元麻布春男の視点
新Pentium 4とDDR SDRAMサポートのIntel 845のお買い得度
1.単位面積あたりの消費電力が上がった新Pentium 4
元麻布春男
2002/01/11 |
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2002年1月8日、インテルはこれまでNorthwood(ノースウッド)の開発コード名で知られてきた、0.13μmプロセス製造によるPentium 4プロセッサと、Intel 845チップセットにおけるDDR SDRAMサポートを発表した。本稿執筆時点でニュースリリースに記載されているのは動作周波数が2.2GHzと2.0GHzの2品種のみ(インテルの「Pentium 4-2.2GHz発表に関するニュースリリース」)。それぞれインテルの表記ではPentium 4-2.20GHzおよびPentium 4-2A GHzとなる(従来の0.18μmプロセス製造のPentium 4-2GHzと区別するため「2A GHz」と表記される)。日本国内でのOEM価格(1000個受注時)は、前者が7万870円、後者が4万5900円となっている。
密かにリリースされている省スペース・デスクトップ版
しかし、同日にインテルのWebサイトで公開されたデータシートによると、上記の2種とは別の種類のPentium 4プロセッサもリリースされるようだ。こちらは、省スペース・デスクトップPC(SFF:Small Form Factor PC)向けに、熱設計時消費電力(TDP)を45W以下に抑えたもの。データシートでは「intended for sub-45W TDP designs(45W以下のTDPデザイン向け:以下SFF版と略記)」と表記されている。SSF版では、1.60GHz、1.80GHz、2A GHzの3種が提供されることになっている。通常版で提供されている2.20GHzがないこと、おそらく通常版に対し価格プレミアムが設定されることを除けば、動作電圧や2次キャッシュ・サイズなどの仕様は変わらないはずだ。なお、このSFF版がリテールパッケージで流通するのか、価格プレミアがどれくらいか、といったことは現時点では公表されていない。
既存Pentium 4と新Pentium 4の違い
まずは以上の5品種が提供されるNorthwoodコアのPentium 4プロセッサだが、これまでの0.18μmプロセス製造による開発コード名「Willamette(ウィラメット)」で呼ばれていたPentium 4プロセッサとの差を表にまとめておいた。性能的には、2次キャッシュ容量が256Kbytesから512Kbytesに倍増したことの効果が注目される。2次キャッシュを倍増したことにより、プロセッサ・ダイに集積されるトランジスタは、Willametteの4200万個から5500万個へと約31%増えるが、プロセス・ルールの微細化によりダイ・サイズは217平方mmから146平方mmへと、逆に約3分の2へと縮小されている。
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Willamette(従来のPentium 4コア) |
Northwood(新登場のPentium 4コア) |
縮小率 |
プロセス・ルール |
0.18μm |
0.13μm |
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動作電圧 |
1.75V |
1.5V |
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ダイ・サイズ |
217平方mm |
146平方mm |
67.3% |
L2キャッシュ容量 |
256Kbytes |
512Kbytes |
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トランジスタ数 |
4200万トランジスタ |
5500万トランジスタ |
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同1平方mmあたり |
19.35万トランジスタ |
37.67万トランジスタ |
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TDP*1 |
71.8W |
52.4W (44.6W) |
73% (62%) |
同1平方mmあたり |
0.33W |
0.36W (0.31W) |
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表1 WillametteとNorthwoodの比較 |
*1 いずれも動作周波数が2GHzの通常版プロセッサによるもので、カッコ内がSFF版 |
また、0.13μmプロセス製造による動作電圧の低下と、それにより消費電力(TDP:熱設計時消費電力)も、同じ2GHz動作のプロセッサで、通常版のNorthwoodはWillametteから27%ほど低下していることが分かる。SFF版であれば、さらに消費電力は低く、Willametteの3分の2を切る水準になっている。
しかし、見方を変えて、単位面積あたりのデータを見ると、ちょっと印象が変わってくる(表1の「同1平方mmあたり」という項目)。プロセッサ・ダイの1平方mmあたり、つまりは1mm四方に集積されるトランジスタの数は、Willametteの19万3500トランジスタから、Northwoodでは2倍近い37万6700トランジスタへと増大している。これに伴い、通常版Northwoodの場合、プロセッサ全体としては消費電力が低下しているにもかかわらず、1平方ミリあたりの消費電力(TDP)では、逆にWillametteより増えている。単位面積あたりの消費電力をWillametteより小さく抑えるには、SFF版のNorthwoodが必要なのである。
下の図はIntelのパトリック・ゲルシンガー(Patrick P. Gelsinger)副社長兼CTOが、2001年のISSCC(半導体関連の国際会議)で講演した際のプレゼンテーションに含まれていたものだ。単位面積(この図の場合は1平方cmあたり)の消費電力が、製造プロセスの微細化にともなってウナギのぼりになっていく傾向を示している。この傾向を放置しておくと、将来プロセッサの単位面積あたりの消費電力(すなわち発熱量)は、原子炉やロケット・ノズル並にまでなってしまうとしている。もちろん、このような温度になることは現実的ではないため、この図は何らかの方策が必要になるということを示しているわけだ。今回、0.13μmプロセス製造によるNorthwoodの単位面積あたりのトランジスタ数が、Willametteの2倍近い数字になり、消費電力もプロセッサあたりでは減少するものの、通常版だと単位面積あたりではかえって増大しており、この図を裏付ける結果となっている(とはいえ、この問題を解決する技術的な方法のメドがあるから、Intelもこのようなことを言っているのだろうが)。
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プロセッサの単位面積の発熱量 |
プロセス・ルールの微細化により、プロセッサ全体の発熱量(消費電力)が低下しても、単位面積あたりの発熱量はむしろ増大することを示したプレゼンテーション。このままいくと、プロセッサの単位面積あたりの発熱量は、原子炉やロケット・ノズル並になってしまう。IntelのCTO ゲルシンガー氏がISSCC 2001の講演で用いたもの。
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