元麻布春男の視点

新Pentium 4とDDR SDRAMサポートのIntel 845のお買い得度

3.気になるIntel 845チップセットの性能

元麻布春男
2002/01/11

 さて、いよいよ性能を見ていくことにするが、今回はPentium 4-2GHz(Willamette)、Pentium 4-2A GHz(Northwood)、Pentium 4-2.20GHz(Northwood)の3種類のプロセッサに、D850MV(Intel 850 + PC800 RDRAM)、D845WN(Intel 845 + PC133 SDRAM)、D845BG(Intel 845 + PC2100 DDR SDRAM)、85DRV(VIA P4X266 + PC2100 DDR RDRAM)の4種類のマザーボードを組み合わせてテストを行った。用いた周辺機器やOSなどは表2に示したとおり。P4X266チップセットについては、最近、性能が改善されたP4X266Aがリリースされたようだが、ここで用いたのは最初にリリースされたバージョンのものである。ただ、BIOSはNorthwood対応もあり、最新のものに更新してある(BIOSはマザーボード・ベンダのSoltekのWebサイトからダウンロード可能)。

スペック項目 内容
グラフィックス・チップ NVIDIA GeForce3
グラフィックス・ドライバ DetonatorXP 23.11
イーサネット 3C905-TX
サウンド ヤマハ YMF744B
OS Windows 2000 Professional + Service Pack 2
DirectX DirectX 8.1
ハードディスク Maxtor DiamondMax Plus 60 40Gbytes(7200RPM Ultra ATA/100対応ハードディスク)
解像度 1024×768ドット
色数 32bitカラー
リフレッシュ・レート 85Hz
その他 OpenGL設定においてV-Synchは常にオフ
表2 ベンチマーク・テスト時のハードウェア/ソフトウェア環境

 今回実施したテストは、いずれもポピュラーなものばかりだ。Sandra 2001の結果は、ベンチマーク・テストというより、メモリ帯域幅の確認に近い。実際、この結果は、ユーザーが使う実アプリケーションの体感性能と一致しないことが多い。その意味では、実質的なベンチマーク・テストはSYSmark 2001、3DMark 2001、Quake III Arena、SPECviewperfの4つといってもよいだろう(SPECviewperfはOpenGLの標準的なベンチマーク・テスト。テスト内容の詳細は「特集:x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る」を参照していただきたい)。

 すべてのテスト結果は「ベンチマーク・テストの結果」にまとめておいたが、当然のことながらPentium 4-2.20GHzにD850MVの組み合わせが最高の性能を示した。Intelでは、Intel 850チップセットを最高性能が発揮されるパフォーマンスPC向けプラットフォーム、Intel 845とSDR SDRAMの組み合わせをPentium 4の普及と企業での採用を加速させるプラットフォーム、Intel 845とDDR SDRAMの組み合わせを価格と性能のバランスに優れたプラットフォームと、それぞれ位置付けているが、それを裏付けた格好だ。

大きなグラフへ
Internet Contents Creation Office Productivity Rating
Pentium 4-2GHz
Intel 850
212
161
185
Intel 845 DDR
208
157
181
Intel 845
188
147
166
VIA P4X266
201
155
177
Pentium 4-2A GHz
Intel 850
224
170
195
Intel 845 DDR
215
164
188
Intel 845
207
160
182
VIA P4X266
217
166
190
Pentium 4-2.20GHz
Intel 850
242
183
210
Intel 845 DDR
235
180
206
Intel 845
220
165
191
VIA P4X266
233
178
204
表3 SYSmark 2001の結果
グラフは、SYSmark 2001の「Internet Contents Creation」と「Office Productivity」のみを示した。ベンチマーク・テストのすべての結果は「ベンチマーク・テストの結果」を参照していただきたい。

 ただ、Intel 845チップセットにDDR SDRAMを組み合わせた場合の性能は、PC133 SDRAMのときのように見劣りするものではない。例えば、Pentium 4-2.20GHzにIntel 845チップセットとPC2100 DDR SDRAMを組み合わせたときの性能は、Pentium 4-2A GHzにIntel 850チップセットとPC800 RDRAMを組み合わせたものを上回る。つまり、Intel 845チップセットとDDR SDRAMの組み合わせは、Intel 850に1グレード下のプロセッサを組み合わせたときより高い性能を示すのである(性能の逆転は起きない)。現在のようにメモリ価格が安く、プロセッサのグレード間の価格差の方が大きい場合、1グレード下のプロセッサに性能をひっくり返される可能性のあるチップセットは、今回テストしたような価格差が大きな最も動作クロックの高いグレードのプロセッサでは使いにくい。そういう意味ではDDR SDRAMをサポートしたIntel 845プラットフォームは、最高性能ではないとはいえ、下位から上位まですべてのグレードのプロセッサと組み合わせても問題のない性能レンジに達している。

 逆に、Intel 845チップセットとPC133 SDRAMの組み合わせは、プロセッサのグレードによる価格性能比の逆転現象(例えばPentium 4-2A GHzにIntel 850チップセットを組み合わせた方が、価格と性能の両面でPentium 4-2.20GHzにPC133 SDRAMを用いたIntel 845チップセットを組み合わせたものよりよい)が生じるわけだが、存在意義がまったくないわけでもない。現在、企業向けのクライアントPCでは、(残念ながら)性能はそれほど優先順位の高い項目ではない。しかし、Pentium IIIが実質的に消えつつあるいま、Celeron以外の選択肢を提供しようとすると、Pentium 4以外にない(もちろんIntel製プロセッサの使用が前提だが)。つまり、企業向けのクライアントPCに、Pentium IIIの代わりに、Pentium 4をPentium IIIに等しい価格で提供するために、Intel 845とPC133 SDRAMの組み合わせが存在する、と理解できる。これが、上記したIntelによる位置付けの意味だろう。

 もう1つ、同じ2GHzにおけるWillametteとNorthwoodの性能差だが、やはり2次キャッシュが2倍になった効果がハッキリと現れている。特に効果が顕著なのが、オフィス・アプリケーションの性能とInternetコンテンツ作成時の性能の指標となるSYSmark 2001である。企業でのクライアントPCであれば、Pentium 4-2A GHzとPC133 SDRAMの組み合わせでも、ある程度の性能が期待できるだろう。

Intel 845チップセットとDDR SDRAM DIMMの互換性

 本稿執筆時点で、PC133 SDRAM、PC2100 DDR SDRAM、PC800 RDRAM、それぞれの価格には、おおよそ1対2対3の関係がある(PC2700 DDR SDRAMはPC800 RDRAMとほぼ同じ)。とはいえ、日本での標準的なメモリ実装容量になりつつある256Mbytesを前提にすると、価格差はそれぞれ3000円程度しかない。おそらく個人ユーザーであれば3000円、あるいは6000円を惜しんで、PC133 SDRAMとIntel 845の組み合わせを選ぶ必然性はまったくないハズだ。現在、メモリ・ベンダの量産体制は、SDR SDRAMからDDR SDRAMへと移りつつあるといわれており、SDR SDRAMの値上がりが予測されている。それを考えると、今後は個人ユーザーだけでなく、企業においてもDDR SDRAMが主流になっていくと思われる。

 そうなると気掛かりなのは、DDR SDRAM DIMMの互換性だ。DDR DIMMは、最初に登場してからすでに1年以上が経過している。しかし、Intelがサポートしてこなかったため、互換性の問題が指摘されることが多い。「元麻布春男の視点:Pentium 4向けチップセット「SiS645」の性能とその代償」で取り上げたSiS 645のマザーボードでも、PC2100 DIMMを用いた際の不調に悩まされた(SiS 645は性能を改善したリビジョンA2がリリースされたが、性能だけでなく互換性の改善も図られているのではないかと思われる)。

 また、IntelがIntel 815チップセットで、それまでサポートしないと公言していたPC133メモリのサポートを行うことになった際、Intel 815チップセットとすでに流通していたPC133 DIMMとの間に互換性問題が生じた。筆者の手元にあったPC133 DIMMの中には、Intel製マザーボードのD815EEAと組み合わせると、「SPDの情報が不足しているためPC100での動作となる」、というエラー・メッセージを表示するものがあった。DRAMチップそのものに問題がなくとも、SPDに問題があることも考えられる。果たしてIntel 845チップセットとDDR DIMMとの相性がどうなのか、気になるところだ。

 そこで、D845BGに筆者の手元にあるDDR DIMMを片っ端から装着して動作確認を行ってみた。その結果が表4だ。必ずしもメモリの容量が揃わないため、3DMark 2001の結果はあくまでも参考値として考えてほしいが、少なくとも3DMark 2001の安定動作までは検証した(動作の安定性に対し、単に起動を確認するよりは踏み込んだ)と受け止めてもらえれば幸いである。表を見れば分かるとおり、どのDIMMも問題なく動作したし、PC2100 DIMMがPC1600としてしか動かない、ということもなかった。また、この結果を見る限り、PC2700 DIMMは、CL2のPC2100 DIMM相当として動作しているものと思われる。

テスト・メモリ・モジュール CAS Latency インストール枚数 メモリ・ベンダ 3DMark 2001 備考
128MB PC1600 DIMM CL2 1枚 Micron 7018 3DMarks エンジニアリング・サンプル
128MB PC2100 DIMM CL2.5 1枚 Micron 7134 3DMarks エンジニアリング・サンプル
128MB PC2100 DIMM CL2 2枚(合計256Mbytes) Nan Ya 7168 3DMarks
256MB PC2100 DIMM CL2.5 1枚 Mosel Vitelic 7147 3DMarks
256MB PC2700 DIMM CL2.5 1枚 Hynix Semiconductor 7171 3DMarks
表4 各種のDDR SRAM DIMMの動作確認結果
テスト環境は、表2のシステムにPentium 4-2A GHzとD845BGマザーボードを組み合わせた

 というわけで、Intel 845チップセットとDDR DIMMの組み合わせは、Intel 845チップセットとPC133 SDRAMの組み合わせと比べ、互換性や安定性の点で特に見劣りすることはなかった。それでいて、性能は確実に向上している。メモリの価格は大きく変動することがあるとはいえ、現在の市場価格、大手の量産体制の行方などを考えると、今後メインメモリとして主流になることは間違いないだろう。記事の終わり

  関連記事(PC Insider内) 
x86最速プロセッサ Pentium III-1.13GHzの実像に迫る

ベンチマーク・テストの結果

 INDEX
  新Pentium 4とDDR SDRAMサポートのIntel 845のお買い得度
    1.単位面積あたりの消費電力が上がった新Pentium 4
    2.DDR SDRAM対応チップセット「Intel 845」の特徴
  3.気になるIntel 845チップセットの性能
    ベンチマーク・テストの結果
 
「元麻布春男の視点」


System Insider フォーラム 新着記事
  • Intelと互換プロセッサとの戦いの歴史を振り返る (2017/6/28)
     Intelのx86が誕生して約40年たつという。x86プロセッサは、互換プロセッサとの戦いでもあった。その歴史を簡単に振り返ってみよう
  • 第204回 人工知能がFPGAに恋する理由 (2017/5/25)
     最近、人工知能(AI)のアクセラレータとしてFPGAを活用する動きがある。なぜCPUやGPUに加えて、FPGAが人工知能に活用されるのだろうか。その理由は?
  • IoT実用化への号砲は鳴った (2017/4/27)
     スタートの号砲が鳴ったようだ。多くのベンダーからIoTを使った実証実験の発表が相次いでいる。あと半年もすれば、実用化へのゴールも見えてくるのだろうか?
  • スパコンの新しい潮流は人工知能にあり? (2017/3/29)
     スパコン関連の発表が続いている。多くが「人工知能」をターゲットにしているようだ。人工知能向けのスパコンとはどのようなものなのか、最近の発表から見ていこう
@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)

注目のテーマ

System Insider 記事ランキング

本日 月間