第6回 読者調査結果
いまどきの法人におけるハードウェア導入のプロセスとは

小柴 豊
アットマーク・アイティ マーケティングサービス担当
2002/04/09

 2001年からハードウェア不況が続くIT業界。とはいえ調査機関の発表を見ると、2001年に高い成長率を示したデルコンピュータのようなベンダもある。右肩上がりで業界まるごと伸びる時代は終わり、限られた市場におけるシェアの争奪が激化しているようだ。では不況下のユーザーは、ハードウェア製品をどのようなプロセスで選択/購入しているのだろうか? PC Insiderで実施した第6回読者調査から、その状況を紹介しよう。

ハードウェア購入時の情報源:ベンダはWebサイトの充実を

 今回実施した調査では323人の読者からご協力をいただいた。その中で勤務先または顧客システムへのハードウェア導入に関わっていたのは、全体の約7割(221人)。このハードウェア導入に関与している方々に、まずは製品選択時に参考にしている情報源を聞いた。その結果、「ベンダのWebサイト」がよく参照されていることが分かった。大企業になればなるほどWebサイトの構成も複雑になりがちだが、そのせいでハードウェア導入を考えている人が望む情報にたどり着けないことがあれば、大きな機会損失につながりかねない。ベンダが顧客との良好な関係を築く第一歩は、自社Webサイトでの情報提供の充実(質/量/ユーザビリティなど)にあるといえそうだ。

ハードウェア導入時の情報源(3つまでの複数回答 N=221)

ハードウェア購入経路:企業に浸透するWeb直販

 情報源の次は購入経路に注目してみよう。ハードウェアを導入する際、主に利用している購入経路を聞いた結果が下のグラフだ。OA業者やSIといった伝統的なチャンネルに混じって、「Webによるダイレクト販売」の利用率が4割弱に達している点に注目したい。上述の情報源とあわせて考えると、いまやWebサイトこそがハードウェア・ベンダの「最良のPR/セールス媒体」といえるだろう。

主なハードウェア購入経路(複数回答 N=221)

Web直販へ求められる「個客」指向BTO

 ではWebによるダイレクト販売に、ユーザーは何を求めているのだろうか? 期待する機能やサービスを尋ねた結果、「用途や予算に応じたカスタマイズの自由度向上(BTO)」を挙げる人が7割に達した。Web直販はコスト・メリットで注目されることが多いが、その本質はオンデマンドの部分にあるようだ。読者のコメントからは、厳しさを増す予算の中で、適用業務に合わせた仕様に変更できる点もメリットとして挙げられていた。Web直販で成功する鍵は、どこまで顧客ひとりひとりの要求に合わせられるか、その自由度にかかっているといえそうだ。

読者のコメント〜Web直販に期待する機能/サービス〜

  • BTOのきめ細かさは検討段階で重要な要素となるので、これが貧弱だと土俵にも上がらない
  • 必要な信頼性と性能を満たすか、それによって予算をオーバーする場合、どこをスペック・ダウンして価格を抑えるか
Web直販に期待する機能/サービス(3つまでの複数回答 N=221)

 続いてユーザーがハードウェア製品を選択する際の重視点を見てみよう。サーバ製品の選択を例にとり、「製品の機能/性能」「価格」「メーカー」「コンサルティング/サポートなどのサービス」の4点をそれぞれ何%ずつ考慮するか聞いた結果が下のグラフだ。各項目の重視度の比率は、「機能/性能:価格:サービス:メーカー」でおおよそ「4:3:2:1」の順となった。特にインテル・アーキテクチャ(IA)サーバのように標準化が進んだシステムでは、今後ともメーカー(ブランド)へのこだわりは薄れ、「コスト・パフォーマンス+サービス」重視傾向が強まると思われる。

サーバ製品選択時の重視点(N=192)

IAサーバ 対 ハイエンド・サーバ:カギとなる信頼性

 さて今回の調査では、IAサーバとハイエンド・サーバ(UNIX/汎用機)のプラットフォーム比較も質問している。後半はその結果を紹介しておこう。

 まずIAサーバおよびUNIX/汎用機サーバそれぞれの導入に関わっている読者に、その用途を聞いた結果が下のグラフだ。IAサーバは現在幅広い用途で使われているが、特に「ファイル/プリント・サーバ」で強い半面、基幹業務系の利用率は低くなっている。一方UNIX機や汎用機は、メール/Web/DNSなどのインターネット系、データベース、基幹業務系の各用途で使われる機会が多い。各用途別の両プラットフォーム利用率を見ると、現在はおもにインターネット系およびデータベースの2分野で、IAサーバ 対 ハイエンド・サーバの競合関係が強まっていると思われる。

IAサーバ 対 UNIX/汎用機サーバ:サーバ導入用途(複数回答)

 最近ではIAサーバがスケーラビリティ/可用性を高める一方、低価格なUNIXサーバが市場に投入されるなど、サーバ市場の境界争いが激化している。今後IAサーバがハイエンド・サーバの領域を侵食していくのか、あるいはその逆にUNIXサーバの価格レンジが下がってくるのか、サーバ導入に関わる読者の見解を聞いてみた。その結果「今後は中規模以上のシステムでもIAサーバの活用機会が増えていく」との回答が約4割に対し、「規模が大きくなれば用途によらずUNIX/汎用機サーバが使われ続ける」「低価格なUNIXサーバの登場によって逆にIAサーバの活用機会が減っていく」は合わせて1割強に留まり、全体的にはIAサーバ市場が拡大基調であるとの認識が強い。

 ただし「WebサーバはIAサーバ、大規模データベースはUNIXサーバ、といったように用途によって使い分けられる」という意見も、IAサーバ拡大論とほぼ同率で支持されている。読者のコメントを見ると、用途によっては信頼性および実績の面でIAサーバを採用できないとする声を散見した。これらのうちハードウェアの信頼性向上策については、IBMなどのベンダが汎用機の技術をIAサーバに投入する動きを示している。今後、IAサーバがエンタープライズ用途に浸透するためには、コスト・パフォーマンスを保ちつつ信頼性を高めていくプロセスが必要となりそうだ。

IAサーバ 対 UNIX/汎用機サーバ:今後の活用機会(N=162)

読者のコメント〜IAサーバとハイエンド・サーバの使い分け〜

  • IAでも64が安定してくれば話は変わってくるが、SMP対応よりむしろメモリ容量がデータベース用途にしては足りなすぎる。
  • UNIX機には長年の実績があり、顧客・技術者ともにまだまだ離れられない。用途によって使い分ける形で収まるような気がする。
  • Windows系OSの不安定さ、セキュリティ・ホールの多さによる管理工数が今後も減るとは思えない。
  • コストのIA、信頼性&スケーラビリティのUNIXというのが現状に近いと認識していることによります。
  • 集中管理向きシステムはUNIX、分散処理向きシステムはIA記事の終わり

  調査概要
調査方法
PC InsiderサイトからリンクしたWebアンケート
調査期間
2002年2月16日〜3月15日
有効回答数
323件
 
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