PCの中核となるマザーボードとプロセッサ、メモリの組み合わせは、その性能に大きな影響を与える。従って、上限となる予算がある場合(たいていはそうだが)、各パーツそれぞれを最高速のものにすると予算オーバーとなるため、そのレベルから妥協しつつ最大性能を得られるパーツの組み合わせを探すことになる。

突然始まったメモリの値上がり

 その前に、PCの中核部分をなすパーツのうち、残るメモリの動向をチェックしておこう。「もう十分安くなっているし、そんなに神経質に調べる必要はないのでは」という考えは、現時点では通用しない。これまで値下がる一方のメモリ価格だったが、「突然」というべきか、あるいは「ついに」というべきか、2001年11月半ばから値上がりに転じているのだ。

種別 メモリ・モジュールの名称 枚数 11月10日 11月16日 11月24日
128Mbytes
SDRAM 128Mbytes PC133 DIMMCL3 1
1180円
2080円
(+900円)
1850円
-230円
DDR SDRAM 128Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5 1
1960円
2850円
(+890円)
2570円
-280円
256Mbytes
SDRAM 256Mbytes PC133 DIMM(CL3) 1
2180円
3920円
(+1740円)
3410円
-510円
DDR SDRAM 256Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) 1
3650円
5110円
(+1460円)
5040円
-70円
Direct RDRAM 128Mbytes PC800 RIMM 2
1万1200円
1万1400円
(+200円)
1万800円
-600円
512Mbytes
SDRAM 512Mbytes PC133 DIMM(CL3) 1
4390円
6600円
(+2210円)
6870円
(+270円)
DDR SDRAM 512Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) 1
8040円
1万1500円
(+3460円)
1万3200円
(+1700円)
Direct RDRAM 256Mbytes PC800 RIMM 2
2万2500円
2万3900円
(+1400円)
2万2500円
-1400円
1Gbytes
SDRAM 512Mbytes PC133 DIMM(CL3) 2
8780円
1万3200円
(+4420円)
1万3700円
(+500円)
DDR SDRAM 512Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) 2
1万6100円
2万3100円
(+7000円)
2万6400円
(+3300円)
Direct RDRAM 512Mbytes PC800 RIMM 2
7万8300円
7万7700円
(-600円
7万8800円
(+1100円)
最近の主要なメモリ・モジュールの価格変動(11月10日/16日/24日調査)
SDRAMとDDR SDRAMが大きく値上がりしているのが分かる。特に、値下がりの著しかった128M〜256MbytesのSDRAM DIMM(PC133)は、10日から16日のわずか6日間で平均価格が70%以上も上昇している。24日になって、256Mbytes以下は若干値を下げたが、512Mbytes以上は値上がりが続いている。依然Direct RDRAMのほうがSDRAM系より高価だが、その差は少し縮まった。
【表の見方】SDRAMとDDR SDRAM、Direct RDRAMの3種類について、容量ごとにデスクトップPC向けメモリ・モジュールの平均価格を集計してみた。カッコ内は前回調査時との価格差である。Direct RDRAM(RIMM)は2枚単位で増設するので、2枚まとめた価格を表示している。また1Gbytesのメモリ・モジュールはほとんど店頭販売されていないようなので、いずれも2枚まとめた価格になっている。なお「CL」とはCASレイテンシ(CAS Latency)の略。

 メモリ価格が突然上昇に転じたのは、大手DRAM製造ベンダがDRAMの生産調整を行った結果、一時的にスポット市場へのDRAM供給が減ったのが主因といわれている。もっとも、「供給が減る」という思惑から、買い占め→価格の上昇というパターンかもしれないが(以前、半導体のパッケージング材料の製造工場が事故で稼働停止した際も、在庫は十分あったといわれていたが、その直後にDRAMのスポット市場が急騰したことがある)。需要面では、相変わらず米国を中心としたIT市場の減速から、軟調となっている。そのため、今後の価格を予想するのは難しいが、すでにSDRAMの価格が原価割れの状態が続いていることから、調整局面に入り、さらなる値上がりの可能性もあるだろう。

Pentium 4プラットフォームでの最適なパーツの組み合わせとは?

 メモリ価格を確認できたところで、Pentium 4搭載PCを題材にパーツの組み合わせを考えてみよう。Pentium 4を選んだのは、SDRAMとDirect RDRAMのどちらを選ぶかという重要かつ根本的な問題があるからだ(DDR SDRAMプラットフォームは、まだ対応マザーボードが少なく一般的でもないので、ここでは割愛する)。それに比べ、Athlon XPはDDR SDRAM、Pentium IIIはSDRAMと定番が決まっており、Pentium 4ほど悩む要素はない。

 メモリの選択が重要なのは、それでPCのパフォーマンスが変わるからだ。以下の表は、Windows XPを快適に利用することを想定しながら、Pentium 4システムの中核部分の価格を見積もってみたものだ。

組み合わせその1
組み合わせその2
プロセッサ Pentium 4-2.00GHz
5万1000円
Pentium 4-1.90GHz
3万4900円
マザーボード Intel D845WN
1万7000円
Intel D850MV
2万100円
メモリ256Mbytes 256Mbytes PC133 DIMM(CL2)×1枚
3990円
128Mbytes PC800 RIMM×2枚
1万1000円
合計価格
7万1990円
6万6000円
マザーボード+メモリの価格
2万990円
3万1100円
Pentium 4システムの構成例とその価格の比較(11月24日調査)
Pentium 4と256Mbytesメモリとマザーボードで予算は7万円程度とし、なるべく高速なシステムを狙ってみた(メモリ256Mbytesは、Windows XPを快適に使うための最低ラインだという)。価格は平均値である。「組み合わせその1」はプロセッサの速度を、「組み合わせその2」はメモリ・システムの速度を、それぞれ重視している。総合的には「その2」の方が高速なはずだが、価格は「その1」の方が高くなってしまった。

 上表の「組み合わせその1」は、2001年11月下旬の時点で最速のPentium 4-2.00GHzを選んだもの。これに対して「組み合わせその2」は、プロセッサを1ランク下げて、その分の予算をDirect RDRAMに配分している。Pentium 4-2.00GHzは最高速のプレミア付きなので、価格が一段と高く、それが「その1」の合計価格をつり上げている。

 しかし、同じクロック周波数のPentium 4なら、SDRAMのシステムはDirect RDRAMに比べてアプリケーション・レベルで10%前後遅くなることが知られている。「ニュース解説:Pentium 4用チップセット『Intel 845』はメインストリームになれるのか?」によれば、たとえ上表の組み合わせで「その2」のPentium 4-1.90GHzを1.80GHzに下げても、「その1」の方が遅いことになる。つまり、約6000円安い「その2」の方が実質的に高速なのだ。「その1」と「その2」の間で、マザーボード+メモリの価格差はおよそ1万円である。この差額で「その2」より10%以上高速なプロセッサを購入できなければ、「その1」は遅いままだ。

 もちろん、この結論はメモリの価格や容量が変動すると変わってくる。例えばメモリ容量を512Mbytesにすると、上表の「その2」の方が高くなってしまう。また、DDR SDRAMのPentium 4対応マザーボードがもっと増えて一般的になれば、選び方はさらに混乱するだろう(Direct RDRAMに対してDDR SDRAMは、5%ほど性能が下がるといわれるが、価格は半分以下だ)。2002年第1四半期には、IntelからDDR SDRAMに対応したチップセットが発表される予定だ。このチップセットが登場すると、Pentium 4に関しては選択肢が増えることになるが、一方でどのシステムを選べばいいのかさらに悩むことにもなる。上のようなパーツの組み合わせをいくつか想定した表を作成して、システム価格を見積もってみるのは、たとえ完成したPCを購入する場合でも、損をしないためには大切なことである。記事の終わり

  関連記事
Pentium 4用チップセット「Intel 845」はメインストリームになれるのか?

 

 INDEX
  連載]サハロフ秋葉原経済研究所
  第4回  Windows XPに向けたパワーアップ大作戦
    1.世代交代のまっただ中にあるプロセッサ
    2.マザーボード価格の分類から動向をチェック
  3.PCシステム全体を考慮したパーツ選択を目指す

「連載:サハロフ秋葉原経済研究所」


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