動向解説 IDEディスクの壁を打ち破る最新ディスク・インターフェイス
2.Over 137Gbytesディスクを正しく使うにはデジタルアドバンテージ 島田広道 |
【2001/09/18】 本ページは、「2.Over 137Gbytesディスクを正しく使うには」の公開当初の記事です。これには、Windows XPのBig Drive対応に関する事実誤認が含まれていましたので、お詫びして訂正いたしました。訂正後の記事はこちらをご覧ください。 |
Big Drive対応ハードディスク、すなわち137Gbytesを超える容量のIDEハードディスクの全記録領域を利用するには、ユーザーとして何をしなければならないのだろうか? 前ページの図で記したディスク・サブシステムに関わるコンポーネントのうち、いくつかを交換あるいはアップデートしなければならない。その詳細をコンポーネントごとに以下に記すと同時に、執筆時点で明らかになっているBig Driveの対応状況も説明しよう。
ハードディスクはBig Drive対応になっていく
今後登場する137Gbytesを超える容量のIDEハードディスクは、すべてBig Driveをサポートするだろう。Big Driveの仕様が標準となることが確実視されているため、Maxtor以外のハードディスク・ベンダもこの仕様に対応するはずだ。
実際のBig Drive対応ハードディスクは、やはり仕様を提案したMaxtorから最初の製品が発表されている。2001年9月11日にMaxtorは、容量重視のシリーズ「DiamondMax D540X」に160GbytesのBig Drive対応モデルを追加した(日本マックストアによるDiamondMax D540X 160Gbytesモデルのプレスリリース)。
Big Driveに対応する160GbytesのMaxtor製ハードディスク |
従来のDiamondMax D540Xシリーズに追加という形で登場した初めてのBig Drive対応ハードディスク(製品情報ページ)。「Fast Drive」という新しいIDEの仕様もサポートしている。 |
IDEホスト・コントローラは「原則的に」変更不要
IDEコントローラを内蔵するIntel製チップセット |
これはICH2(I/Oコントローラ・ハブ)と呼ばれるチップで、2つのIDEコントローラを内蔵する。最新のIntel製IDEドライバと併用すれば、Big Driveに対応できる。 |
前述のとおり、Big Driveの仕様からすれば、基本的にIDEホスト・コントローラやIDEインターフェイス・カードを変更する必要はない。デバイス・ドライバ・レベルでの変更だけですむはずである。実際、後述するようにIntelは、同社製チップセット内蔵のIDEコントローラで、137Gbytesを超える容量をサポートするIDEドライバを提供し始めており、IDEコントローラ自身の変更は不要であることを示している。
しかし、IDEコントローラの設計次第では、Big DriveによるIDEのレジスタ構成の変更に追従できないことも考えられる。例えば、コマンド発行時のオーバーヘッドを解消するため、レジスタへのアドレス情報の書き込みをハードウェアで実行している場合は、IDEコントローラを代替する必要があるかもしれない。こうしたことは製品全体からすれば例外的と思われるが、いずれにせよ、Big Drive対応ハードディスクの導入前にIDEコントローラ・チップのサポート情報を事前に確認しておくべきだ。
Big Drive対応と銘打ったIDEインターフェイス・カードの新製品は、まだ登場していないようだ。しかし、この分野で有名なPromise TechnologyがBig Drive発表のプレスリリースに名を連ねているため、今後、対応製品が登場することが期待できる。
ディスクBIOSのBig Drive対応は必須か?
Big Drive未対応のディスクBIOSの環境では、137Gbytesまでしか認識されないだろう。ディスクBIOSはOSのブートに利用されるため、137Gbytes以上の領域からOSをブートできないことは間違いない。しかし、以前の8.4Gbytesの壁*2でもそうだったように、IDEドライバがBig Driveに対応していれば、OSのブート後は全容量を認識できる可能性が高い。もちろん、信頼性やハードディスクの管理のしやすさという点でも、Big Driveに対応しているほうが安心できる。
*2 このとき、上位プログラムに対するディスク・アクセスのためのインターフェイスとして拡張Int13Hファンクションが規定された。これで使用されるLBAのサイズが64bitなので、2の64乗セクタ×512bytes=9,444,732,965,739,290,427,392bytes=約9.4Zbytesまで直接アドレス指定ができる(「Zbytes」はZetta bytesの略で10の21乗bytesを表す)。 |
BIOSのBig Drive対応については、まだ動きは見られない。しかし、BIOSベンダで最大手のPhoenix Technologiesの名前も、Big Drive発表時のプレスリリースに記載されており、今後Phoenix BIOS(Award BIOSも含む)のBig Drive対応が進むものと思われる。
IDEドライバはBig Driveサポートが必須
IDEハードディスクをサポートするOS側のデバイス・ドライバ(IDEドライバ)がBig Driveに対応していないと、そのOS環境では、間違いなく最大でも137Gbytesまでしか容量が認識できない。Big Drive対応ハードディスクを利用するにあたって、IDEドライバの対応が最も注意すべき点といえる。
そのIDEドライバのBig Drive対応としては、Intelが対応ドライバの提供を始めている。Pentium 4向けSDRAM対応チップセット「Intel 845」と同時にリリースされた「Intel Application Accelerator(IAA)」というソフトウェア・パッケージには、型番が800番台のチップセットに内蔵のIDEコントローラ用ドライバの最新版が含まれている(IntelのIAAダウンロード・ページ)。これが137Gbytesを超える容量をサポートすることがプレスリリースに明記されている(インテルのアプリケーション・アクセラレータのプレスリリース)。IAAが出力する以下の画面からしても、IAA同梱のIDEドライバはBig Driveに対応していると見て間違いない。
Intel Application AcceleratorによるIDEデバイス情報 |
これは、20GbytesのIDEハードディスクを接続したIntel 815Eチップセット搭載PCにIAA Ver.1.0.2052.0をインストールして、そのデバイス情報を出力させたもの。総セクタ数を表す赤枠部分を見ると、48bit LBAのための欄がある。Big Drive対応ハードディスクを接続すれば、28bitと48bitで異なる値が表示されるものと思われる。 |
OSはIDEドライバで対応可能、ディスク関連ツールは要注意
Windows OSについては、標準状態でBig Driveに対応しているものは存在しないようだ。Windows XPのストレージ・デバイスのサポート状況を記しているページでは、2001年9月中旬の時点で、
「Support will be implemented in Windows XP for the new ATA/ATAPI-6 48-bit LBA technology when this technology reaches market. (新しいATA/ATAPI-6の48bit LBA技術(を採用した製品)が市場に出回れば、Windows XPにこの技術が実装されるだろう。)」
と記されている。すでにWindows XPの開発は完了しており、PCベンダへの出荷が始まっているので、最新のWindows XPですらリリース時にはBig Driveをサポートしないことになる。Windows 2000でのパターンが当てはまるなら、マイクロソフトによるWindows XPでのBig Drive対応はService Pack 1以降になるだろう。
もっとも、IDEドライバさえBig Driveに対応すれば、Windows XPをはじめとする各種Windows OSでも137Gbytesを超える容量をサポートできるものと推測される。例えば、前述のIAAに含まれるIDEドライバはWindows 98以降のWindows OSに対応しており、また137Gbytesの壁についてもOSごとに注意事項は記述されていない。そもそもBig Driveの登場以前から、SCSIやRAIDによるディスク・サブシステムで、(OSから見て)単体で137Gbytesを超える容量のディスクの取り扱いには実績があるため、ドライバより上位のOS部分については、137Gbytesの壁の問題はないはずだ*3。つまり、OSベンダがBig Driveに積極的に対応しなくても、ハードウェア・ベンダが対応ドライバをリリースすれば全容量が正常に取り扱えるものと思われる。
*3 Maxtorが公開しているBig Driveのホワイト・ペーパーには、137Gbytesに続く容量の壁として、OS側の制限による2.2Tbytesの壁を予告している。これは、多くのOSが、ブロック(セクタ)を指定するのに32bit幅の変数を利用しているからだという(日本マックストアによるBig Driveのホワイト・ペーパー) |
OSレベルで問題なく137Gbytesを超える容量を取り扱えるなら、当然その上のアプリケーションも全容量を認識できる。しかし、ハードディスクをまるごとコピーしたりパーティションを操作したりするディスク関連ツールは例外的で、これらの中にはOS(IDEドライバ)ではなくディスクBIOSを経由してディスクにアクセスしたり、あるいはIDEのレジスタに直接アクセスしたりするものすら存在する。この場合はディスクBIOSやツール自体がBig Driveの仕様に準拠している必要がある。
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Big Driveで規定された仕様は、まだ製品へ実装され始めたばかりであり、現時点では各コンポーネントのBig Drive対応/非対応でどのような現象(症状)が現れるのか、まだよく分からないことが多い。それでも、Maxtorが対応ハードディスクを発表したので、ほかのベンダは実機でBig Drive対応を確認できるようになったことから、これから急速にハードディスク以外の部分への実装は進むものと思われる。
Maxtorの160Gbytesハードディスクは、10月初旬には市販が開始されるという(メーカー小売希望価格は399.95ドル程度)。編集部でも入手してその挙動を確認する予定である。
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