連載 サハロフ秋葉原経済研究所 第4回 Windows XPに向けたパワーアップ大作戦
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今、PCのプロセッサはIntel、AMDともに世代交代のまっただ中にある。Intel製プロセッサだとPentium IIIはPentium 4へ、AMD製だとAthlonからAthlon XPへ、といった具合だ。さらに、マザーボードやメモリの選択がプロセッサの種類と複雑に絡み合う。予算の範囲内で最適なパーツ構成を選ぶことが、難しい時期にある。
そこへ来てWindows XPの登場である。すぐにアップグレードするかどうかは別としても、いまPCを購入あるいは自作するなら、Windows XPが快適に利用できる構成にしておきたいというのは誰しも考えること。
本稿では、世界のPCパーツ市場の最先端を走る秋葉原の価格動向から、Windows XPに最適なPCの構成を調べてみたい。まずは、選び方の最も難しいプロセッサについて整理してみよう。下のグラフは、2001年11月中旬における、秋葉原のPCパーツ・ショップでのプロセッサ価格分布を表している。
プロセッサのクロック周波数と平均価格の関係 | ||||||||||||||||
【グラフの見方】横軸をプロセッサのクロック周波数、縦軸を平均価格として、クロックと価格の関係を図式化した。つまり、右下にあるほど割安で逆に左上ほど割高なプロセッサとなる。価格データは、サハロフ佐藤氏の秋葉原レポート2001年11月10日号からその平均値を算出している。 原則として、価格はボックス品のものだ。ただしAthlon MPだけは、2001年11月中旬の時点でボックス品が販売されていないため、バルク品の価格をグラフ化している。ボックス品と比べるとCPUクーラーが付属していないなど、同列に扱えないことに注意していただきたい。 また、Pentium 4は新しい478ピン・タイプ、またPentium IIIはFSB 133MHzのものを選択している。AthlonもFSB 266MHzのものだけを抽出した。 Athlon MP-1500+以上とAthlon XPについては、ほかのプロセッサと異なり、実クロック周波数ではなくモデル・ナンバでグラフ化している。以下の表は、モデル・ナンバと実クロック周波数との対応表だ(Athlon XP/MPともに同じ)。
なお、Athlon MP-1.0GHz/1.2GHzは従来どおり実クロック周波数で表記されている。 |
以下では、このグラフをもとにプロセッサに関する分析を進めてみよう。
Pentium IIIの時代は終わった!?
Windows XPを快適に利用するとなると、ターゲットは性能重視のPCだ。そこで最初に悩まされるのは、Pentium 4とPentium IIIのどちらを選ぶべきか、ということだろう。特に最近はPentium 4の価格下落が著しいことも、それに拍車をかけている。3カ月前(第2回 サハロフ/レポート:2001年夏のPCパーツ価格総決算を参照)と比べると、Pentium 4は1万円〜3万5000円前後も安価になっている。一方、Pentium IIIも1.13A GHz〜1.20GHzが1万円ほど値下がっているが、それより下の動作クロックではほとんど変動がなく、価格は下げ止まっている。その結果、Pentium 4(1.50G〜1.80GHz)とPentium III(866M〜1.20GHz)それぞれの価格帯は、2万円弱〜3万円で一致している。
Pentium 4(左)とPentium III(右) | |
市販されているPCでは、最近急速にPentium 4搭載マシンが増えている。 |
価格帯が同じなら、性能差はどうだろうか? PC雑誌などで報道されているベンチマーク・テストの結果によれば、Pentium III-1.20GHzの性能は、メイン・メモリがSDRAMなら、大ざっぱにいってPentium 4-1.4GHz〜1.8GHzに相当するようだ。0.4GHzも幅があるのは、Pentium IIIとPentium 4ではマイクロアーキテクチャが異なるため、ベンチマークの項目によって得意/不得意があり、その性能差もバラつくためだ。具体的には、マルチメディア系のソフトウェアではPentium 4-1.40GHz相当まで下がり、逆にオフィス・アプリケーションでは1.80GHz程度まで向上することもあるようだ。
Pentium III-1.20GHzとPentium 4-1.80GHzの価格は、ほぼ同じ約3万円だ。ということは、アプリケーションによってはPentium 4-1.4GHz相当まで性能が落ちるPentium III-1.20GHzは、割高といえる(1.20GHzより下のクロックでも同様)。少なくともプロセッサ単体で判断するなら、Pentium 4が同価格帯まで下がってきたいま、Pentium IIIに魅力はもはや感じられない*1。
*1 既存のPentium III/Celeron搭載PCのプロセッサをアップグレードするために、Pentium IIIの高クロック品を購入したくなるかもしれない。しかしPentium IIIは1.13A GHz以上で外部インターフェイスの仕様が変わっていて、それ以前のシステムとは電気的に互換性がなく、差し替えられないことが多いので注意が必要だ。 |
Pentium 4かAthlon XPか!?
性能重視の場合、Pentium 4かAthlon XPか、という点も悩ましいのだが、これは簡単には判断できない。Athlon XPのモデル・ナンバをクロック周波数(単位はMHz)と見立ててPentium 4と比べてみると、Athlon XPはPentium 4よりやや安めの価格に設定されていることが、上のグラフからよく分かる。ベンチマーク・テストの結果によれば、Athlon XPの性能は、モデル・ナンバをクロック周波数として見た場合、同クロックのPentium 4と同等の性能を発揮するというから、Athlon XPのほうが若干割安となる。もっとも、両者の価格差は決定的なほど大きいわけではない(Athlon XP登場前、Athlonの頃はもっと価格差が大きく、割安感が強かったのだが)。
とりあえず、グラフからすぐに分かるのは、Pentium 4-2.00GHzは明らかに割高だということだ。性能重視でPentium 4から選ぶなら1.90GHzのコストパフォーマンスが高そうだ。一方、Athlon XPだと1800+は割高感があるので、1600+か1700+がお買い得ということになる。
コスト重視でそこそこの性能を確保したいなら、意外にもAthlon-1.2GHzがお買い得だ。バリューPC向けのCeleron-1.2GHzやDuron-1.1GHzより安く、性能が高いからだ。
ワークステーション/サーバ向けプロセッサの使い道
秋葉原で単体販売されているワークステーション/サーバ向けプロセッサは、どちらかといえば本来の用途ではなく、個人で利用するデュアルプロセッサ構成のハイエンド・デスクトップPCの自作に用いられることが多いようだ。つまりWindows 2000 ProfessionalなどデュアルプロセッサをサポートするOSと組み合わせて、高性能なクライアントPCを実現するわけだ。 Windows XP Professionalもデュアルプロセッサをサポートするので、とにかく高速なXPのシステムがほしいなら、こうしたプロセッサでPCを自作する手もありだろう。ただし、グラフからも分かるように、最高クロック周波数はシングルプロセッサ専用のものよりやや低めであり、必ずしも最速にはならない可能性がある(ソフトウェアが複数のプロセッサで加速できるような設計になっていないと、シングルプロセッサより遅くなることすらある)。また、プロセッサの価格もやや高めで、しかもデュアルプロセッサに対応したマザーボードもかなり高価なので、システム全体の価格も跳ね上がってしまう場合がある。 なるべく安価でデュアルプロセッサ・システムを構築したいなら、Athlon MPの低クロック品が最適となる。マザーボードも3万円弱から販売されている。 |
INDEX | ||
連載]サハロフ秋葉原経済研究所 | ||
第4回 Windows XPに向けたパワーアップ大作戦 | ||
1.世代交代のまっただ中にあるプロセッサ | ||
2.マザーボード価格の分類から動向をチェック | ||
3.PCシステム全体を考慮したパーツ選択を目指す | ||
「連載:サハロフ秋葉原経済研究所」 |
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