連載 サハロフ秋葉原経済研究所 第4回 Windows XPに向けたパワーアップ大作戦
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ここまではパーツ単体で価格動向を調べてみたが、PCとは複数のパーツで構成されたものであり、組み合わせ次第で良くも悪くもなることは明らかだ。特に、PCの中核となるマザーボードとプロセッサ、メモリの組み合わせは、その性能に大きな影響を与える。従って、上限となる予算がある場合(たいていはそうだが)、各パーツそれぞれを最高速のものにすると予算オーバーとなるため、そのレベルから妥協しつつ最大性能を得られるパーツの組み合わせを探すことになる。
突然始まったメモリの値上がり
その前に、PCの中核部分をなすパーツのうち、残るメモリの動向をチェックしておこう。「もう十分安くなっているし、そんなに神経質に調べる必要はないのでは」という考えは、現時点では通用しない。これまで値下がる一方のメモリ価格だったが、「突然」というべきか、あるいは「ついに」というべきか、2001年11月半ばから値上がりに転じているのだ。
種別 | メモリ・モジュールの名称 | 枚数 | 11月10日 | 11月16日 | 11月24日 |
128Mbytes | |||||
SDRAM | 128Mbytes PC133 DIMM(CL3) | 1 |
1180円
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2080円
(+900円) |
1850円
(-230円) |
DDR SDRAM | 128Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) | 1 |
1960円
|
2850円
(+890円) |
2570円
(-280円) |
256Mbytes | |||||
SDRAM | 256Mbytes PC133 DIMM(CL3) | 1 |
2180円
|
3920円
(+1740円) |
3410円
(-510円) |
DDR SDRAM | 256Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) | 1 |
3650円
|
5110円
(+1460円) |
5040円
(-70円) |
Direct RDRAM | 128Mbytes PC800 RIMM | 2 |
1万1200円
|
1万1400円
(+200円) |
1万800円
(-600円) |
512Mbytes | |||||
SDRAM | 512Mbytes PC133 DIMM(CL3) | 1 |
4390円
|
6600円
(+2210円) |
6870円
(+270円) |
DDR SDRAM | 512Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) | 1 |
8040円
|
1万1500円
(+3460円) |
1万3200円
(+1700円) |
Direct RDRAM | 256Mbytes PC800 RIMM | 2 |
2万2500円
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2万3900円
(+1400円) |
2万2500円
(-1400円) |
1Gbytes | |||||
SDRAM | 512Mbytes PC133 DIMM(CL3) | 2 |
8780円
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1万3200円
(+4420円) |
1万3700円
(+500円) |
DDR SDRAM | 512Mbytes PC2100 DIMM(CL2.5) | 2 |
1万6100円
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2万3100円
(+7000円) |
2万6400円
(+3300円) |
Direct RDRAM | 512Mbytes PC800 RIMM | 2 |
7万8300円
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7万7700円
(-600円) |
7万8800円
(+1100円) |
最近の主要なメモリ・モジュールの価格変動(11月10日/16日/24日調査) | |||||
SDRAMとDDR SDRAMが大きく値上がりしているのが分かる。特に、値下がりの著しかった128M〜256MbytesのSDRAM DIMM(PC133)は、10日から16日のわずか6日間で平均価格が70%以上も上昇している。24日になって、256Mbytes以下は若干値を下げたが、512Mbytes以上は値上がりが続いている。依然Direct RDRAMのほうがSDRAM系より高価だが、その差は少し縮まった。 | |||||
【表の見方】SDRAMとDDR SDRAM、Direct RDRAMの3種類について、容量ごとにデスクトップPC向けメモリ・モジュールの平均価格を集計してみた。カッコ内は前回調査時との価格差である。Direct RDRAM(RIMM)は2枚単位で増設するので、2枚まとめた価格を表示している。また1Gbytesのメモリ・モジュールはほとんど店頭販売されていないようなので、いずれも2枚まとめた価格になっている。なお「CL」とはCASレイテンシ(CAS Latency)の略。 |
メモリ価格が突然上昇に転じたのは、大手DRAM製造ベンダがDRAMの生産調整を行った結果、一時的にスポット市場へのDRAM供給が減ったのが主因といわれている。もっとも、「供給が減る」という思惑から、買い占め→価格の上昇というパターンかもしれないが(以前、半導体のパッケージング材料の製造工場が事故で稼働停止した際も、在庫は十分あったといわれていたが、その直後にDRAMのスポット市場が急騰したことがある)。需要面では、相変わらず米国を中心としたIT市場の減速から、軟調となっている。そのため、今後の価格を予想するのは難しいが、すでにSDRAMの価格が原価割れの状態が続いていることから、調整局面に入り、さらなる値上がりの可能性もあるだろう。
Pentium 4プラットフォームでの最適なパーツの組み合わせとは?
メモリ価格を確認できたところで、Pentium 4搭載PCを題材にパーツの組み合わせを考えてみよう。Pentium 4を選んだのは、SDRAMとDirect RDRAMのどちらを選ぶかという重要かつ根本的な問題があるからだ(DDR SDRAMプラットフォームは、まだ対応マザーボードが少なく一般的でもないので、ここでは割愛する)。それに比べ、Athlon XPはDDR SDRAM、Pentium IIIはSDRAMと定番が決まっており、Pentium 4ほど悩む要素はない。
メモリの選択が重要なのは、それでPCのパフォーマンスが変わるからだ。以下の表は、Windows XPを快適に利用することを想定しながら、Pentium 4システムの中核部分の価格を見積もってみたものだ。
組み合わせその1
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組み合わせその2
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プロセッサ | Pentium 4-2.00GHz |
5万1000円
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Pentium 4-1.90GHz |
3万4900円
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マザーボード | Intel D845WN |
1万7000円
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Intel D850MV |
2万100円
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メモリ256Mbytes | 256Mbytes PC133 DIMM(CL2)×1枚 |
3990円
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128Mbytes PC800 RIMM×2枚 |
1万1000円
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合計価格 |
7万1990円
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6万6000円
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マザーボード+メモリの価格 |
2万990円
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3万1100円
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Pentium 4システムの構成例とその価格の比較(11月24日調査) | ||||
Pentium 4と256Mbytesメモリとマザーボードで予算は7万円程度とし、なるべく高速なシステムを狙ってみた(メモリ256Mbytesは、Windows XPを快適に使うための最低ラインだという)。価格は平均値である。「組み合わせその1」はプロセッサの速度を、「組み合わせその2」はメモリ・システムの速度を、それぞれ重視している。総合的には「その2」の方が高速なはずだが、価格は「その1」の方が高くなってしまった。 |
上表の「組み合わせその1」は、2001年11月下旬の時点で最速のPentium 4-2.00GHzを選んだもの。これに対して「組み合わせその2」は、プロセッサを1ランク下げて、その分の予算をDirect RDRAMに配分している。Pentium 4-2.00GHzは最高速のプレミア付きなので、価格が一段と高く、それが「その1」の合計価格をつり上げている。
しかし、同じクロック周波数のPentium 4なら、SDRAMのシステムはDirect RDRAMに比べてアプリケーション・レベルで10%前後遅くなることが知られている。「ニュース解説:Pentium 4用チップセット『Intel 845』はメインストリームになれるのか?」によれば、たとえ上表の組み合わせで「その2」のPentium 4-1.90GHzを1.80GHzに下げても、「その1」の方が遅いことになる。つまり、約6000円安い「その2」の方が実質的に高速なのだ。「その1」と「その2」の間で、マザーボード+メモリの価格差はおよそ1万円である。この差額で「その2」より10%以上高速なプロセッサを購入できなければ、「その1」は遅いままだ。
もちろん、この結論はメモリの価格や容量が変動すると変わってくる。例えばメモリ容量を512Mbytesにすると、上表の「その2」の方が高くなってしまう。また、DDR SDRAMのPentium 4対応マザーボードがもっと増えて一般的になれば、選び方はさらに混乱するだろう(Direct RDRAMに対してDDR SDRAMは、5%ほど性能が下がるといわれるが、価格は半分以下だ)。2002年第1四半期には、IntelからDDR SDRAMに対応したチップセットが発表される予定だ。このチップセットが登場すると、Pentium 4に関しては選択肢が増えることになるが、一方でどのシステムを選べばいいのかさらに悩むことにもなる。上のようなパーツの組み合わせをいくつか想定した表を作成して、システム価格を見積もってみるのは、たとえ完成したPCを購入する場合でも、損をしないためには大切なことである。
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Pentium 4用チップセット「Intel 845」はメインストリームになれるのか? |
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連載]サハロフ秋葉原経済研究所 | ||
第4回 Windows XPに向けたパワーアップ大作戦 | ||
1.世代交代のまっただ中にあるプロセッサ | ||
2.マザーボード価格の分類から動向をチェック | ||
3.PCシステム全体を考慮したパーツ選択を目指す | ||
「連載:サハロフ秋葉原経済研究所」 |
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